第二十二話 トレジャーハンター蒼馬の冒険
蒼馬が華琳の下を離れてから三日後、蒼馬はすでに南皮の都へと入っていた。と言っても、目的があったわけではない。ただ、彼の放浪の仕方が文字通り風任せだっただけだ。
【蒼馬】
「ん~、こっちにはあまり、来たくなかったんだけど、ねぇ~。」
そう言いつつ、顔はいつものヘラヘラ顔だ。
この地を治める麗羽とは、反董卓連合の席で顔を合わせているが…双方にとってあまりいい印象があるわけではない。近くに寄ったからといって、顔を見せる必要もないだろう。
と、ここに来て、不意に風がその向きを変えた。
【蒼馬】
「…今度はあっちか。でも…」
その方向には寂れた食堂が建っていた。そろそろ昼時だと言うのに、店にはまるで活気がない。窓も砂で汚れ、中の様子が見えないほどだ…。看板もボロっちぃし、開いてるようには見えない。
【蒼馬】
「というか、随分と寂しい街だねぇ~。」
この店だけではなかった。華琳の下にいたからこそ分かる…この街の民には、活気がまるでない。
【蒼馬】
「…ウィング。」
辺りを見回し、人があまりいないのを確認すると、蒼馬は背中から白く輝く光の翼を出現させた。それを大きく羽ばたかせ、その場から飛び立つ蒼馬…それを見ていた数人の民たちは、その光景に腰を抜かすほど驚いていた。
飛び立った蒼馬は、そのまま追い風に乗りつつ、麗羽の居城の上空へと差し掛かった。
【蒼馬】
「カノン。」
その城に向かって、蒼馬はあろう事か、いつか見せた光弾を落としていった。
ズガアアアンッ
光弾は、まさに城のど真ん中に直撃した。だが、蒼馬はそれを見ずに、いつもの飄々としたヘラヘラ顔で、飛び去っていくのだった。
ズガアアアンッ
【猪々子】
「な、何だ?」
その時、文醜は兵たちの鍛練をしていた。すると突然、城の真ん中…玉座の間の方から、轟音が鳴り響いてきたのである。
玉座の間…そこには、当然ながら彼女の主である麗羽と、同僚の顔良がいるはずである。
【猪々子】
『斗詩っ!』
文醜は弾丸の如く駆け出し、急ぎ玉座の間へと向かった。しかし、そこで目にしたものは、天井が崩れ落ち、瓦礫の散乱する荒れ果てた室内の光景だった。玉座は、跡形もなく吹き飛ばされている…無論、その主も…。
【猪々子】
「麗羽さまーっ!」
【麗羽】
「何ですの、猪々子?騒々しい…」
【猪々子】
「うわっ!れ、麗羽さま?あ、あれ…え?」
突然、背後から現れた麗羽の姿を見て、混乱する猪々子…しかし、彼女の恰好を見て、さしもの猪々子も事態が飲み込めたらしい。
【猪々子】
「麗羽さま…湯浴みしてたんですか…。」
麗羽は普段着ている服や鎧姿ではなく、現代で言うバスローブのような物を着ていた。無論、この時代にそんな名前の服は無いのだが、いわゆる襦袢などの肌着より生地が上質でフワフワ…何の生地かは知らないが、見た目や作りはまさにそれそのものだ。
【麗羽】
「えぇ。って、何ですの、これはっ!?」
この惨状に、麗羽も驚愕の表情を浮かべる。それはそうだ、雷が落ちたってここまで酷い事にはならないだろう。
【猪々子】
「分かりません。そうだ、麗羽さま。斗詩は?一緒じゃないんですか?」
【麗羽】
「斗詩なら、先に謁見の準備を…し、て……」
言いながら、湯浴みをしてきたはずの麗羽の顔がどんどん青ざめていく…ぎしぎしと音を鳴らしながら首を廻らせ、玉座のあった方へ顔を向ける…見事に、何もなくなっている。普通、玉座は床よりも高くなった場所を設け、そこに置くのが一般的だが…どれぐらい無くなったって、その土台が丸々無くなってしまっているのである。
【猪々子】
「ま、まさか…と、斗詩ぃっ!」
叫ぶ猪々子…
【斗詩】
「な~に、文ちゃん?」
返事をする斗詩…ん?
