第三十四話 はじめての……
一刀が蜀に着いた頃、魏では…
【華琳】
「……」
臨時の軍議が開かれる事になった。
華琳は、医務室から玉座の間へ向かっているところだ。現在、城にいる将は真桜と、呼び戻された霞、桂花、稟、風の三軍師だけだ。既に召集はかけてあるので、もう揃っている事だろう。
華琳も急いだ。事は急を要していた。が、ここだけの話、未だ空間転移の酔いが覚めない彼女の足は、まだ少しフラついており、早歩きもまともに出来ない状態だった。
蒼馬に対する恨み言を噛み殺して歩き続け、やっと玉座の間へ辿り着いた華琳…。
【華琳】
「ふぅー…城が大き過ぎるのも、ちょっと考え物ね…」
それは大きくなれば気にならなくなる、とは怖いので言えない…。
扉を開けると、先に上げた五人はやはり揃っていた。
【稟】
「華琳様、お具合は?」
【華琳】
「大丈夫よ、ありがとう稟。皆、揃っているわね。」
【真桜】
「あれ?隊長は?」
軍議である以上、当然ながら将である蒼馬がいないのはおかしい。まして、昼間あれだけ元気にピンピンしていたのだ。仮病を使うのは無理がある。
桂花が気づかれないようにガッツポーズを取っているが、皆にバレバレだった。
【華琳】
「蒼馬はまた城を出たわ。今回は、私も許可しているから安心して。それと桂花、そもそもこの軍議は蒼馬が開かせたものよ。」
瞬間、桂花は愕然とした顔で愕然とした顔で華琳を見つめた。よっぽど蒼馬を除け者にしたいのだろう。
【華琳】
「霞、蒼馬から聞いたわ。白装束の、謎の勢力についてね。」
【霞】
「!」
それは、つい先ほどの話…華琳は医務室に呼ばれた。呼んだのは、他ならぬ蒼馬だ。彼以外に、一国の王である華琳を、呼び付けるなんて不遜なマネをする者はいない。
【蒼馬】
「やぁ、華琳。」
【華琳】
「蒼馬!?起きていて平気なの?」
医務室に入ると、蒼馬は寝台の上に腰掛けて華琳を待っていた。しかも…
【華琳】
「それに、その姿…」
その姿は、もう老人ではなかった。髪は元通り黒く染まり、深く刻まれた皺も無くなり、最初に会った頃と同じ二十代そこそこの姿に戻っていたのだ。
【蒼馬】
「事情…というか、事態が大きく変わってね…おじさんも、もう暢気に寝てられないみたいだからねぇ。」
【華琳】
「どういう事?」
【蒼馬】
「…順を追って話した方がいいか、結論から話すべきか、迷うところだねぇ。話の最初にすべきは、反董卓連合の事かなぁ?あの騒動の裏には、実は黒幕がいたんだ。そいつらについては霞ちゃんの方が詳しいかもだけど、ヤツらは董卓ちゃんをエサに、連合を組織させ洛陽へとおびき寄せた。」
【華琳】
「ちょ、ちょっと待ちなさい!何を今さら、そんな時の話を…」
【蒼馬】
「繋がっちゃってるんだから、仕方ないでしょう?あの時、連合を組織させた人物が誰だったか、忘れたわけじゃないよねぇ?」
蒼馬の問いに、華琳は動揺を隠せなかった…。
【華琳】
「まさか…麗羽が?」
【蒼馬】
「正確には、彼女は黒幕に利用されてただけだよぅ。しかも、連合が解散した後もねぇ。」
そこまで話を聞いた華琳は、蒼馬が言わんとしているその黒幕の目的が何なのか、思い当たった。
【華琳】
「…天の御遣い…そいつらは、北郷 一刀を亡き者にしようとしている?」
【蒼馬】
