共鳴
再び声をあげようとしたとき、突然腹に強い圧迫感が襲う。
「!?・・グッ!!??・・・・な、なにすr」
好は自分の腹部に目をやると、彼の手が強い力で、自分に体重をかけられていた。
対抗するために、腹に力をこめるが当然、力でかなうはずもない好の体は途端に悲鳴を上げる。
「・・・・・悪くない。素人にしては十分鍛えられているほうだ。」
苦しみながらもなんとか藤間の言ったことを理解しようとする。
耐え切れなくなったところでふいにその重りは好を解放した。
息をつきながら抗議をあげようとした好を後目に藤間はスタスタとさっきまでいた机に向かっていく。
そして、さっきまでがりがりと書いていた紙を手に取ると再び好のもとにやってきてそれを彼女にみせる。
「歌えるか?」
なんの謝罪もなしにまた唐突に突きつけられる言葉。好はあまりの展開についていくのが精一杯でどうしょうもない。
藤間の手に持つそれを眺めようと体を起こす。
(楽譜だ・・・)
それはまだ書きかけではあるが、ほぼ完成されかけた楽譜だった。
彼女はそのままそれに目と通し始める。
視線が音をなぞられていくにつれ好は自分の心臓がどくどくし始めるのを感じ始めていた。
「綺麗。」
思わず、ぽつりと感想が漏れる。
きらきら、キラキラ。
読むにつれ輝きだす音達。始め静かなその音色はだんだんと引き込むように響き出し、サビになれば突然弾けるように踊りだす・・・・・まるで、そうまるでこの曲は、
「星みたいだ・・・・・・・・・」
ひゅっ、
どこからか小さく息のもれるような音がした。
それに気づいた好はふと視線と上げる。
そこにはありえないものをみるように固まった藤間の姿がいた。
(今彼女は何と言った?・・・・・・・・・)
好をさっきまで混乱に追いやっていたは張本人は今度は自分が追いやられるはめになっていた。
藤間が渡したものは確かに楽譜であった。しかしそれはまだ書きかけの未完成品だった。
なぜなら、それにはまだ音はついていても歌詞などついていないのだから。
歌えるかと聞いたのは、藤間はあくまでこのくらいの音域は出して歌えるかという意味だった。
渡したすぐになにも言わず見つめる好に楽譜が読めないのかと思い、音を弾いてやろうかと声をかけようとしたそのとき、
好は言ったのだ。
藤間は好を凝視した。
きょとりとしながらもなにかまずいことを言ったのだろうかと冷や汗をかく好。
ありえない。藤間の頭はその一文字につきていた。
星みたい。それはまさに藤間にとって正解だったのだから。
それは彼が星を想像しながら書いていた曲であった。が、まだ歌詞もついていないメロディー以外のなんの音も飾られていない曲を音と聞いただけで藤間のイメージを言い当ててしまった彼女。
それは、まさに奇跡にちかいほど彼と彼女の感受性が似ている証拠だった。
それに気づいたのは今はまだ藤間だけであったが・・・・・・・・・・、
「あの、・・・歌えるとほ思いますが、歌詞ないですよね?これって、ハミングみたいにラララとかそんなかんじでいいんですかね?。」
沈黙で見つめ合ったままいるのに耐え切れなくなった好は、そろりと彼をうかがう。
「ああ、かまわない。」
これは予想外に愉しくなりそうだ、とひとり藤間は呟いた。
次はやっと、藤間が彼女を押し倒した理由、100%の藤間視点をお送りします。