【猪々子】
「ぅえっ!あ、え?斗詩?」
振り向くと、普段通りの姿で斗詩は立っていた。立つ、という事は、ちゃんと足もあるという事だ。幽霊ではない。
【斗詩】
「きゃっ!何、これ?何があったの?」
【猪々子】
「斗詩ぃ~っ!」
泣いて喜びながら、猪々子は斗詩に抱き着いた。
【斗詩】
「ちょっ、ぶ、文ちゃん?」
【猪々子】
「よがっだ~、うわ~んっ!」
幸いにも、城中の人間に被害は無かった。死神と呼ばれる蒼馬にしては珍しい…いや、そもそも彼は黄巾党こそ容赦なく皆殺しにしていたが、それ以外では誰も殺めていない。反董卓連合でも、‘し’水関の門を吹き飛ばしただけだった。
もしかすると、玉座の間に誰もいないのを知ってて、そこを狙ったのだろうか?しかし、とすれば何の為に?謎な行動ばかり取る蒼馬だが、彼の目的は数日のうちに明らかになった。
麗羽の城の城下で、白い光の翼を生やし飛び立つ男の事と、城に…それも玉座の真上に雷(正確には違うが…)が落ちたという話が瞬く間に広まった。民たちは二つの話を結び付け、これを袁紹に対する天罰だと考えるようになった。重税に苦しめられていたからだ。ワガママ放題、贅沢三昧の麗羽…それを支えているのは言うまでもなく、民たちの納める税なのだから、どれだけ彼らが搾り取られているかは想像に難くない。
蒼馬は、すぐにそれを察したのだろう…そして、わざと数人の街人に自身のウィングを見せ、さらに城にカノンを落としていったのだ。
あたかも、天の遣いが現れて、袁紹に天罰を下した…と、民たちに思わせるために。少しでも、彼らの気が晴れればいいと…そう考えたに違いない。
……なんて、何の根拠もないわけだが。
さて、それからさらに三日…蒼馬の放浪は続いた。時には歩き、時には飛び、時には泳ぎ…全く目的が見えてこない彼の旅も、もうすぐ一週間になろうとしていた。
しかし、ここに来てこの旅にも変化が訪れていた。
現在、彼は何処かの山を登っている。険しい山道…狭い足場しかない断崖を、慎重に進んでいく。振り向けば地上は遥か彼方…常人なら目が眩むような状況だが、蒼馬は気にしていない。まぁ、飛ぼうと思えば飛べるし、瞬間移動まで出来る反則人間だから仕方がない。
【蒼馬】
「ん~、お宝の気配がするねぇ~。トレジャーハンターの血が騒ぐよ~。」
こんな険しい山の何処にお宝があると?頂上から見る美しく雄大な景色など、一円の稼ぎにもならないだろう。
そんな無粋な事を考えていたかどうかは知らないが、やがて先へと進む蒼馬の行く手に、人一人が入れそうな大きさの、洞穴の入口が現れた。ここからでは、どのくらい先があるのかは見えないが、どうやら蒼馬のカンでは…
【蒼馬】
「ビンゴぉ♪」
その先に、お目当てのお宝があるという事らしい。
中へ入ってみると、当然だが真っ暗で何も見えなかった。
【蒼馬】
「カノン。」
蒼馬は小さな光弾を出現させると、翳した手の平の上で静止させた。懐中電灯の代わりにするらしい。
しかし、その光でも照らしきれないほど、洞窟は先まで続いていた。
その後は、二十分近く一本道だった…途中、上ったり下がったり、道が細くなってたりしたわけだが…幾千ものお宝を発見してきた、ベテラントレジャーハンター・蒼馬にとっては、何て事ない道のりだった。
【蒼馬】
「あたた…腰が…」
…何て事…ない?
