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四季折々の喫茶店  作者: 暦海


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願いの叶う喫茶店?

「――いらっしゃいませ、武史たけふみさん、御代みよさん。今日もありがとうございます!」

「おはよう、琴水ことみちゃん。琴水ちゃんの笑顔に、今日も元気をもらえるよ」

「おはよう、琴水ちゃん。こちらこそ、いつもありがとね」



 開店から、数分が経過して。

 扉の傍にて、ご年配の男女のお客さまへ今日も元気にご挨拶を。度々当店に足を運んでくださる、とても仲睦まじく優しいご夫婦へと。……本当に、いつもありがとうございます。



 その後も、疎らにご来店なさるお客さまをお迎えする私達。このお店の場所や性質上、席が埋まるなどということは基本的にないのですが、でもだからこそいいとも思っています。もちろん、賑やかなのも素敵だと思いますが……やはり、心穏やかにゆったりと時を過ごしていただけることが当喫茶の大きな魅力の一つだと思っていますので。



 ――カランコロン。



「――いらっしゃいませ、お客さま! ご来店ありがとうございます!」



 柔らかな鈴の音と共に、ゆっくりと扉が開く。そこには、丸眼鏡をかけた柔らかな雰囲気の若い男性。私の記憶違いであれば申し訳ありませんが、きっと初来店のお客さまでしょう。そして――



「……あの、すみません。こちらで、何でもお願いを叶えていただけるとお聞きしたのですが……」



 そう、縋るような瞳で告げる丸眼鏡の男性。そんな彼に、さて何と答えたものかと思案する私。……そう、いつからか当喫茶に関しそのような――何でもお願いを叶えてくれるという、何ともたいそうな噂が広まっているようでして。

 そして、確かに当店はお客さまのお悩みなどに寄り添い解決のお手伝いなどもしてきました。……ですが、流石に――



「……いや〜、何でも叶えてあげられる、なんて神さまじみたことはとてもできそうにないんだけど、どこでそんなことを聞いたのかな?」

「……その、申し訳ありませんお客さま」


 すると、軽く後頭部あたまを掻きつつ告げる斎月いつきさん。言いづらいことを伝えてくれたことに感謝しつつ、お客さまへと頭を下げ謝罪を述べる私。……まあ、恐らくは何らかの情報が形を変えて伝わってしまったのでしょう。さながら伝言ゲームのように。



「……あの、お客さま。良ければ、話していただけませんか? 何でも叶えられる、というわけではないのですが……それでも、何かしらのお手伝いであればできることもあると思うのです。それに、お話しするだけでも少しはお心が楽になるかとも思いますし」


 ともあれ、顔を上げそう尋ねてみる。斎月さんも言っていたように、何でも叶えられるなんてさながら神さまのようなことはできかねます。……まあ、そもそも神さまにもできるかどうか分かりませんが。


 ですが、解決に向け何かしらのお手伝いであればできることもあると思いますし、可能な限り実際にしてもきました。それに、例え解決まではいかずとも、お話しするだけでも少しはお心が楽になるかとも思いますし。



「……ありがとうございます、店員さん。はい、それでは……」


 すると、優しく微笑み感謝の意を告げてくださるお客さま。そして、再びゆっくりと口を開き言葉を紡ぐ。



「……どうしても、忘れたい人がいるんです」




 

 

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