第四十三話 最終決戦(前編)
多少のアクシデントもあったが、赤壁を後にした一刀と蓮華はすぐに呉軍本隊に合流、さらには蜀からの援軍とも合流を果たした。そこで迫られた選択は、建業に向かうか、蜀へ向かうかだ。
厄介な事に、蒼馬の前では篭城戦という選択肢は無きに等しい。それでも数で劣る蜀呉連合軍…この選択は、今後の運命を大きく左右するだろう。
【冥琳】
「…蜀へ向かおう。」
呉の筆頭軍師である冥琳の一言で、一刀たちはそのまま蜀へ向かう事になった全戦力を集結させて、総力戦とする事を選んだようだ。
その動きは、すぐに華琳たちに察知された。今度こそみすみす逃しはしないと追撃をかけようとしたが、雛里と冥琳によって配置された伏兵に手を焼かされ、結局は追撃を諦め、建業に入り体勢の立て直しを図らざるを得なくなった。
【華琳】
「くっ!蒼馬さえ復帰すれば、あの程度の伏兵に…」
蒼馬は、赤壁での戦いの疲れを癒すために、未だ眠り続けていた。いや、自分の技を見てさらに強くなった一刀との、直接対決に備えているのかもしれない。
三日後、やっと蒼馬が目を覚まし、華琳たちも蜀へと向かったのだった。
やはりというべきか、至るところに兵が隠れていたが、復帰した蒼馬によって全て看破された。おかげで、一刀たちの帰還から二日で蜀に入り、春蘭たち別動隊とも合流を果たした。その時、凪と季衣が心底安堵の表情を浮かべたのは、春蘭が何度も突っ込もうとしたからだろう。
【風】
「我々の目的は牽制ですよ。こんな兵数で城を攻め落とすなんて無理です。」
その度に、風は説得、季衣たちは力ずくで、春蘭を押さえていたのだ。
【華琳】
「待たせたわね。春蘭、もう存分に暴れていいわよ。」
【春蘭】
「はっ!」
【桂花】
「華琳様!蜀呉連合軍、城より出てきた模様です!」
【華琳】
「劉備たちは?」
【桂花】
「…正面の城門より、劉の旗印!横には関と張の旗も!」
【華琳】
「まずは舌戦という事ね。いいでしょう。春蘭、季衣、流琉も来なさい。他の者たちは、すぐに隊を動かせるように準備しておいて!」
華琳は馬に乗り、劉備たちの部隊を目指す。春蘭たちもその後に続いた。
【華琳】
「久し振りね、劉備?」
【桃香】
「えぇ、曹操さん。」
【華琳】
「少しは成長したのかしら?理想を語るだけのお嬢さん?」
桃香の横にいた愛紗が、表情を険しくして華琳を睨みつける。何か言いたげだが、ぐっと奥歯を噛んで堪えているようだ。
【桃香】
「いえ、相変わらずです。今も昔も、私の願いは…皆が笑って暮らせる、平和な国を作りたい。それだけです。」
【華琳】
「甘ったるい理想ね。誰も傷つかずに、誰も傷つけずに…そんな戯れ事がまかり通ると、貴方は今でも思っているのかしら?」
【桃香】
「思っていません。少なくとも、私一人の力じゃ、この思いを貫き通せない…」
【華琳】
「なら、大人しく私に降りなさい。」
【桃香】
「私が降れば…曹操さんは、どんな国を作ってくれますか?」
【華琳】
「強い国を。民が、賊の脅威に怯える事も、飢饉に喘ぐ事もない、豊かで強い国を作ってあげるわ。貴方が言う、皆が笑顔で平和に暮らせる国にもなるわよ。」
【桃香】
「そうですか…答えは、いいえです。」
【華琳】
「それは何故?」
【桃香】
「出陣前に、民や兵の皆を前にして、ご主人様が言ったんです。『俺は御遣いなんかじゃない。ただの無力な、一人間だ。余所の世界から来た、厄介者だ。』って。」
【華琳】
