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ZEXアドベント  作者: ケン
第2章

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第三十六話

 咆哮を上げたグロウルートは触手をしならせながら勢いよく俺たちめがけて叩きつけてくる。

 その場から飛びのいた俺たちは上空へ避難するが触手たちが俺たちを追いかけてくる。


「このっ!」


 近接用ブレードを手中に収め、迫ってくる触手を切り裂くが俺の目の前で切り裂かれた個所から再生が始まり、一瞬にして触手が生まれ変わった。

 すぐさまスラスターを吹かしてその場から離脱するが触手はどこまでも追いかけてくる。


「こいつ明らかに前よりも再生が速いぞ!」

『斬ったらダメよ! その場で再生するわ!』

「でもこの触手をどうにかしないと近づけない!」

『動きを止めれたら』

「……だったら!」


 俺に向かってくる触手の突きを回避すると同時に近接用ブレードを突き刺すとどす黒い体液が降りかかるがそんなこと気にも留めず、背部スラスターを全開に吹かす。

 触手に突き刺しまま地面に向かって急降下し、そのままブレードを地面に突き刺すことでグロウルートの触手を地面に拘束した。


「これなら!」

『ナイスアイディア!』


 直後、一本の触手がブレードが突き刺さっている触手を切断しようと振り上げられるがグレイシアの斬撃によって触手が切断される。

 同時に上空に赤い円陣が展開されるや否や大量の剣が射出されていき、グロウルートの全身に次々と突き刺さっていく。

 そして触手にも次々と剣が突き刺さっていき、地面に拘束していく。


「よしっ! これなら」

『秋冬! 超過起動(オーバー・ドライブ)よ! こいつを完全に倒すにはオーバーエナジーの一撃で核を吹き飛ばさないと倒しきれない!』

「任せろ!」


 超過起動を発動しようとしたその時―――


「っっ!? な、なんだ!?」


 突如としてグロウルートが野太い咆哮をあげたかと思うと次々に地面が爆ぜ、小さな穴が開いていきそこから小型のゼータたちが無数に湧き出してくる。

 湧き出してきた小型ゼータたちはこちらに向かってくるわけではなく地面に拘束されている触手の根元へと群がっていく。


「な、何してるんだあいつら」

『あいつら……根元を嚙み切る気だ』

『触手を噛み切ることで再生するつもりだわ』

「……グレイシア。今こそ約束された勝利の剣(エクスカリバー)を創ろう」

『無茶言わないでよ! まだあれは一度も作れたことがないのよ?』

「でもこの状況を打開するにはそれしかない……正直、俺の超過兵装でも正確に核は撃ち抜けない」


 グロウルートの再生による復活を阻止できる力があったとしても核を打ち抜かなければ前回のように再生されるだけだが俺に核を打ち抜けるほどの技術はない。

 現状、最もグロウルートを倒すことが出来る可能性があるのはグレイシアの約束された勝利の剣(エクスカリバー)だけ。


「俺が小型ゼータとグロウルートの動きを止めるから……その間に頼む」

『私はまだ』

「大丈夫だって」


 彼女の肩に手を置くと驚いたような表情を浮かべ、俺の顔を見てくる。


「お前ならきっとできる……この前だって中型住処一緒に破壊しただろ? 今回だって俺とお前の力が合わせれば絶対に勝てる」

『……秋冬』

「じゃ、頼んだぞ」

『……分かったわ』


 俺は超過起動を発動させると同時にグレイシアは地上へと降り立ち、その手に炎を集めながら約束された勝利の剣の創造へと入る。

 ウイングパーツを最大限に展開し、上空を飛行しながら同時にサブマシンガンを二丁、展開すると両腕の装甲にケーブルが接続されてオーバーエナジーがサブマシンガンへと流れていく。


