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ZEXアドベント  作者: ケン
第1章

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第二十二話

「お疲れ様でした~、神原先生」

「今戻りました。ではあとは頼みます」

「はい~、承りました~」


 姉ちゃんは恐らく俺の手続きや隊の仕事があるんだろう。俺のことを赤阪先生に任せると足早に校舎へと消えていった。


「大変でしたね~」

「ははっ……またお世話になります」

「いえいえ……ただこれからが大変ですよ~」

「へ?」

「なんせ学園の中で学生が中型住処を単独で破壊したって噂が出回っていますから~」

「……え? 俺?」


 ジーッと俺のことを見られながら言われたので確認の意味を込めて尋ねると赤阪先生は小さく笑みを浮かべる。


「本来、住処は殲滅隊が対処する事案です~。それを学生だけで破壊したとなれば噂にもなりますよ~」


 姉ちゃんは緘口令を敷いていると言ってはいたもののどこかからか情報が漏れたのか、それとも誰かが漏らしたのか。


「まぁ、大半はグレイシアさんが単独で住処を破壊したっていう風に解釈していますけど~」


 俺としては大半がそう言う風に解釈してくれている方が平穏に過ごせる。

 もしこれで俺も住処破壊に協力したっていることになってしまえばZ族でも成し遂げれていない実績を見下していた平民が達成し、酷くプライドが傷つけられるだろう。

 そうなればこれまで上に面倒ごとに巻き込まれる未来しか見えない。


「じゃ、お部屋に向かいましょう~」

「お願いします」


 一週間ぶりに歩くコンテナハウスまでの道のりもどこか懐かしく感じる。こうやって俺にちょっかいをかけようとするも先生を見つけてどこかへと退散する姿も懐かしい。


「あ、そうそう。貴方がいなかった一週間のことを伝えておきますね~」

「一週間でそんなに変わりますか?」

「もちろんですよ~。まず、我妻さん・葛西さん・城嶋さんの三人が退学。通信制の高校へ転学しました~」


 我妻と言えば俺に絡んできた女の名前であり、その後に続いた名前から察するにあの三人組は全員辞めたという事か。

 校則違反をかましたか、それともついて行けずに辞めたのか。


「色々やらかしたんですか?」

「学園の厳しい訓練に耐えられなかったみたいですね~」


 義務教育内である程度、ZEXを学んでいるZ族の連中が音をあげるほどにZEX学園の授業が厳しいということなのか、それとも三人が単純に弱すぎたのか。

 明日は我が身であることを意識しなければ俺も危ないだろう。


「あとは学級代表がグレイシアさんに決まりましたね~」


 それはクラス全員一致の見解だろう。専用機体持ちというだけではなくその考え方を含めて十五歳には感じない。だからみんな、彼女に頼りたいんだろう。


「ちなみに副代表はまだ決まっていませんが今のところ神原君が有力候補ですね~」

「……お、俺が副代表候補?」

「はい~」


 まず、平民の俺がZ族の連中を差し置いて副代表になるなどという愚行をあいつらが許すはずもないし、俺を候補にも挙げないだろう。

 となれば候補に挙げた奴は一人しかいない。


「代表は満場一致だったんですけどね~。副代表がなかなか決まらなくて~」

「は、はぁ……でもなんで俺が?」

「それはもちろんグレイシアさんですよ~」

「でしょうね」


 副代表なんてものは出来れば御免被りたいものだ。

 余計にZ族の神経を逆なでしたくないし、来年には整備科に転科するつもりなのに変な役職がついてしまうと移るに移れなくなってしまう。


「一応、副代表はこれからの実践演習の成績で決めることになりましたけどね~」

「……」

「あ、わざと手を抜いて成績を下げるのはダメですからね~」


 考えていたことをズバリ言い当てられてしまい、俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。


「それとこれも」


 そう言い、先生が俺に渡してきたのは学園生徒用のタブレット端末とWorld Link、そして自室コンテナハウスのルームキーを渡される。

