発見
始めは興味などまるでなく、ただそこに新しい道具が届いたような感じだった。
俺こと、藤間始は幅広いジャンルを扱いプロデュースしていく音楽プロデューサー兼作曲家である。
音楽一家に生まれた俺は、何不自由することなく
息をするかのように自然に音楽の勉強をし、そしてその職にあたりまえのようについた。
今日は社長曰く新しい俺のパートナーが来るのと事だったが、
興味なんてものもなく、ただ使えるやつであればいいという気持ちだった。
彼女の声を聴くまでは
彼女、雨宮好の声が響く。
声の性質にまったく驚かなかったといえばうそになるが
そんなことよりも驚愕したのは彼女の表情だった。
音楽が好きだと、狂おしいほどに楽しいと。
そんな風に全身で語りかけてくるやつなどそうそうおらず、
一瞬で俺は確信した。
同類だ。と。
ああ、こいつならば新たな道具に申し分ない。
そう感じるや否や俺の行動は早かった。
一刻もはやく状態を確認して始めよう。
そんな気持ちの焦りからか気づけば雨宮を押し倒して腹筋の位置を圧迫した。
すぐさま苦しみながら腹に力を込めだす彼女。
(・・・・・・悪くない。)
雨宮の腹筋は素人にして鍛えられており
さっきの歌声からしても十分な声量を思わせる。
声質に関しては事情があるようだが、まぁ問題ないだろう。
それよりも歌い方だ。これは良くない。
だめだ、さっそく確認して試して調律していこう。
そうしよう。
合格だ。とそんな言葉を勝手につぶやき、
藤間はさっき書き上げたばかりの楽譜を差し出す。
昨日の夜空が割ときれいだったので、暇つぶしにと書いていた星の歌。
そんな楽譜を彼女に差出してみた。
いぶかしげにこちらを見ながらも素直に雨宮は楽譜を受け取る。そして、、、
「綺麗。
星みたいだ。」
その言葉がどれほど藤間を驚かせたか雨宮は知らないだろう。
いくらイメージしたとはいえ、まだ未完成の曲。主旋律のみで詞もない曲。
そんなものに藤間の考えにぴったりと共鳴するような想像力。
これはもう気に入るまでもなく確定だった。
今度は彼女を、雨宮好のプロデュースをしよう。
そう決意させるには十分すぎる言葉だったのである。
そして、まず始めにとバッキバキに雨宮の心を藤間が折っていくのはそのわずか数分後のこと。
お久しぶりでございます。
待って下さった方々、ありがとうございます。