「行くぞぉぉぉ!」


 引き金を引いた瞬間、凄まじい反動が両腕を伝わってバランスを崩しかけるが自動姿勢制御(バランス・リアクター)が働き、なんとか体勢を維持する。

 なるべく触手に当てないようにしながら小型ゼータへと弾丸をあてていく。

 直後、邪魔するなと言わんばかりに俺めがけて地上にゼータが数体、飛び掛かってくるがその場で一回転しながらウイングパーツを振りかざす。

 オーバーエナジーが流れているウイングパーツによる斬撃がゼータたちを一瞬にして真っ二つに切り裂き、灰と化していく。


「っと」


 二丁のサブマシンガンが限界を迎え、塵と化したと同時に地上へと降り立ち、超過起動を保ったまま近接用ブレードを展開し、スラスターを吹かして突っ込んでいく。

 一体のゼータが鋭い爪を振りかざしながら飛び掛かってくるのを確認した俺は全てのスラスターを左方向へと吹かし、体制を維持したまま右側へ位置を切り替える。


「はぁぁっ!」


 突然、居場所がずれたことによりゼータの一撃は空を切っていき、すれ違いざまに俺の斬撃がゼータを真っ二つに切り裂いて塵と化していく。

 超過起動を発動している間は脳内にあったZEXの動きがダイレクトに体に伝わり、その映像の通りに動くことが出来る。

 そんな爽快感を抱きながら次々と飛び掛かってくるゼータを切り捨てていく。

 直後、周辺一帯にいたゼータたちが俺を殺すために大挙して押し寄せ、巨大な津波のように襲い掛かってくる。

 同時に俺の脳裏にふと目の前の状況を打開する行動が思い浮かんだ。

 出来るかどうかは分からない―――ただ


「やるしかない!」


 その場で立ち止まると同時にブレードを両手で強く持ち、横なぎに大きく振るった瞬間、オーバーエナジーが増幅する。

 オーバーエナジーがより多く流れたことにより、刀身の長さが一瞬にして伸長されていくがその分、ブレード自体の重さが増えていく。


「ぐぅぉぉぉぉぉっっ!」


 叫びをあげることで自分に鞭を打ちながら鞭のように伸びていくブレードを全力で横なぎに振るった瞬間、超広範囲に斬撃が伸びていき、一瞬にして押し寄せてきていたゼータたちを切り裂いた。