「バカなの?兵の士気を下げるような事を、自ら…」
【桃香】
「私も最初は思いました。でも、ご主人様はこう続けました…『それでも、今ここにいる皆を守りたい!だから俺にも、守らせてくれ!』そう言ったんです。」
【華琳】
「?」
【桃香】
「私も、皆で作っていきたいんです!笑顔に溢れる、平和にな国を!曹操さん一人に作ってもらった、曹操さんがいなくなったら崩れてしまうような国なら、私は要りません!」
【華琳】
「…言うようになったじゃない、劉備。なら、決着はこの戦でつけましょう。」
【桃香】
「えぇ。」
舌戦を終えると、いよいよ両軍が激突した。まずは蜀呉の第一陣が出陣し、魏の前線と軽く一当て…呉の思春や明命の奇襲もあり、浮足立った魏軍に間髪入れずに翠、蒲公英率いる騎馬部隊が攻め込む…。
【風】
「…中々にやりますね。部隊が乱れ始めました。」
【稟】
「中央が空くな…これを逃す諸葛孔明と周公瑾ではあるまい。」
【桂花】
「一応、季衣と流琉を配置してるけど…あのバカ!肝心な時に役に立たないんだから!」
蒼馬はまだ馬車の中で、力を温存させているようだ。呪いの矢の効果か、蒼馬は一段と疲労しやすく、また回復も遅くなっているようだった。
と思っていると、本当に中央を突破して本陣に迫ってくる部隊があった。
【桂花】
「来たわね!旗印は……北?」
【風】
「はて?見慣れない旗印ですね…北…北?」
【稟】
「まさか!?」
【一刀】
「おおおおおっ!」
北…北郷、つまり一刀の旗である。以前、天の御遣いを語っていた頃は、天の字だった一刀の旗。御遣いの肩書を捨てた、彼なりのけじめである。
しかし、左右に割れた兵の海を進むその光景は…さながらモーゼの逸話を見るようで、御遣いというのも嘘ではない気がしてくる。
【一刀】
「命が惜しかったら道を開けろぉっ!俺が狙うのは、覇王と死神の首のみ!」
【季衣】
「行かせるかぁっ!」
巨大な鉄球が、一刀に襲い掛かる。が、一刀は星の太刀を抜き放ち、馬を加速させた。
【季衣】
「えっ!?」
【流琉】
「何、今の!?速過ぎるっ!」
一瞬にして、鉄球も季衣たちも躱し、魏の本陣へ迫る一刀。
【一刀】
「この戦、今ここで終わらせる!出てこい、曹操!」
【桂花】
「不味い…あの勢い、止められない…」
【蒼馬】
「ふぅ~ぃ、騒々しいねぇ。」
蒼馬が、馬車から降りてきた。
【稟】
「蒼馬殿!危険です!」
【一刀】
「死神、蒼馬!赤壁の…呉の戦友たちの恨み、ここで晴らす!」
一刀は蒼馬の姿を確認すると、星降りの御魂でさらに速度を上げて魏の本陣を突っ切って来た。周りにいる兵たちは、あまりのスピードに槍も突き出せない…。
【一刀】
「もらったぁっ!」
刀が、蒼馬の首に迫る…
ガキィンッ
そのまま一刀は駆け抜け、彼が馬を止めると刎ねられた蒼馬の首が地面に落ちて…来なかった。そもそも、斬られていないようだ。
【一刀】
「…チッ!」
【蒼馬】
「いいねぇ~、その目だよ…大願は、困難だからこそ成就させる甲斐がある。分かるかい?」
【一刀】
「その為に、俺を強くする為に、この刀を…」
【蒼馬】
「そして教えた。君に足りなかった、覚悟を。」
【一刀】
「全部…全部、アンタの目論見だったのか!俺を強くし、戦いを激しくする為の!」
【蒼馬】
「半分正解。だけど、大正解でいいや。おじさん、死神だしね。」
