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職業探して異世界へ

作者: 花鳥風月

「仕事、あります。」


このチラシから、オレの物語が始まった。



―――――――――――――――――――



オレは、最底辺の高校に通う、普通の高校生だった。この高校は、受験なしで入れるようなバカ校である。

いや、実際は面接があるのだが、受験者が合格者より少ないので、最悪、受けなくても受かる。

オレは、もうすぐここを卒業しようとしていた。しかし、就職なんて決まらない。

大学に行くほどの頭を持ち合わせていないので、就職することにしたのだか、最底辺の高卒なんてどこも採用してくれない。


「あーあ、自営業でも始めるかな。」


26回目の不採用通知をもらった帰り道、そんなことを呟いていると、目の前に、チラシが落ちてきた。

なんとなく拾って見てみる。

そこには、ただ、この一言が書いてあるだけだった。


「仕事、あります。」


なんとも胡散臭いチラシである。下には、電話番号らしきものが書いてあった。


「胡散臭いけど、騙されたと思って受けてみっか。」


そんな軽い気持ちで電話することを決めたオレは、家に帰っていった。




―――――――――――――――――――



家に帰ると、置き手紙がテーブルの上に置いてあった。


「就職、どうだった?夕飯は、冷蔵庫にチャーハンが入ってる。レンジでチンして。」


こんな生活が、もう何年も続いている。

2年前に父親が交通事故で死んでから、母親は夜遅くまで働いている。だからこそ早く就職を見つけたいのだが、世の中うまくいかないもんだ。


「就職どうだった、か。」


目から不意に涙が零れる。


「駄目、に、決まって、るじゃ、ない、か、よ」


言葉がうまく繋がらない。


「……駄目なのは……オレか……」


震える手で、オレは無意識に、チラシに書いてある電話番号をダイヤルしていた。


プルルルル、プルルルル、ガチャ


「はい、こちら、異世界就職センターでございます」


異世界。受付の相手は、確かにそう言った。

しかし、もうどうでもよかった。


「仕事が欲しいんです」

「はい、では、これから仕事の内容を説明します。」


要約するとこういうことだった。

まず、この仕事を受けたら、異世界へ赤ちゃんとして転生する。そこは、文明があまり進んでおらず、文明を進めるのが仕事だ。

生きている間には、そこで得た金を異世界就職センターへ納めることができる。

その世界で死ぬと、元の世界へ戻ってきて、納めた金の半分を貰える。

それだけだ。

こんなこと、信じられるわけ無い。しかし、オレは信じることができた。


「では、お願いします」

「了解しました。いってらっしゃいませ」


その言葉を最後に、オレの意識は途絶えた。




―――――――――――――――――――



0歳


異世界に赤ちゃんとして転生したオレは、クールという名前を授かった。かっこよくて、気に入った。

この家は、お金もちのようで、使用人がたくさんいる。金を納めるのには好都合だ。

どうやらオレは長男らしく、家を継ぐのはオレらしい。とても嬉しい。

言語は日本と同じで、苦労は無い。金の単位は違うっぽいが、円と価値が変わらないようなので、これからは円で統一する。


納めた金額――0円



3歳


オレは、情報収集につとめていた。

金を効率よく貯めるために、ギルドの依頼を受けることと、学者として学問の発達に貢献することがいいと知った。

ギルドで依頼を受けるとギルドから、学者として頑張ると国から金が貰えるようだ。

文明を進めるには、学問の方向で頑張っていくしか無いだろう。どんなにバカでも、3歳から勉強すれば、なかなかいい感じになるんではあるまいか。まあ、5歳になってからにしろと言われてしまったが。

学問では、数学と古代文字の研究が盛んだそうだ。

あと、魔法の存在が分かった。

古代文字を使うと、魔法が発動するようだ。魔法には憧れるので、古代文字は覚えたいと思う。


納めた金額――0円



5歳


今年から、数学と古代文字を父親から習い始めたが……簡単すぎね?

まず、数学だが、「お前は利口だから、高等魔術学校(日本の高校と同じ)の数学から始める」とか言われた。無理だと思ったんだが、何と、足し算からだったのだ。

ここでは、中等魔術学校(日本でいう中学)で「数」という概念を習い、高等魔術学校で足し算を習い、最高魔術学校(日本でいう大学)で引き算を習うそうだ。

さらに数学を研究する人は、掛け算や割り算を勉強していくようだ。また、その中でもエリートは、分数や少数を勉強するようだ。

√等は、存在は知られているようだが、誰も出来ないようだ。

オレは、いきなり足し算ができてしまい、すごく驚かれた。引き算ができたら、「神の子だ」とか何とか言われた。というか、あなたの子ですから。

掛け算や割り算ができ、分数や少数もできることを知ったら、気絶してしまった。まあ、誰だって5歳児が学者並みの問題をすらすら解いていたら驚くだろう。

また、古代文字は、英語と同じだった。オレは実は、英語だけは校内トップで、全国偏差も50はあったのだ。50でトップって、泣けてくるが。

というわけで、こちらもすらすらいけた。だって、「water 」って言ったら水が出てくるし、「fire」って言ったら火が出てくる。

この世界の人は、発音が全然なっていなくて、魔法を使える人は少ないらしい。でも、日本人の発音で魔法が発動するのだ。どれだけこの世界の人は発音なってないんだよ。

あと、こちらも父親が気絶してた。いちいちオーバーだなあ。

今年からは、小遣いを貰い始めた。1ヶ月500円だ。12×500で、計6000円納めた。

納めかたは簡単で、あの電話番号を呟くと、センターの人とれんらくがとれる。

納めた後、英和、和英辞書を持ってきてくれるよう頼んだら、1000円納めた金額が減るけどいいか?と言われた。まあ、それくらいは安いもんだと思って、持ってきてもらった。