途中、持病のヘルニアが少し悪化した節もあったが、概ね順調に進んでいた。しかし…ここにきて道が二手に分かれている。右と左…どちらに進むべきか。
【蒼馬】
「お宝の気配は…どっちも違うねぇ?」
どっちも違う、とはどういう事だろうか?ここまで来て、やっぱり無かったなんてオチだけはやめて欲しい。
【蒼馬】
「どっちも罠の気配しかしない…お宝の気配はかなり近いんだけど、この二つの道はフェイクだね~。…正面?いや、上かな?
蒼馬は今までライト代わりにしていたカノンを、天井に向かって投げつけた。
ドガァンッ
爆発するカノン…砕け散り、降り注ぐ岩盤…魂鋼でそれを凌ぐ蒼馬。
落盤が止むと、蒼馬は自身で開けたその穴めがけ跳び上がった。高跳びの選手も真っ青な大ジャンプを見せ、蒼馬はその先に開けた空間へと侵入した。カノンが無くなった事で、辺りは真っ暗である。
【蒼馬】
「……暗くて姿は見えなくても、気配で分かるよぉ~。」
蒼馬の独り言に応えるように、闇の向こうで何かが蠢いた。そして…前触れなく、紅蓮に燃え盛る業火が、蒼馬に迫ってきた。
【蒼馬】
「ふぅ~ぃ。」
蒼馬は避けようともせずに、その場で溜め息を吐いた…すると、業火はまるで強風に煽られたように、蒼馬の前で勢いを失い、霧散してしまった。
炎が完全に消える前に、この空間の奥に見えた影…それは、一般人ならファンタジー映画などでしか見たことのない生物だった。
【守護竜】
「…侵入者…排除…」
そこにいたのは、ティラノサウルスに翼が生えたような姿の生物…ドラゴンだった。
【蒼馬】
「竜族が守るお宝…相当な代物なんだろうねぇ~。楽しみだよぅ~。」
【守護竜】
「ほざけっ!何人にも、この宝は渡さんっ!」
再び、蒼馬を襲う業火…しかも、その威力は見た感じ先の二倍以上…さすがの蒼馬も、これは防げまい。しかし、それでも蒼馬は余裕の態度を崩さない。それもそのはず…竜族の倒し方も、彼は熟知していた。
空間転移で、蒼馬はギリギリ炎を躱し、そのままドラゴンの頭上へ…
【蒼馬】
「貫徹。」
そしてそのまま、落下様にドラゴンの頭と首の付け根を、いつぞや城門を吹き飛ばしたあの技で叩きつけたのである。
【守護竜】
「グアアアアッ!」
無論、威力はあの時ほどではない。溜めもないし、そもそも空中からの打ち込みだ…しかし、威力は低くても、ここは竜族唯一の弱点…小一時間は間違いなく動けまい。
【蒼馬】
「カノン。」
再度、ライト代わりにカノンを出現させた蒼馬。外の光の一切届かない、闇に等しい空間だけが広がるこの部屋に、一体どんなお宝があるというのだろうか?
【蒼馬】
「さてはて~、お宝ちゃんとご対面~♪」
言って、蒼馬はドラゴンが守っていたと思しき宝箱を開けた。しかし、宝箱というには、少し大き過ぎる。人一人分は入れそうな大きさのゴツめの箱だ。むしろこれは、宝箱というよりも…
【蒼馬】
「あれ~?これは…」
中に入っていたのは…ひっ!やっぱりミイラ!
布でぐるぐる巻きになった、成人男性くらいの大きさのミイラである。顔などは布で見えないが、見たくもないのでわざわざ取る気にはなれない。
【蒼馬】
「…へぇ~…」
ミイラには目もくれず、蒼馬が棺の中から見つけ出したのは…四本の刀だった。剣ではない。刀だ…日本刀の形状そのものである。
何故、三国志の時代のはずのこの世界に、こんな代物が?