別に、蒼馬の目的は戦を激化させる事じゃない。ただ、自分と渡り合える存在が、最後の戦いには居て欲しかっただけだ。そうでなければ、本当に自分が一人で、敵を皆殺しにして戦が終わってしまうからだ。
それでは、恒久の平和を願っての戦にはならない…勝った方も、負けた方も、同じ痛みを負って、等しく過ちを悔やむ結果にならなければ…そこから平和な世を築いていく事など出来ない。
人は痛みからしか、学ぶ事が出来ないのだから。蒼馬は、そう考えていた。
【蒼馬】
「…場所、移そうか?」
【一刀】
「その必要はない!はぁっ!」
一刀は馬上から跳んだ。そして、蒼馬の頭上を取って、そこから刀を振り下ろしてくる。
【一刀】
「落星破斬!」
【蒼馬】
「甘いっ!」
蒼馬が蒼天竜扇を一扇ぎした。
【一刀】
「うぐっ!?」
突風に煽られた一刀はバランスを崩す…さらに、蒼馬が扇子を扇ぐと、一刀の体は風に絡め取られて、成都の城の方へ飛ばされていく。
【一刀】
「うわあああああっ!」
【蒼馬】
「まだ戦は始まったばかりだ。おじさんに挑むには早いよぉ~。」
そのまま、一刀は空高く舞い上げられながら城まで飛ばされ、城の庭辺りで乱暴に落とされた。
【一刀】
「ぎゃふっ!?」
マンガのような豪快な落ち方だったが、気で強化していたのか怪我は無さそうだった。
【一刀】
「くそっ!やっぱ強いか…今の俺でも、まだ届かない…」
弱気な考えが、一瞬頭を過る…慌てて頭を振って、しっかり前を見据えて立ち上がった。
【一刀】
「まだだ。まだ終わったわけじゃない!」
一刀は城門の方へ駆けて行った。
それからしばらくして、一刀の本陣奇襲が失敗したのを受け、蜀呉連合は城内に撤退…双方とも、態勢を立て直しにかかった。
【蒼馬】
「いよいよ、本命がご登場のようだね~。」
態勢が整い、ついに蜀軍の主力となる五虎大将が出てきた。その後ろには、桃香、一刀の姿も見える。
【華琳】
「聞けぇっ!魏の精鋭たちよ!この戦も、これが最後の局面となろう!」
華琳の鼓舞が、長い遠征に疲弊していた兵士たちの士気を再び燃え上がらせる。
【華琳】
「黄巾の乱より続く、長き戦いの日々も今日が最後だ!この戦は、後世にまで語り継がれ、平和な世の礎となる!命を惜しむな!惜しむべきは、名を残せぬ事と心得よ!」
同じく、蜀軍にも桃香の鼓舞が染み渡る。
【桃香】
「皆さんには、守りたいものはありますか?私は、ずっと皆の笑顔を守りたいと、そう思い続けてここまで来ました。たくさんの人が力を貸してくれて、私はここに立っています。守りたいという強い願いは、何よりも強い力になる!」
【華琳】
「全ては大陸の繁栄の為!」
【桃香】
「愛する人の笑顔の為!」
【華琳&桃香】
「「全軍、突撃っ!」」
両軍、王の号令と共に、互いの総力をかけて真っ向から激突した。
【霞】
「おらおらおらぁっ!雑魚は邪魔やぁっ!ウチの相手できるやつはおらんのかいっ!」
【翠】
「ここにいるぞぉっ!」
ガキィンッ
霞の偃月刀を、颯爽と現れた翠が槍で弾く。
【霞】
「錦馬超か!相手になるでぇっ!」
さらに、左翼では季衣と鈴々が…
【季衣】
「くらえっ!チビッ子!」
【鈴々】
「誰がチビッ子だ!春巻き頭!」
ドォンッ
紫苑と秋蘭が…
【秋蘭】
「定軍山の借り、返させてもらうぞ。」
【紫苑】
「いいでしょう。私も、貴方とはきちんと決着をつけたいと思っていました。」
それぞれ一騎打ちを始めている。
【星】
「我は無敵、我が槍は無双!はああああっ!」
