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眩しい。
目を開けると、天窓から光が差し込んでいた。
窓は高く、指先ほどの大きさにしか見えない。そのちょうど真ん中に光球が位置取って、一直線にこちらを照らしている。
眩しいはずだ。
少年は顔ごと光から目を背けた。
どうやら寝てしまっていたらしい。
夢を見ていた。
夢の中の少年は、光に満ちた小さな家に住んでいた。朝に目覚め、家を出る。見慣れた景色の中を歩き、親しい人に会い、何気ない言葉を交わす。なんの枷もなく。
そんなことは、きっと当たり前のことなのだろう。自分以外にとっては。
手元に目をやると、右手はしっかりと一冊の本を握っていた。意識を失うまで読んでいたであろうページに指が挟まっている。
古い本だった。
これすらなければ、とっくにここを逃げ出している。もっとも、できやしないのだけれど。少年は自嘲気味に独り笑った。
少年は筒の底にいた。
筒の内部に階段はなく、文字どおり筒抜けになっている。一つ開いた天窓から底に届く光はわずか。石畳の床は頬にひんやりと冷たい。まるで牢獄だ。
少年は横たえていた体を起こそうとした。体中がきしむ。石の床は堅すぎる。
何とか起き上がると、ちょうど差し込む光の角度が変わった。室内がぼんやりと照らし出される。うずたかい円筒の内壁は、膨大な量の書籍で覆われていた。
誰が、いつから蓄え始めたのか。前後左右上下一面に、みっしりと詰め込まれた圧倒的な知識。これを目の前にして、足が竦まない者などいるだろうか。何度見ても慣れを許さないこの壁だけが、少年にとっての救いかもしれなかった。
少年は石の床に手をつき、ただ書架を仰いだ。
ノック音で我に返るまで。