「さすがだね。実際、反董卓連合で彼女が総大将になっていたら…無茶な作戦で一刀君は消されていたかもね。でもそれが失敗したから、今度は直接…」
【華琳】
「…だとしたら、天の御遣いが表向き死んだ事になった今、そいつらは目的を達した事になっているはず。警戒する意味なんて…」
【蒼馬】
「まだ終わりでは無いとしたら?一刀君の不在に、劉備ちゃんが起こした今回の行動…あの子が自らの意思で、戦を仕掛けようとするとは思えない。ヤツらの手は、すでに蜀の中に伸びている。さらに、関羽ちゃんは撤退の途中、呉に捕縛されたみたいだしねぇ。呉と言えば、最初に一刀君たちの所を攻めたのは袁術ちゃんだけど、あの子からは袁紹から感じた黒幕の気配を感じなかった。でも、あの時期に動いたのは偶然とは思えない。遠巻きから、袁術ちゃんを焚きつけた存在が…まだ孫呉の中にいるかもしれない。」
蒼馬は飽くまで仮定という体で話を進めているが、華琳はその話が直感的に真実だと思った。事実、ほとんど蒼馬の読み通りだった。
【華琳】
「それじゃあ…次に狙われるのは…この魏ということね?」
【蒼馬】
「そういう事だよぅ。だから、後手に回らないよう、今の内に皆を呼び戻して、出来る限り兵を招集し戦いに備えておくんだ。代わりに、おじさんが五胡の勢力に釘を刺しておくよ~。関羽ちゃんの身も心配だし、助けておいて上げないとだし…戻ってきたら、いつでも出陣できるようにしといておくれよぅ。あ、守備隊として残すべき警備兵の名簿、渡しておくよう。」
蒼馬はそう言って、竹簡を一本、華琳に手渡した。
【華琳】
「ありがとう。すぐに準備に取り掛かるわ。」
【蒼馬】
「それがいいよぅ。ここからは、時間との勝負でもあるからねぇ。」
そう言い残し、蒼馬は空間転移で医務室から姿を消した。行き先は、五胡勢力か、はたまた呉か?
【華琳】
「誰かある!」
華琳も、軍議を開くべくすぐに準備へと取り掛かった。
そして、現在に至るのである。蒼馬との話を、華琳は軍議に出ている五人に全て話して聞かせた。
【霞】
「アイツら、洛陽から忽然と姿消しといて、まだ裏で何かやらかしてんのかい!」
霞は手が震えるほど拳をきつく握り締め、怒りに満ちた声を荒げた。
【風】
「…やはり、噂は事実だったんですね。」
風がぽつりと呟く。
【稟】
「我々も、ここに来る前の旅の途中、それらしい噂は聞きました。洛陽で、怪しい白装束の連中が動いている、と。しかし、その噂もすぐに、董卓の配下の者たちだという話に塗り替えられていましたが。」
【華琳】
「その者たちが蜀や呉を動かし始めた今、私たちも万全の態勢を整えておかねばならない。蒼馬は五胡に釘を刺しに出たわ。彼が戻るまでに、私たちは全兵力を纏めて軍を編成しておくわよ。」
【桂花】
「御意。すぐに、国境に派遣した将兵も呼び戻します。」
【華琳】
「頼んだわよ。長い戦いになるでしょうから、物質の調達もぬかりなくお願い。特に兵糧は、よく食べる子もいるしね。」
【桂花】
「…はい。」
かつて黄巾党との戦いでの苦い記憶を思い出し、桂花の表情が曇る…別にあれは、彼女が悪いわけではなかったのだが…。
【華琳】
「稟は敵の動きなど情報を集めつつ、進軍経路を見立て、策を練りなさい。真桜は、策に必要な道具や絡繰を準備しておいて。」
