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第二十一話 春蘭の修業

洛陽より帰還し早十日…陳留の街は、表向きは以前と変わらなかった。しかし、それは表向き、というか民たちにとっての日常である。

城の中は、ひどく険悪だった。原因は、この城の主である華琳だ。


【華琳】

「……。」


華琳は不機嫌だった。それはこっちに戻る前、虎牢関を攻め落としたあの翌日からずっとだ。

蒼馬の勝手で、せっかく手に入ったと思われた呂布がいなくなってしまったのだから。

あの直後、華琳は内心で狂喜していたのだ…初めて、蒼馬を連れて行って正解だったと思ったほどだ。蒼馬が見せたあの力が何なのかなど、気にもしなかった…春蘭が負傷の末に霞を捕えたという報告さえ、もはやどうでも良く思えたほどだ。

そんな彼女の喜びを、蒼馬は裏切った。本来なら打ち首にしてやりたかった…だが、呂布を引き入れる事が出来なかった今、蒼馬まで失いたくなかった。彼の持つ底知れない力に、華琳は気づかぬうちに、ひどく固執していたのである。

それを知ってか知らずか、蒼馬はやりたい放題なわけだが…それでも、仕事だけは真面目にこなしていた。特に、ここ最近は凪たちの指導にも熱が入っている。凪たち三人が幾つかの分隊の隊長となり、今や彼は警備隊の総隊長と呼ばれている。

街の平和を守るために、今日も仕事に余念はない…と言いたかったが、今日は非番だった。戻って以来の休日である。


【蒼馬】

「ふぅ~ぃ…それじゃあ、始めようかねぇ。」


そんな休日に、蒼馬は復帰間もない春蘭を城の中庭に呼びつけた。

春蘭は左目に、蝶の形をした眼帯をしている。


【春蘭】

「本当に…強くなれるのだな?」


【蒼馬】

「まぁ、今日すぐにとはいかないだろうねぇ。でも、新たな境地については、教えてあげるよぅ~。」


春蘭の目には、決意の炎が雄々しく燃えていた。

彼女は不安だった…片目を失った醜い自分など、華琳はもう愛してくれないのではないかと。事実、霞を捕えた自分に対し、華琳からの褒美は未だない…閨にも呼ばれず、労いの言葉すらない…前の華琳なら、そんな事は無かったのに。

だから、再び華琳に認めてもらう為にも、春蘭は強くなりたかった。


【蒼馬】

「さて、そうと決まれば、場所を移そうかねぇ。春蘭ちゃん、おじさんの肩に手を置いてくれるかい?」


【春蘭】

「む?こうか?」


春蘭が蒼馬の肩に手を乗せた。それを確認してから、蒼馬は意識を集中させ…


【春蘭】

「え?」


春蘭と共に、空間転移を実行した。

突然、足場を失い天地が逆転したような感覚に襲われた春蘭だったが、次の瞬間には重力を感じ、目の前に迫る地面を見て咄嗟に受け身をとった。


【春蘭】

「くっ!…何だ、今のは…」


すぐに立ち上がろうとした春蘭だが、膝がまだフラついて言うことを聞かなかった。


【蒼馬】

「今のが空間転移。おじさんたち、神術師にとっては…まぁ、普通の人が歩くのと同じくらい、朝飯前かなぁ~。勿論、ケガとかで歩けない人がいるように、得意じゃない子もいるけどね。」


【春蘭】

「神術師?」


【蒼馬】

「時間、空間を越える事が出来る人間…分かり易い定義はこれだけかなぁ?個人で得意分野とか違うしね~。」


蒼馬はそれだけしか説明しなかった。まぁ、春蘭にはこれ以上は理解も出来ないだろうから、これで十分だとも言える。


【蒼馬】

「さて、それじゃあ…春蘭ちゃん、剣を…」


【春蘭】

「おうっ!」


春蘭は待ってましたとばかりに返事をすると、七星餓狼を構えた。


【蒼馬】

「地面に刺して、その前に座ってくれるかい。」


【春蘭】

「は?」


きょとんとした顔の春蘭…そりゃそうだ。彼女にしてみれば、座ってする修業なんて聞いた事がない。


【蒼馬】

「これからしてもらうのは、自身の武器との対話…武器そのものの力を引き出すのが目的だよぅ。」


【春蘭】

「武器そのものの、力?」


【蒼馬】

「そう。だから、これからしばらく春蘭ちゃんにはその剣と向き合い、剣に語りかけてもらいたいんだぁ。」


【春蘭】

「ま、待て!そんな事で、本当に強く…」


【蒼馬】

「なれるよぅ。武器の力を引き出す…この技術を完全に体得する頃には、今より数段上の高みに到達しているはずだからねぇ~。じゃ、そういう事だから、頑張っておくれよ~。」