【蒼馬】
「…このお宝、前に智輝君のところで見たことあるね~。確か、龍刻四爪刀…だったかな?それが、何でここに?」
蒼馬には、これが智輝(プロローグ参照)の所にある物と、同一の品だと断言できた。彼は、物の魂との対話を完全に体得しているからだ。
しかし、だからこそ話がややこしくなるわけである。
【蒼馬】
「自慢げに見せてくれた彼のコレクションの一つだったから、おじさんが売りに行った物じゃないだろうし、ねぇ?」
同一品だからと言って、それ以前の智輝にこれを売ったのだとしたら…彼は元の売り主にお宝を自慢した事になる。そんなミスを、彼がおかすとは考えにくい。
つまり、二つの事実に矛盾が生じるのである。
【蒼馬】
「となると、自然と流れ流れて、彼の下へ辿り着いたと?それを以前、おじさんが見せてもらったと?」
もしそうなら、偶然というには出来過ぎている気がする。
【蒼馬】
「まぁ、いいや。竜族が守るに相応しいお宝なのは、間違いないからね~。」
何とも楽観的な…そんな視聴者の呆れる声も何処吹く風、蒼馬は刀を全て棺から取り出した。
ガコンッ
何処かで、何か嫌な予感のする音がしたかと思うと…棺がどんどん下へ沈み始めた。
【蒼馬】
「あれ~?これは、マズいねぇ~…」
お宝を手に入れて浮かれていたのだろうか、蒼馬は最後の罠の気配を見落としてしまっていた。
最後の罠とは、言うまでもなく…盗掘者を宝もろとも生き埋めにするという、ありがちなアレである。
【蒼馬】
「うおっ、とととといっ!ちょ、この揺れはシャレにならな…」
とか言ってる頭上から、落盤により崩れ落ちてきた岩が…これ以上は危険である。早く空間転移で外に…と思ったが、何故か蒼馬は入ってきた時に開けた穴から下へ飛び降りた。
(※お好みで、ルパン三世のテーマ曲など聞きながらお楽しみ下さい。w)
【蒼馬】
「ふぅ~ぃ、危ない危ない…ん?」
蒼馬は背後から迫りつつある気配を察知し、慌てて駆け出した。次の瞬間、二股になっていた分かれ道の片方からは大岩が、もう片方からは大量の水が流れてきたのである。
【蒼馬】
「わわわわわっ!ちょ、ちょ、ちょっとそれはないんじゃないの~?」
宝を抱え、元来た道を走る走る…狭くなっていた道も、来た時の三倍のスピードでくぐり抜けた。
【蒼馬】
「ふぅ~、これで大丈夫。あの大岩が詰まって、水もせき止められるだろうからねぇ~。」
そう思った蒼馬だったが…甘かった。
ズガンッ
【蒼馬】
「えっ?ちょっ!」
大岩は、つっかえるどころか、狭くなっていた岩盤を砕き、勢いもそのまましつこく蒼馬を追いかけてきた。さらには大量の水である…水流の力も加わり、大岩のスピードも上がっているようだ。
【蒼馬】
「うわわわわわわわっ!」
逃げる逃げる、ひた走る蒼馬…そんな事しなくても、空間転移で逃げ出せばいいのに、何故か蒼馬は迫る大岩と流水との無駄な追いかけっこを続けた。
そして、やっと出口が見えてきた…暗い洞窟の向こうに見える外の光が、こんなにも心救われるものだとは思いもしなかった。そして、走ってきた勢いのまま外へと飛び出す蒼馬…。
【蒼馬】
「脱出成功~♪ふぅ~ぃ、危なかったねぇ~…」
別にかいてもいない額の汗を拭う蒼馬…その顔は、達成感に満ちていた。が、彼は気付いているのだろうか?今の自分の状況を…。
【蒼馬】
「あれ?何か足場が…って、しまった!」
切り立った崖のような山肌の側面に開いていた洞穴、その出口から飛び出せば当然、そこに足場などあるはずもない…逃げ出したが最後、崖下へ真っ逆さまというわけだ。
自由落下に身を任せ、蒼馬はしばし四本の刀を観察した。そして、似合わない真面目腐った表情で、対話を試みる…。