納めた金額――5000円



7歳


何と、国から召集を受けた。

あれから辞書で魔法無双をして、神童と言われていたオレの名は、国のお偉いさんまで届いていたのだ。

こんな金を稼ぐチャンスは他に無いので、行ってみた。すると、予想通り国の学者として働かないかというものだった。

最初は1ヶ月50000円と提示されたが、おれの実力を見せたら、100000円となった。それでも足らないと思ったオレは、何とか200000円までいった。

オレは、国の学者のトップ3なのだそうだ。年に一回の試験の結果によって、下がったり上がったりするようだ。

いつかは、トップになってやる。

去年には6000円、今年は200000×12で2400000円納めた。


納めた金額――2411000円



10歳


やっとトップまでなった。あれから、上の人たちからの妨害を退け続けたが、一昨年は妨害で試験に出られなかった。

それで、凝らしめてやったら、次の年からはなにもしなくなった。何をやったかは秘密だ。

仕事は簡単すぎて、毎日が暇だ。遊ぼうにも、金は全て納めている。

食事とかは、全て国がだしてくれる。家族にも国から金が送られるので、仕送りの必要はない。

8歳の時は2400000円、9歳で1ヶ月の給料が300000円となり、一年で3600000円となる。

しかし、10歳からは税金を納めなければならないらしい。しかも、所得の2割だ。

よって、1ヶ月の給料が500000円となったのに、実質400000円となってしまった。それでも、一年で4800000円なのだが。


納めた金額――13211000円



12歳


何か陥れられた。いつのまにか、クビになっていた。オレは、使い込みをしたとか言われて、追い出された。

きっと、オレにトップをとられたやつらだろう。全く、人間がなってない。12歳を陥れるとか。

去年稼いだお金は全て納めていて、手元にあるのは、もしもの時のためにとっておいた10000円のみ。これじゃあ家にも帰れない。

当てもなくさまよっていると、名案が浮かんだ。

ギルドに登録すればいい。

ギルドとは、前に一回出てきたが、様々な依頼を受けられる施設である。

ランクというのがあり、最初はH-から始まって、H、H+、G-と上がっていく。

登録料金10000円とられたが、何とか依頼をこなしてその日生きる金をてにいれていく。

あと何年かはその生活が続きそうだ。


納めた金額――18011000円



20歳


今年から、何とか利益が出始めた。実力があってもなかなか上がれないこの制度、改めた方がいいと思う。

これからは、1年に100万ほどは儲かりそうだ。因みにランクはD-だ。

国に使えていた頃を思い出すと、泣けてくるが。

あと、何か弟子入り希望してくる奴ら(特に魔法)が出てきた。弟子入りしたけりゃ合計5000万持ってこいといったら、どっかに行ってしまったが。


納めた金額――19011000円



30歳


天災は、忘れた頃にやってくるとは、この事だな……。

ランクが最高のA+に上がり、年収も5000000円になった頃、いきなりあのときの弟子入り希望者達が、本当に50000000円持ってきた。律儀な奴らだ。

断る訳にもいかないので、弟子にしたが、いかんせん数か多い。ギルドの活動何てやってられない。

もう金はかなりたまったんだ。これで戻ってからも安泰だろう。

というわけで、弟子の指導に余命を(って、早っ)尽くすことにした。


納めた金額――90000000円



40歳


最高魔術学校の教師に任命された。めんどくさいったらありゃしない。

だけど、久々に金を稼ぐチャンスだ。教師になれば、年収5000000円だそうだ。

弟子たちもなかなか強くなってきたし、大丈夫だろう。というわけで、オレの教師生活が始まった。

初めての授業の感想は、「レベル低っ」だった。

仮にも「最高」だろう?この世界のレベルから考えて、少数とかは分からないにしても、引き算位完璧にしろよ!

あと、魔法も、小さい火も出せない奴がいるとか、なめてんの?

というわけで、スパルタ特訓開始ぃぃ――――!!


納めた金額――95000000円



50歳


スパルタ特訓開始から、10年。最初は鬼教師と恐れられたオレも、生徒の成績の伸びから、「最高の先生」とか言われるようになった。

いやー金も入るし尊敬もされるし、いいですねぇ。

オレは、フグを食べながら、喜びに浸っていた。

あ、なんとなくフグとか書いたけど、死亡フラグじゃ……無いよね?


納めた金額――145000000円



51歳


苦しい。死にそうだ。

周りには、弟子や教え子達が集まっている。

死因はフグの毒なんだろうな。やっぱりあれは死亡フラグか。最悪だ。

まあ、楽しい人生だった。まあ、まだあるんだけどね、地球での人生が。

さよなら皆。また縁があったら会おう。

そして、オレは人生の幕を閉じた。


納めた最終金額――150000000円






―――――――――――――――――――




「以上で、お仕事は終わりです」


気付いたら、受話器を持って突っ立っていた。


「ここは、地球か?」

「はい」


なんだか、懐かしい感じだ。


「報酬は、もうすぐ届けられると思います」

「え?どうやっ……」


オレの言葉が終わる前に、ドアが勢い良く開き、母が入ってくる。


「ねえ、あなたが前買った宝くじ……」


母は、息を切らしながら言う。


「二等の75000000円当たってた。」











こうして、母とオレは、楽しい人生を送っていった。

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