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白の王弟と水の姫君  作者: ユイカ
プロローグ
1/35

 眩しい。

 目を開けると、天窓から光が差し込んでいた。

 窓は高く、指先ほどの大きさにしか見えない。そのちょうど真ん中に光球が位置取って、一直線にこちらを照らしている。

 眩しいはずだ。

 少年は顔ごと光から目を背けた。

 どうやら寝てしまっていたらしい。

 夢を見ていた。

 夢の中の少年は、光に満ちた小さな家に住んでいた。朝に目覚め、家を出る。見慣れた景色の中を歩き、親しい人に会い、何気ない言葉を交わす。なんの枷もなく。

 そんなことは、きっと当たり前のことなのだろう。自分以外にとっては。

 手元に目をやると、右手はしっかりと一冊の本を握っていた。意識を失うまで読んでいたであろうページに指が挟まっている。

 古い本だった。

 これすらなければ、とっくにここを逃げ出している。もっとも、できやしないのだけれど。少年は自嘲気味に独り笑った。

 少年は筒の底にいた。

 筒の内部に階段はなく、文字どおり筒抜けになっている。一つ開いた天窓から底に届く光はわずか。石畳の床は頬にひんやりと冷たい。まるで牢獄だ。

 少年は横たえていた体を起こそうとした。体中がきしむ。石の床は堅すぎる。

 何とか起き上がると、ちょうど差し込む光の角度が変わった。室内がぼんやりと照らし出される。うずたかい円筒の内壁は、膨大な量の書籍で覆われていた。

 誰が、いつから蓄え始めたのか。前後左右上下一面に、みっしりと詰め込まれた圧倒的な知識。これを目の前にして、足が竦まない者などいるだろうか。何度見ても慣れを許さないこの壁だけが、少年にとっての救いかもしれなかった。

 少年は石の床に手をつき、ただ書架を仰いだ。

 ノック音で我に返るまで。


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