【稟】
「御意。」
【真桜】
「任しとき♪」
【華琳】
「霞は春蘭たちが戻るまで、残っている兵たちを纏め、鍛練をお願い。
【霞】
「よっしゃ!びしびし鍛えたるで!」
【華琳】
「風は桂花と共に物資の調達を。特に、秋蘭たちの部隊が心配ね…医療用具を多めに用意しておいて、戻りしだい早急に治療を…」
【風】
「ぐぅー…」
【華琳・桂花・稟】
「「「寝るなっ!」」」
【風】
「おおぅっ!?」
稟だけでなく華琳や桂花にまで同時にツッコまれ、さすがの風も素で驚いたようである。
こうして、魏の面々も慌ただしく戦の準備の為に動き出した。
所変わって、呉の城の地下牢…そこには、傷つき、四肢を鎖で繋がれ磔にされた愛紗がいた。
【愛紗】
「……」
恐らく、彼女は殺されるだろう。何しろ、彼女は蜀の武将のトップだ…兵たちの士気を高めるべく、公開処刑にするのがいい。彼女自身、もうその覚悟は出来ていた。
【愛紗】
「…もうすぐ、そちらに参ります…ご主人様…」
むしろ、一刀が長坂で死んだと思っている愛紗には、一刀の下へ逝けるならそれも悪くはなかった。
と、半ば自棄になっていた愛紗の下に…牢の戸を開け、数人の呉軍の兵士たちが訪れた。
【愛紗】
「な、何だ貴様ら?」
愛紗の瞳に、警戒と、恐怖の色が浮かぶ。兵士たちの様子は、自分に刑の宣告をしに来たようではなかったからだ。むしろ…
【呉軍兵士A】
「な、なぁ、本当にいいのか?」
【呉軍兵士B】
「あぁ。呂蒙将軍からの許可は出てる。」
【呉軍兵士C】
「マジかよ?たまんねぇな、へへ…」
下卑た笑みを浮かべ、彼女の体を舐めるように見つめる兵士たち…本能的に、愛紗は彼らの目的を悟った。
【愛紗】
「くっ!近寄るな、貴様ら!」
叫び、腕に渾身の力を込めるも、鎖はビクともしなかった…。
【呉軍兵士B】
「叫んでも無駄だ。言ったろ?呂蒙将軍の許可は下りてる…アンタには、これからたっぷり、俺たちの相手をしてもらうぜ。」
【愛紗】
「ひっ、く、来るな!」
しかし、愛紗の言葉も睨みも無視して、兵士たちは磔にされた彼女の肢体に薄汚い手を伸ばそうとする。
【愛紗】
「くっ!さ、触るな!私に触れていいのは、ご主人様だけだ!」
【呉軍兵士A】
「つっても、その御遣い様も死んじまったんだろ?寂しい体を、慰めて差し上げますよ、関羽将軍?」
【愛紗】
「い、いやあっ!」
恐怖と、悲しみと、悔しさに、愛紗が悲痛な叫びを上げる…同時に、兵士の手が彼女の胸に届こうとしたが、その手は次の瞬間には床に転がっていた。
【呉軍兵士B】
「へ?」
兵士の顔が、下卑た笑みの形そのままに、一気に青ざめていく。
ブシャアッ
【呉軍兵士B】
「ぎゃああああああっ!」
今度は、兵士の叫び声が牢屋に響き渡った。
【愛紗】
「…?……?」
兵士の血をもろに浴びてしまった愛紗は、その血で真っ赤に染まったしまった。彼女が歴戦の勇将でなければ、卒倒してしまいそうな状況だ。
【呉軍兵士C】
「お、おい!?どうなって…っ!」
突然、背後から両肩に乗せられた手の感触に、その兵士は声を詰まらせた。
【蒼馬】
「ふぅ~ぃ…間に合って良かったよぅ~。」
死神は、恐ろしいほど優しく、その肩を掴んでいた…一瞬で、その命を刈り取る事の出来る手が、その残酷さとは裏腹に、傷つけないように、壊さないように…そっと、添えられるように乗せられている…。