そう言うと、あろう事か蒼馬はその場から姿を消してしまった。


【春蘭】

「な?お、おいっ!蒼馬っ!」


呼び止めても、時すでに遅し…声の届く範囲に、もはや彼はいないだろう。


【春蘭】

「対話だと…物言わぬ剣と、何を語らえというのだ…」


そう毒づき、春蘭は乱暴に七星餓狼を地面に突き刺して、その正面にドカッと腰を下ろした。


【春蘭】

「…七星餓狼……よい天気だな。」


何を喋っていいものか分からず、そんな当たり障りのない話題を持ち出す春蘭…たぶん違うと思うが、蒼馬は何も説明していかなかったのでどうしようもない。というか、教える気があるのだろうか?

その後も、春蘭は誰もいない荒野で、一人物言わぬ剣との雑談…というか、ただの独り言を続けるのだった。




その頃、蒼馬は城の自室に戻って、机で何か仕事をしていた。竹簡に、つらつらと何事か書き記している。恐らくは仕事の報告書か何かであろう。

と、そこへ…


【秋蘭】

「蒼馬…何用だ?」


秋蘭が部屋に訪ねてきた。どうやら蒼馬が呼んだらしい。


【蒼馬】

「やぁ、秋蘭ちゃん。」


【秋蘭】

「姉者の修練に付き合うのではなかったのか?」


【蒼馬】

「うん、そっちはしばらく一人で大丈夫…というか、教えることは教えたよ~。」


あれで?


【蒼馬】

「そんな事より、秋蘭ちゃんと話しておきたい事があってね~…ここを出る前にさ。」


【秋蘭】

「…何を、言っている?」


蒼馬の発言に、秋蘭の表情が険しくなる。

仮にも、蒼馬は華琳の軍の将であり、警備隊の総隊長だ。何の任務もなく、勝手に城を…街を出るなど許されない。

だが、蒼馬は…


【蒼馬】

「おじさん、しばらくここを離れる事にしたんだよ。」


悪びれもせずに、平然とそう言った。


【秋蘭】

「何のつもりだ?華琳様はお前を…」


【蒼馬】

「知ってるよぅ~。だからこそ、だ。秋蘭ちゃんは、今の華琳を見てどう思う?」


【秋蘭】

「どう思うとは?」


【蒼馬】

「…少し質問の仕方が悪かったね。洛陽から帰ってきて…春蘭ちゃんが復帰して以来、華琳は春蘭ちゃんに対して、どうだい?」


【秋蘭】

「……」


秋蘭が、悲しそうに顔を伏せる…。


【蒼馬】

「霞ちゃんを捕まえて、仲間に引き入れた彼女に対して…十分な労いをしてくれたかい?」


【秋蘭】

「それは…」


言葉に詰まる秋蘭…。確かに以前の華琳なら、春蘭の功労に対して、華琳は彼女を閨に呼んで存分に愛を注いでくれた。しかし、今の華琳はまるでそんな素振りを見せない。常に気が立っているというか、近寄りがたいものすら感じる。


【蒼馬】

「おじさんの、暴力に等しい力に固執する余り、周りが見えなくなってるだろう?まぁ、実際に武力だけなら、おじさん一人で十分だよう。全員、殺すよぅ。でも、それじゃあ…ねぇ?」


【秋蘭】

「確かに、お前が来てから、華琳様は変わられてしまった…正直、お前さえ来なければ、姉者があれほど悲しまずに済んだだろうにと、最近はよく思う。だが、それ以上に…お前のおかげで我が軍は、今まで多大な損失を免れてきたのも事実。それを考えると、一将として、お前がいなくなるのは惜しい…」


【蒼馬】

「まぁ、別にこれでさよならってつもりじゃないよ。ちょっと、わがままの過ぎるお嬢ちゃんに、お灸を据えてあげるだけさ。彼女が反省してくれればそれでよし…ただ、そうでない時は、二度と戻る気はないけどね。だから、秋蘭ちゃんには華琳の事を頼んでおきたかったんだよ。」


