ご不満?
「――お待たせしました、美唯さん。カフェオレとだし巻きサンドでございます」
「わぁ、めっちゃ美味しそう!」
それから、ほどなくして。
窓際のテーブル席にて、満面の笑顔でご注文の品をご提供する私。すると、キラキラと目を輝かせご感想を口になさる美唯さん。そんな彼女のご様子に、こちらの方が嬉しくなってしまいます。
「……うわぁ、めっちゃ美味しい。カフェオレはちょうどいい甘さですっごく飲みやすいし、だし巻きサンドはめっちゃ濃厚だけどしつこくなくてすっごく食べやすいし」
「……この上もないお褒めのお言葉、本当にありがとうございます美唯さん。斎月もたいそう喜びます」
その後、ほどなく先ほど以上の笑顔でそう口になさる美唯さん。そんな彼女のご反応に、こちらも先ほど以上に嬉しくなってしまいます。なにせ、二つとも斎月さんが丹精込めて作ったもの――いつどなたから何度褒めていただけても、その度に心が震えるほど嬉しくなるもので――
「……でも、ちょっと意地悪じゃない? 斎月さん。奏さんと二人で来なきゃ、惚れ薬入りのドリンクを出してくれないなんてさ」
そんな感慨の最中、ありありと不服を湛えそう口になさる美唯さん。彼女のご要望通り、いわゆる惚れ薬的な効果を持つ植物もあるにはあるのですが……ですが、そのエキスの入った飲み物を口にするのは当然のこと想い人ご本人でなければならない。なので、その想い人たる男性、奏さんに当店に来ていただく必要があります。
尤も、ここまでであればさほど難しくないかもしれません。当喫茶がとても良かったと強くオススメしてくだされば、奏さんもそれなら一度、と思ってくださるかもしれませんし。
ですが、そのエキス入りの飲み物を提供するに当たり斎月さんの出した条件が――必ず、奏さんとお二人で当店に来ること。つまりは、一緒にお茶をしないかと美唯さんが彼をお誘いしなくてはならないわけで。
「……全く、それができないから困ってるのにこれじゃ本末転倒じゃん。ああもう、どうやって誘えばいいっていうのよ!」
すると、最後は少し大きな声で不満を口になさる美唯さん。尤も、大きな声と言っても他の方にご迷惑をおかけするほどではありませんが。そして、そんな彼女のご様子に――
「……ふふっ」
「……琴水ちゃん?」
「……いえ、すみません。ですが、少し微笑ましくなってしまって」
「あっ、ひっどい琴水ちゃん! こっちは真剣に悩んでるっていうのに〜!」
すると、私にも不服なご様子でそう口になさる美唯さん。ふふっ、申し訳ありません。ですが……このように誰かのことを一心に想うそのお姿が何とも微笑ましいなあと。時に苦しくもなりますが……それでも、それ無しではもはや生きられない温かな幸せに自身の全てが包まれる――きっと、それが誰かを好きになるということですから。なので……どうか、美唯さんの切なる想いが叶いますように。