兵士は、今にも発狂しそうだった…。
【呉軍兵士A】
「あ、ああ……魏の…死神……」
【蒼馬】
「やぁ、関羽ちゃん…って、ごめん。真っ赤になっちゃったね…」
【愛紗】
「そ、蒼馬殿?何故…」
【蒼馬】
「話は後だよぅ。とりあえず、ここを出ないとね~。」
言って、蒼馬は剣を抜き放った。瞬間、兵士たちは頭を押さえその場に縮こまった。
しかし、斬られたのは彼らの首ではなく、愛紗の四肢を繋いでいた鎖だった。
【蒼馬】
「さ、行こうか。孫策ちゃんに挨拶して、服も用意してもらった方がいいね。」
【愛紗】
「いや、そんな事…」
【蒼馬】
「彼女には貸しがあるから…何とかなるんじゃないかな?」
そう言って、蒼馬は愛紗を連れて牢屋を後にした。恐怖で動けない兵士たちをその場に残s…
【蒼馬】
「あぁ、君たち…もう、死んでるからね。」
…去り際にそう言い残した蒼馬…助かったと思った矢先、無傷だった兵士二人も鮮血を上げて倒れた。
【呉軍兵士D】
「し、侵入者だぁっ!」
突然、城の中に湧いて現れた蒼馬と、血まみれになった愛紗の姿に、呉軍の兵士たちは戦々恐々としながらも、彼らの前に立ち塞がった。
【蒼馬】
「退いてくれないかい?」
【呉軍兵士E】
「だ、誰が!ここから先は通さんぞ!」
【蒼馬】
「孫策ちゃんに、関羽ちゃんを連れてくって伝えるだけだよぅ~。仕方ないねぇ~…関羽ちゃん、耳を塞いで。早く。」
蒼馬は愛紗に耳を塞がせると、後ろに下がらせた。そして、大きく息を吸い込み…
【蒼馬】
「…退かんかいっ!若造どもがぁっ!」
怒鳴った。ただ、怒鳴っただけだ。だが、その怒鳴り声は衝撃波となって、兵士たちを吹き飛ばし、壁や天井に亀裂を走らせた。
恋との戦いで見せた龍人の姿からも分かる通り、彼には龍族の血が流れている。生れついての龍人ではないが、その血のおかげで、龍族が持つ能力も得ているのだ。その一つが、この声…龍の息吹だ。
【蒼馬】
「ふぅ~ぃ…年寄りの言う事は聞くもんだよぅ~。」
【愛紗】
「その姿では説得力半減です…」
【蒼馬】
「お出かけように、また若作りしただけだよぅ。」
若作りってレベルじゃないし、そもそも意味を分かっているのだろうか?
その後も、呉の兵士たちが何度となく行く手を遮ろうとしたが…その度に蒼馬の怒声と殺気が城内に迸り、兵士たちは無力化されるのだった。
【蒼馬】
「お邪魔するよ~。」
やっと辿り着いた玉座の間に入った蒼馬は、恐ろしく軽いノリで挨拶し、正面に座る雪蓮を見上げた。
その手前脇には、呉の主だった将が並んでいる。皆、殺気立って臨戦態勢で構えている。
【雪蓮】
「蒼馬…何のつもり?」
【蒼馬】
「君に話があって来たのに、兵士たちが中々通してくれなくて…ふぅ~、疲れた。喉も渇いたし…話しの前にお茶が欲しいね。」
【雪蓮】
「用意させましょうか?毒入りでよければ。」
【蒼馬】
「冗談だよ。そんなカリカリしないでよぅ。でも、関羽ちゃんは貰っていくよ。」
【亞莎】
「なっ!?ふざけるな!関羽を捕らえたのは私の功績だぞ!貴様などに…」
亞莎が口を挿もうとした…瞬間、蒼馬が亞莎を睨みつけた。
【蒼馬】
「おじさんは孫策ちゃんと話してるんだ。小娘が、しゃしゃり出るな。」