【秋蘭】

「言われずとも、私は華琳様に忠誠を誓った身だ。主を正しき道へ導くのが、忠臣の務めであろう?」


【蒼馬】

「分かってるじゃないか。じゃあ、警備隊の事は、凪ちゃんたちに任せていくから、後は頼んだよぅ~。」


蒼馬はそう言って、竹簡を丸めて秋蘭に手渡した。中には、凪、真桜、沙和の三人に警備隊を任せるという旨を記してある。総隊長である彼の署名入りだ。

戻ってからずっと、彼女たちの教育に熱心に取り組んでいたのはこの為なのだろう。


【秋蘭】

「つくづく、食えぬヤツだな。お前は…。」


【蒼馬】

「伊達に六百年も生きてないさ…それじゃあ、縁があったら、また蒼天の下で会おう。」


それだけ言い残し、蒼馬は部屋を後にした。発つ鳥後を濁さず…部屋は綺麗に片付けられていた。まるで、最初から彼なんていなかったかのように…。




春蘭は、七星餓狼と向き合ったまま、雑談を続けていた。


【春蘭】

「それでだな、私はそいつに言ってやったわけだ…」


傍から見ていると、やはりそれはただの独り言だ…。事情を知らない者が見れば、彼女が哀れに思えてならないだろう。


【春蘭】

「……だああぁぁぁぁっ!何だコレはぁっ!?」


ついに、春蘭はキレた…立ち上がり、天を仰ぎ叫びを上げる。まぁ、つまり独り言に変わりはない。


【春蘭】

「こんな事で強くなどなれるかぁっ!武器との対話?物言わぬ剣に一人でひたすら語りかけて、一体何になると言うのだ!バカバカしいっ!」


春蘭はとうとう七星餓狼を引き抜いて、いつもの自分の鍛練方法に戻してしまった。彼女にしては、堪えた方なのだろうが…。


【春蘭】

「うおおおっ!」


勢いよく体を回転させながらの薙ぎ…しかし、それを振り切る事は出来なかった。


ガキィーン


【春蘭】

「なっ?」


【蒼馬】

「ふぅ~、やれやれだねぇ~。」


いきなり現れた蒼馬が、右腕で受け止めたからである。その皮膚に、傷は全くついていない。


【春蘭】

「蒼馬!貴様、私をおちょくっているのか!何だ、貴様の言う鍛練は?こんな事で強くなれるハズがないだろう!」


【蒼馬】

「せっかちさんだねぇ~。そんな簡単に、強くなれるわけないでしょう?」


【春蘭】

「うるさいっ!私は、もっと強くならねばならんのだっ!相手をしろ、蒼馬!私にはやはり、そっちの方が性に合ってる!」


春蘭は蒼馬から距離を取って七星餓狼を構えた。


【蒼馬】

「今の春蘭ちゃんじゃ、相手にならないんだけどねぇ~…」


【春蘭】

「なっ!何だとっ!」


七星餓狼で蒼馬に斬りかかる春蘭、だが容易く躱されてしまう…元より、こんな安い挑発に乗せられての攻撃が、蒼馬相手に当たるはずもないんだが…。


【蒼馬】

「自慢の剣が泣いてるよぅ?ただ振り回されるだけなのかって、ねぇ~。」


【春蘭】

「黙れっ!剣とはそもそも振るうものだ!」


次々に振るわれる春蘭の攻撃を、いつぞやの時と同じく紙一重で躱し続ける蒼馬。あと数センチ、数ミリで届きそうなのに…その一ミリさえ気が遠くなるほど遠く感じる。攻めているはずの春蘭の方が、いつしか息が上がっていた。


【春蘭】

「くそ…くそぉっ!」


【蒼馬】

「自分の体力に頼ってばかりだから…ほ~ら、もう底を尽いてきただろう?」


【春蘭】

「う、うるさいっ!」


自分より格上の相手と対峙した時、まず気をつけるべきは消耗だ。緊張から余計な力が入り、同じ動作や手数でも、普段より遥かに消耗が激しくなる。

彼女とて、理屈は別としても理解はしてるハズだ…だが、長年そんな強者との戦闘を経験してない為、すっかり失念していたのである。


【蒼馬】

「太刀筋が鈍ってるよぅ?力が足りなくなって、剣に振られているからだ。」


【春蘭】

「うるさいっ!私は…私はぁっ!」


ギィンッ


春蘭の手から、七星餓狼が弾き飛ばされた…いつの間にか、蒼馬はあの青い扇子を取り出していた。おそらくそれで、七星餓狼を叩き上げたのだろう。

宙を舞い、大地に突き刺さった七星餓狼…その刃は、哀しげに鈍い光を反射していた。


【蒼馬】

「…この世に存在する全てのものには、魂が宿っている。その魂の力を、おじさんたちは神通力と呼んでいるんだ。当然、あの剣にも宿っているんだよ~。」


【春蘭】

「バカバカしい…ただの剣にそんな力が…」


春蘭の言葉を流し、蒼馬は七星餓狼のもとへ歩み寄った。そして、それを引き抜き、無造作に振り上げる。すると…


ズガガガガガガッ


【春蘭】

「なっ!」


春蘭は慌てて飛びのいた…彼女が立っていた位置は、大地がきれいに裂かれていたのだ。もしそのまま立っていたら、想像するだけで恐ろしい…。


【蒼馬】

「これが、七星餓狼の本来の力…そこらの鉄剣とじゃ、比較のしようもないくらいの力が宿っている。これを引き出せれば、春蘭ちゃんにもおじさんを斬れるようになるだろうね~。」


【春蘭】

「……」


【蒼馬】

「まぁ、引き出せたらの話だけどねぇ。剣をただの武器、道具としか見ていないうちは、一生ムリだろうけど。」


蒼馬はそう言って、七星餓狼を春蘭に投げ渡した。抜き身の刀を投げるなんて危ない、と思うかもしれないが、さすがは春蘭…危なげなく剣の柄を掴み…


【春蘭】

「…なっ!」


何故か取り落としてしまった…今、確かにキャッチしたと思ったんだが?