 直後、ブレードの刀身から塵となって崩れ落ちていき、やがてはブレードそのものが姿を消す。


「ハァッ……ハァッ……流石にこの数はやばいな」


 目の前には膨大な数の小型ゼータがうじゃうじゃ蠢いており、相変わらずグロウルートの触手の根元にかじりついている。

 数は増えていないにしてもスタートの数が多すぎる。


「気合い入れてっっ!?」


 その瞬間、視界の端にZEXからの通知が表示されると同時に振り返ると巨大な口を開いた小型ゼータが俺を丸のみにせんと飛び掛かっていた。

 よく見ると地面には穴が開いており、気付かれないように地下からの襲撃だった。

 一瞬の判断で超過兵装を展開しようとするがあまりに急なことで選択肢が絞り込めず、兵装の展開がうまくいかずに光の粒子が手の中に滞留するだけ。

 ZEXを纏っているとはいえ、丸のみをされてしまえば大ダメージは免れない。

 迫りくる脅威を前にして思わず目を閉じる―――直後、肉が裂ける音が耳に入るとともに近くに肉塊が落ちる音が響く。


『戦場で目を閉じるとはいい度胸してるな、少年』

「お、お兄さん」

『見ろ、あれ』


 お兄さんに言われて後ろを振り返るとグロウルートの触手が何本か解放され、再生を終えているが全ての小型ゼータがこちらを見ていた。

 正確に言えば俺たちの向こう側を見ていたと言った方が正しい。

 俺たちの後ろではグレイシアが約束された勝利の剣を創造している。


「こいつら……グレイシアを狙うつもりか」

『どうやらこいつらも約束された勝利の剣はやばいと感じているらしい……ここからはさっき以上に奴らが押し寄せてくるぞ』

「……やってやりますよ。ここを退けばグレイシアがやられる」

『なぜ、そこまでして君は彼女を学園に留めたいんだ』

「なんでって……」


 お兄さんに言われ、ふと考えてみるがすぐに答えは浮かんだ。


「せっかく仲良くなった友達がいなくなるのは寂しいでしょ」

『……』

「それにあいつがいなくなったら俺の学園生活はお先真っ暗ですから」


 あいつがいてくれるから俺はZEX学園で頑張れるし、どれだけZ族からの差別や偏見をぶつけられようがそれを跳ね除けて前に進める。


『だったら護ってみせろ。君が必要な彼女を』

「もちろん」


 お兄さんはサバイバルナイフを、俺は近接用ブレードを握り締めて目の前に立ちはだかる無数の小型ゼータとグロウルートを視界に収める。

 そして一体のゼータが踏み出した瞬間、俺たちは同時にその場から駆け出した。


「『おぉぉぉっ!』」


 俺たちに遅れてゼータの大軍勢が押し寄せてくる。

 装甲を黒紫色に輝かせながら俺は大軍勢に突っ込んでいった。


――――――☆――――――

『こちら混合C隊! 周辺住民の避難完了しました!』

「よし。ならば」

「隊長!」


 オペレーターの叫びと同時に映像が切り替わり、小型ゼータの大軍勢と真正面からぶつかり合っている秋冬とセグルドの姿が映し出される。

 多勢に無勢としか言えない戦況を目の当たりにしたオペレーターたちは言葉を失うがそれと同時に映し出されている秋冬の姿に目が行く。


「あれって隊長の弟さん?」

「いや、弟さんは専用機体なんて持っていないはず」

「でもZEXを展開してあの場にいるってことは専用機体持ちしかありえないぞ」

「それにあんなZEX見たことがない」


 思い思いの言葉を出していくオペレーターたちを前にして春夏は気づかれないように奥歯を噛みしめ、この空気を振り払う意味も込めてデスクに拳を強く叩きつける。


「無駄口を叩いている暇があれば各隊員に伝達しろ! A隊は球体防壁内部に侵入し、小型ゼータを殲滅! B隊と正規C隊で球体防壁の維持!」


 激昂した春夏の叫びに職務を思い出した隊員たちはキーボードを叩きながら現場の隊員たちへと隊長の命令を伝達していく。

 それを確認した春夏はスマホを取り出し、憎しみも込めて彼女へと電話を繋げる。


『もしも~し。仕事中にかけてくるなんて珍しいねぇ』

「お前が余計なことをしてくれたおかげでな……お前だな? システムの処理を書き換えたのは」

『彼には動いてもらわないと研究が進まないからさ』

「お前の研究は進まないでいいだろ」

『ハハッ、困るのは春夏たちだけどね……でもこれで秋冬君も有名人だ』

「私を誰だと思っている? 隊に緘口令を敷けばそれで」

「隊長、至急報告したいことが」


 通話中の春夏に隊員の一人が近づき、一台のタブレットを見せてくる。

 そこに映し出されている映像を見た瞬間、春夏の表情が一変し、隊員からタブレットを奪い取る様にして受け取り、映像を睨みつける。


「どうやら映像が中継されているようです。映像からして場所は」

「球体防壁内だな……」

「総司令より連絡が入っていますが」

「……後にしてくれ」


 春夏がそう言うと隊員は一礼した後、その場を後にする。

 再びスマホに耳をあてると向こうから笑い声が響く。


『これで彼ももっと実戦経験が積めるね』

「私が許すと思うか?」

『秋冬君を整備科なんかには移させないよ? 私の研究対象(モルモット)なんだから』

「お前はまだ理解していないのか……私を本気で怒らせたらどうなるのか」


 春夏は一方的に通話を切り、再び隊長として目の前の事案に向き合う。

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