右翼からは、星が魏の大軍の中を槍一本で突貫してきた。目にも止まらぬ乱れ突きで、魏軍兵士を次々に仕留め、道を切り拓いていく。
【凪】
「いかせん!」
ドォンッ
【星】
「おっと!」
それを止めたのは、凪の放った赤々と燃える気弾だった。
【星】
「気の使い手…楽進か!」
【凪】
「…お相手、願います。」
【星】
「死神の部下、三羽烏の筆頭…相手にとって不足なし!いざ参る!はあああっ!」
【凪】
「でぇぇいっ!」
こちらでも始まった一騎打ち…五虎大将のほとんどを足止めする事に成功し、兵数で勝る魏軍が圧倒的に有利になった…かに見えたが、
【雪蓮】
「忘れてもらっちゃ困るわ!」
【祭】
「ワシら、孫呉の将が未だ健在という事をな。」
【思春】
「鈴の音は、黄泉路に誘う道標…」
【明命】
「参ります!」
呉の武将たちが、一騎打ちで身動きがとれない五虎将に代わり、兵たちを指揮し巻き返しをはかって来た。
【真桜】
「別に忘れてへんよ?」
【流琉】
「呉の皆さんの相手は私たちです。」
【沙和】
「そうなのー!兵の指揮なら負けないの!野郎どもぉ!」
【魏軍兵士】
「「「「「さー、いえっさー!」」」」」
【沙和】
「股の間にぶら下げたの斬り落とされたくなかったら、死ぬ気で食い止めろ!怯んで足竦ませてたら、大事な玉握り潰すぞ!」
【魏軍兵士】
「「「「「さ、さー、いえっさー!」」」」」
【雪蓮】
「か、かわいい顔して、言う事えげつないわね…」
蒼馬の入れ知恵で始めた彼女なりの新兵訓練により、魏軍の半数以上の兵士が沙和の命令に絶対服従していた。彼女の指揮する兵は、凪や真桜の兵たちより格段に動きがいい。士気も高く、時には死兵となるほどた。
その勢いで、呉の将兵たちを恐れる事無く突き進む。
【沙和】
「首級を上げろ、ウジ虫どもぉっ!」
…そして、部隊の中央では…春蘭と愛紗が対峙していた。
【春蘭】
「やっと、本気でやれる相手が出てきたな。」
【愛紗】
「私もだ。行くぞ、夏侯惇…」
【春蘭】
「来い!関羽っ!」
二人は同時に、青龍と七星餓狼の力を解放し、全力で打ち合った。
ドガァンッ
瞬間、轟音と地響きが戦場を駆け巡る…衝撃で、近くにいた兵士たちが吹っ飛ぶのが見えた。
【愛紗】
「はあああっ!」
【春蘭】
「でぇぇいっ!」
その光景が見えてなかったのか、二人はその後も容赦なく打ち合い、その度に周りの兵士たちが…悲鳴と共に吹き飛んでいった…。
…早く決着しないと、悪戯に兵たちの被害が増えそうだ…。
【桃香】
「……みんな…」
【一刀】
「大丈夫だ、桃香。本気でヤバそうになったら、俺が救援に向かう。今のところ大丈夫そうだがな。」
【桃香】
「うん…」
城門の前に陣取る桃香は、不安そうに前線の様子を窺っている。両手を合わせ、祈りを捧げるようにして…。
【一刀】
「…拮抗しているな。愛紗たちの所が混乱しているが、敵も同じようだし…先に兵の士気が落ちた方が負け、か。」
五大将軍の一騎打ちも、兵たちの勢いもほぼ互角…兵数で劣っているが、ここまで来れば後は数より士気の問題だ。
そう思っていた矢先に…
【一刀】
「っ!?」
一刀は表情を強張らせて、慌てて左に向き直る…
【桃香】
「どうしたの、ご主人さ…え?」
【一刀】
「下がってろ、桃香…」
一刀の睨む先にいたのは…
【蒼馬】
「やぁ、一刀君。劉備ちゃんも、久し振りだねぇ~。」
【華琳】
「さぁ、劉備。先の舌戦の続きをしましょうか?ただし、今度は…こっちでね。」