【春蘭】

「そ、蒼馬!貴様、何をした!?」


【蒼馬】

「何って…何の事だい?」


【春蘭】

「とぼけるなっ!何だ、この重さは!」


そう怒鳴り、春蘭は七星餓狼を取ろうと手を伸ばしたが…七星餓狼はまるで地面にくっついたかのように、全く上がる気配がない…それどころか、彼女の腕力でもビクともしていない。


【春蘭】

「一体、これはどういう事だ?」


【蒼馬】

「ん~…どうやら、よっぽど嫌われちゃったみたいだね~。」


【春蘭】

「な、何だと?」


【蒼馬】

「もう、君に振り回されるのが嫌なんじゃないかな?」


蒼馬のその発言に、春蘭は愕然とするしかなかった。今まで、多くの闘いを共に切り抜けてきた得物、七星餓狼…それが、自分を拒絶しているという。


【春蘭】

「バカな…そんな、そんな事、あってたまるかぁっ!」


春蘭は七星餓狼を持ち上げようと、渾身の力を込めた。しかし、力を込めれば込めるほど、七星餓狼は重さを増していくかのようだ。


【蒼馬】

「力を込めちゃダメだよぉ。」


【春蘭】

「くっ!だったら、どうしろと言うのだ?」


【蒼馬】

「剣にも魂が、意思が宿ってるんだよぅ。力付くで言う事を聞かせようとすれば、反発するのは当然…力を込めるんじゃない、思いを込めるんだ。」


【春蘭】

「…思い?」


春蘭は力を抜いた…すると、七星餓狼も徐々に元の重さに戻っていく。


【蒼馬】

「慌てず、焦らず…穏やかな心で、感謝と思いやりを込めて、語りかけてごらん?」


【春蘭】

『…七星餓狼…私は、もっと強くなりたい。華琳様の為に、私の為に…そして七星餓狼、お前の為に…思えば、今まで私の豪撃を、折れる事なく支え続けてくれたんだったな。ありがとう、七星餓狼…不器用な私だが、もし許してくれるなら、お前の力を貸してくれ。』


春蘭は心で七星餓狼に語りかける…その思いを、両手を通して七星餓狼に伝えるようイメージする。

すると、七星餓狼がフッと軽くなった…と同時に、両手からとめどなく流れ込んでくる、熱い力の奔流を感じた春蘭。そう、これこそが、蒼馬の言っている七星餓狼の力である。


【春蘭】

「これが…」


【蒼馬】

「ふぅむ、やっぱりこの世界の子たちは、素質があるみたいだねぇ~。将来が楽しみだよぅ~。」


【春蘭】

「……蒼馬。」


春蘭は七星餓狼を担ぎ上げ、蒼馬に向き直った。


【春蘭】

「受け取れ!これが今の私の…私と七星餓狼の、全力だぁっ!」


振り下ろされた一撃は、大地を裂き大気を震わせ、凄まじい衝撃波を生んで蒼馬に襲い掛かる。


ズガガガガガガァンッ


巻き起こった土煙で、蒼馬の姿はまるで見えなくなってしまった。


【春蘭】

「…蒼馬、貴様のおかげで、私はさらに強くなれた。この恩は忘れんぞ…安らかに眠れ。」


【蒼馬】

「死んでないよぉ~?勝手に殺さないで欲しいねぇ。」




修業を終えた春蘭が、蒼馬の空間転移で自室に戻ってくると…城内は大騒ぎだった。


【春蘭】

「…何事だ?おい、そこの!」


春蘭は兵の一人を呼び止め、事情を聞こうとした。


【兵士A】

「夏侯惇将軍!蒼馬将軍はご一緒に戻られましたか?」


【春蘭】

「蒼馬がどうしたのだ?」


【兵士A】

「脱走です。警備隊の権限を楽進将軍たちに預け、城を出てしまわれたようなのです!」


【春蘭】

「な、なんだとっ!?」


春蘭は蒼馬の部屋へ走った。

そんなはずはない…修業の間、彼は何も言わなかったではないか…彼の事だから、今ごろ部屋でのんびり一息ついているに違いない……春蘭はそう自分に言い聞かせた。

だが、辿り着いた彼の部屋は、主を失い、寂しそうな空気が漂うばかりだった。

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