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課題  作者: 直美
3/6

和也って

「なんで和也はカズヤなの」

朝はとっくに過ぎ日は傾き出していた。西日が強くなる頃だ。覚めたての目にはこたえる。

突拍子もない浩司の疑問にあきれながら、微風がそよぐ窓にカーテンをひいた。

「俺にきくな」

扇風機の風を独占し、座卓に顎をのせ、客人は溶けはじめたカップアイスをかき混ぜていた。

「だって、本人が教えてくれなくてさ」

駄菓子屋あたりでもらったスプーンでドロドロした物体をすくっては、落とす。

つまらなさそうに遊ぶくらいなら、自力で課題を解こうとしてほしいものだ。 課題を手伝え、と遅い昼寝を邪魔された朱里は背伸びをし、浩司と向き合うかたちでフローリングに腰を据えた。

「だろうな」

「前にも言ったはずだ。だって、ケチ」

和也の口調をまねて、不味そうにアイスでコーティングしたスプーンを舐める。

溶ける前に食べればそんな顔をすることもないのに、わざわざ溶けるのを待っていた浩司の気が知れない。

「俺だって、何回も教えたぞ」

ケチと言われては、和也がかわいそうだった。

女なのにどうして和也なのか、という質問を何十回と浩司は訪ねていた。五、六回目ぐらいまでは和也も答えていたようだが、さすがに飽きたのだろう。本人が教えなくなると、浩司は朱里を質問ぜめの的に選んだ。

「じゃあ、教えてよ」

「親が双子の弟と名前を逆にして役所に届けたからだろう」

朱里は片手でシャーペンをもてあそびながら、座卓に広げた問題集の上に肘をつく。

「弟っていたっけ」

「いるんだろ」

「名前なんて言うの」

「ミズキじゃなかったか」

「いくつ」

「俺等と同じ」

「朱里って物知り」

双子なんだから当たり前だろ。もし、生年月日がまるっきり違ったら単なる姉弟で、命名間違いなんて起こりはしなかっただろう。特異なケースを説明したばかりな上、その程度で知識人あつかいされてもうれしくない。

「スゴーイ」

白々しいほどビックリ眼で浩司は拍手をする。朱里が半眼を向ければ、より一層いい叩きをみせた。

「暇なんだろ」

「うん、ヒマ」

はっきりうなずかれ、朱里はひじ下を指差す。

「だったら、課題しろ」

「やだね。がんばって、朱里」

お前のだろう。

おき楽口調で言われてしまえばいいかえす気にもなれず、ため息をもらした。

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