蒼馬と、華琳の二人だった。華琳は、自身の得物である絶を桃香に向けて言った。
【一刀】
「くっ!重い腰上げて来やがったな…」
【華琳】
「重くないわよ!」
【一刀】
「あ、いや、あんたじゃなくて…」
【蒼馬】
「いつまでも寝てられないからね~。君を殺すのが、死神としてのおじさんの最期の役目だ。」
睨み合う一刀と蒼馬…
【一刀】
「望むところだ。それと、今は俺も、桃香に仕える将の一人なんでね…桃香には、指一本触れさせねぇよ。二人纏めてかかって来い!」
【焔耶】
「何を一人でかっこつけてんだ、お館!」
桃香の護衛の為に残っていた焔耶が、一刀より前に出てきて叫ぶ。
【焔耶】
「桃香様をお守りするのは、この魏文長の役目!」
【桔梗】
「左様。お館様、ここは我らにお任せ下され。」
【蒲公英】
「そうだよ。こんな奴ら、蒲公英たちが…」
桔梗と蒲公英も一刀の前に出て、蒼馬と華琳の前に立ち塞がる。
【華琳】
「貴方たちなんてお呼びじゃないわ。退きなさい。」
華琳は、三人に睨みを聞かせると、その身から凄まじいオーラを放った…殺気とも、威圧感とも違う…
【蒲公英】
「な、何!?」
【焔耶】
「ぐっ!か、体が…」
三人は一瞬で、金縛りにでもあったように身動きが取れなくなってしまった。
覇王の覇気…王の覇気は、言うなればカリスマのようなもので、精神面で相手を従わせるだけのもの…意志や価値観などが180°違えば、抗うことも出来る。だが、この覇王の覇気は肉体までもを従わせる力があり、意志に反したとしても体の自由が利かなくなってしまうのだ。
【桔梗】
「くっ、う、動けん…」
【華琳】
「…蒼馬。」
【蒼馬】
「一刀君、ちょっと移動しようか?おじさんたちも、お邪魔みたいだからね~。」
【一刀】
「お邪魔なのは、あんたら二人だ!だいたい、総大将自ら、敵陣に乗り込んで来るなんて…」
【華琳】
「他に動かせる駒が無ければ、王自らが動くより他ないじゃない。」
華琳は小さな筒を空に向けて、繋がれた紐を引いた…すると、パァンという音と共に、空に小さな花火が上がった。昼間なのでほとんど見えなかったが、音は戦場に鳴り響いたし、空には赤い煙も残った。
その煙を目にした瞬間、魏の将たちの目つきが変わった。
【秋蘭】
「…華琳様が動かれたか…」
【紫苑】
「何処を見ているの!」
紫苑が、立て続けに三本に矢を放つ…しかし、秋蘭は空を見上げたまま、飛んでくる矢を一瞥する事もなく、全て自身の弓で弾き飛ばした。
【紫苑】
「なっ!?」
【秋蘭】
「終わりだ、黄忠。」
秋蘭はそう言うと、一度に五本も矢を番えて一気に放った。
【紫苑】
「くっ!?」
紫苑も矢継ぎ早に撃ち返したが、弾けたのは三本まで…残りの二本は、彼女の右腕と左足の腿を掠めた。
【紫苑】
「しまっ…」
【秋蘭】
「もはや弓は引けまい?」
さらには、
【霞】
「おりゃあああっ!」
【翠】
「ぐっ!?は、速いっ!うわぁっ!」
神速を誇る霞の攻撃に、翠は槍を弾き飛ばされた上に落馬してしまった。
【翠】
「づっ!く…」
起き上がろうとする翠の眼前に、蒼竜の刃が突き付けられる。
【霞】
「勝負あったな、馬超。」
【一刀】
「マズい…紫苑と翠が…」
【桃香】
「え?」
二人の危機を察知した一刀だが、この状況で桃香を残して救援に向かう事は出来ない。
【華琳】
「さぁ、劉備。誰も失いたくないというのなら、自らの手で私を倒しなさい。でないと…貴方の大切な部下たちが、死ぬ事になるわよ?」