【蒼馬】
「……ふ~ん、これは…予想より遥かに、凄いお宝だね~。それに面白い…ウィング!」
地面まで数メートルという所で、やっとウィングで飛行体勢をとった蒼馬は、猛スピードで飛んで行ってしまった。一体、何処へ向かったのやら…少なくとも、まだまだ華琳の下に帰る気はなさそうである。
その頃、董卓の一件で朝廷の権威は名ばかりとなっていた。これを機にと、華琳は自身の領地を魏と銘打って国を建て、都を許昌に置いた。
【華琳】
「…秋蘭。」
【秋蘭】
「はっ!」
【華琳】
「蒼馬は…戻ってきてくれるかしら?」
自室にて、華琳は窓の外を眺めながら、傍に控えている秋蘭に尋ねた。
【秋蘭】
「あの男は、自分の思うとおりにしか動きません。ですから、この国を、蒼馬が戻りたいと思うような、よい国にすれば…蒼馬もきっと戻ってくるでしょう。」
【華琳】
「…王は、国の発展を願い、民の安寧なる暮らしを守るもの…でも、いつの間にか私は、そんな事も忘れていたようね。己が覇道を極めんが為、地位と名声を手に入れんが為、彼を利用しようとしていた。平和な国を、民が幸福に暮らせる国を創る、自分はその為に協力するのだと…彼は最初から言っていたのにね。」
それは、かつての城壁の上での誓い…そう、裏切ったのは蒼馬ではない。裏切ろうとしていたのは、華琳の方だったのだ。野心に呑まれかかっていた華琳に、その事を気づかせる為に蒼馬は、彼女の下から離れたのである。…たぶん…。
【華琳】
「彼は義を重んじる男…よい国を創れば、必ず帰ってくる。そうね、今はただ、信じて待ちましょう。」
そう言った華琳の瞳には、いつかの濁りなき王の覇気が宿っていた。
【秋蘭】
「はい。華琳様。」
やっと元に戻ってくれた華琳の様子を見て、秋蘭は安堵の笑みを浮かべるのだった。
さらに、美羽が治める呉郡では、雪蓮たちの軍勢が慌ただしく動き始めていた。どうやら、戦の為に出陣の命令が下されたらしい。相手が何処かは知らないが、雪蓮の顔を見る限り、相当苛立っているのは分かった。
【雪蓮】
「全く、いいように使ってくれるじゃない…ムカつくわね。」
【冥琳】
「言うな、雪蓮。おかげで、こうして…」
冥琳と雪蓮の視線の先には、散り散りになっていた孫家の将たちが居並んでいた。中には、雪蓮と同じ髪と肌の色をした娘もいる。妹の孫権、孫尚香である。
【冥琳】
「孫呉の将たちを呼び戻す事が出来たのだから。」
【雪蓮】
「そうね…袁術がバカで良かったわ。」
動き出す袁術軍…その矛先が向くのは、果たして…
【白蓮】
「…フン。」
【星】
「どうなされた、伯珪殿?」
白蓮は一本の竹簡に目を通すなり、見るからに機嫌を損ねた様子で、その竹簡を机の上に放り投げた。
【白蓮】
「麗羽のヤツめ…北郷たちを攻めようという気らしい。よりによって、私に手を貸せなんてな…」
【星】
「ほう。それで、如何なされるおつもりか?」
【白蓮】
「…相手は腐っても大勢力、袁家の当主・袁本初だ。うちの兵力じゃ、どうやっても勝ち目はないだろうな。けど、友を裏切り生き残るくらいなら、友の為に戦い散る方がマシだ。」
【星】
「では、戦の準備にかかりますかな。」
星はそう言って、執務室を後にした。蒼馬に似て飄々とした雰囲気を持ちながら、何かと仕事の出来る彼女は、すっかり白蓮の右腕となっていた。
【白蓮】
「…群雄割拠、す…いよいよ、乱世の幕開けだな。」
白蓮の言う通り、いよいよ大陸は乱世の大きなうねりに飲み込まれようとしていたのである。この乱世を制するのは、果たして…
【蒼馬】
「ぶぇっくしょい!あぁ…」
上空を飛んでいた蒼馬が、このタイミングで大きなくしゃみをしたのは、単なる偶然である。