殺気が、玉座の間を支配した…この殺気の中では、誰も何も喋れないだろう。
【蒼馬】
「さてと、孫策ちゃん…君には、一つ貸しがあったね?」
【雪蓮】
「…それを、返せと?」
【蒼馬】
「わざわざ人聞きの悪い言い方しないでよぅ。これでチャラにしちゃおうって提案してるんだよう。」
【雪蓮】
「…フン、まぁいいわ。関羽を連れて行きなさい。これで官渡での借りは返したからね。」
【蒼馬】
「出来れば、関羽ちゃんに服を用意してあげて欲しい。おじさんのせいで血まみれになっちゃったし。」
【雪蓮】
「……冥琳!」
【冥琳】
「はぁ…」
内心では相当ご立腹のようだったが、雪蓮は冥琳に頼んで愛紗の服を用意してくれた。それに着替えた愛紗を連れ、蒼馬は呉の地を後にした。
【愛紗】
「蒼馬殿…」
【蒼馬】
「ズズズ~…ムシャムシャ…」
後に…
【愛紗】
「何をしてるんですか?」
【蒼馬】
「いや~、お腹が空いちゃって。」
……二人は、呉の街のとある酒家で食事を取っていた。
何でも、せっかくだから呉の料理を食べておきたいという蒼馬のわがままらしい。観光気分か、と思わずツッコミたくなる暢気ぶりだ。そんな余裕は無いのではなかったのか?
【蒼馬】
「おじさん、この後で五胡に釘を刺しに行かないといけないから…たんと食べておかないとねぇ~。関羽ちゃんも、良ければ手伝ってくれると助かるよ。」
【愛紗】
「…断ったら?いくら何でも、二人で五胡に乗り込むなんて正気の沙汰では…」
【蒼馬】
「うん。だから、無理強いはしない。相手は蛮族の五胡…如何に関羽ちゃんでも、怖いのは仕方ないよ。」
蒼馬のその言葉に、愛紗が目を鋭くする。
【愛紗】
「なっ!私が、恐れていると?蒼馬殿とはいえ、そのような侮辱、許せませんぞ!我は関雲長!敵が誰であろうと、恐れをなしたりなど…」
【蒼馬】
「そうか、それは良かったぁ。偃月刀を取り返しておいた甲斐もあるよ。」
【愛紗】
「あぁっ!私の青龍!」
【蒼馬】
「武器も取り戻したし、これで関羽ちゃんが手伝ってくれるなら百人力だよ~。」
【愛紗】
「ぐっ!ハメましたね?」
今頃になって、自分が蒼馬に嵌められたと気づく愛紗…。
【愛紗】
「分かりました。それなら何はともあれ、腹ごしらえですね。」
愛紗も気持ちを切り替え、食事を取る事にした。
その後、二人は軽く五人前から六人前分ほどの料理を平らげた。
【蒼馬】
「ふぅ~ぃ…呉の料理も、中々おいしいねぇ~。」
【愛紗】
「暢気ですね…まぁ、同感ですが。」
【蒼馬】
「さてと、お勘定はと…」
【愛紗】
「そう言えば、蒼馬殿?呉のお金なんて持っているんですか?」
【蒼馬】
「お金ならここに…呉の?」
巾着を取り出した蒼馬は、愛紗のその発言に固まった。確かに、彼は魏で警備隊を取り仕切る総隊長で、そこそこの給金を貰っている。巾着の中には、一市民のそれより遥かにたんまり入っている。魏の貨幣が…。
【蒼馬】
「…魏のじゃ、ダメ?」
【愛紗】
「…たぶん…」
……。
二人はしばらく、顔を見合わせていた。そして……
【蒼馬】
「…一、二の…」
【愛紗】
「三!」
瞬間…
【店主】
「く、食い逃げだぁっ!」
一目散に、店から逃げ出したのだった。恐らく、愛紗にとっては初めての経験だっただろう。