 この前の戦いでこの小型イヤホンの重要性がようやくわかった。ただやはり、付けっぱなしというのは生理的に受け付けない。


「部屋の調整はまだ済んでいないのでもう少しの間、コンテナハウスで過ごしてくださいね~」

「了解です」

「あと、明日から補習を行いますので終礼後は教室に残っておいてくださいね~」

「ちなみに……どれくらいの補習ですか?」

「順調にいけば二週間で終わりますね~」


 順調、というのはあくまで授業内容を全て理解すれば、の話なので恐らくだが一カ月はかかりそうな気がする。


「では私はここで。お疲れ様でした~」


 コンテナハウスの前で先生と分かれ、部屋に入ろうとするが腹の虫が鳴ってしまう。

 時計をスマホで確認するが時刻は二十時を回っており、寮の門限も過ぎているころなので俺はそのまま寮の食堂へと向かう。


「この時間だし、誰もいないだろう」


 食堂の自動ドアを進むと一瞬、夜のあいさつが聞こえてきたが従業員が俺を確認するや否や声がしぼんでいってしまった。

 挙句の果てには注文受付の場所からスーッと奥へ消えていってしまった。


「……さて、どうしたものか」


 その時、後ろで自動ドアが開いた音が聞こえ、無意識で振り返ると赤い髪を結ぶことなく自然な状態で降ろしているグレイシアとぱっちり目が合った。

 あの戦い以来、久しぶりに会うのでどう話を切り出せばいいか迷っていると俺を軽く押しのけてウェイターがグレイシアに話しかける。


「いらっしゃいませ。いかがなさいますか?」


 しかし、俺を押しのけてメニュー表を見せに来たことが不満だったのかグレイシアはメニュー表を奪うように受け取り、それを俺に見せてくる。

 それはまるでお前のメニューを先に決めろと言わんばかりだ。


「Take his order first」


 グレイシアの英語が聞き取れないでいる俺とは対照的にウェイターは聞き取れたのかその顔いっぱいに驚きを露わにして固まってしまう。

 とりあえずメニューを決めてウェイターの方を見るがその表情は不満を最大限まで濃くした色で埋め尽くされていた。


「じゃ、じゃあこれで」

「……はい」


 その後、グレイシアもウェイターに何かをぼそっと伝え、そのまま座席へとまっすぐ向かっていったので俺もその後を追いかけていく。


「お、俺もここ、良いか?」

「Here」


 そう尋ねるとグレイシアはそう言ってくれた。

 あの時と比べると少しは関係改善、出来たのか。

 頼んだメニューが来るまでの間、俺たちの間には会話が生まれることはなく正直に言えば気まずい雰囲気が立ち込めていた。


「お待たせいたしました」


 目の前に出されたのはグレイシアが頼んだであろう野菜中心のメニュー。

 俺が頼んだのは肉がメインだから時間がかかるんだろうと思っているとなぜかグレイシアは去っていくウェイターの背中を軽くにらみつける。


「ど、どうしたんだよ」

「How come the dish I ordered later came before yours?」


 相変わらず彼女の英語は流暢すぎてThe日本人である俺にはさっぱり分からない。

 そんなことを思っていると俺が頼んだメニューも目の前に置かれたのでとりあえず食事を始める。


「そんな野菜だけで足りるのか?」

「I eat less at night」

「……」


 慌てて俺が聞き取れた単語をスマホの翻訳機にぶち込んでみるがうまい具合に英訳がされず、意味不明な文章が表示されて頭を抱えていると向こうからため息が聞こえる。

 顔を上げると耳のイヤホンをノックしていた。


「……あ、World Linkだ」


 赤坂先生から貰った自分のWorld Linkを装着すると―――


『ほんとあんたってバカね』

「意外と口悪い」

『は? 何よ』

「なんでもございません」


 あの戦いから関係性が変わったと言ってもベラベラと喋るような関係になったわけではないので会話もそこまで長くは続かず、お互いに黙りながら食事を進める。

 ふと彼女の顔を見て見るが特にあの日のことを引きずっているような様子は見られない。


『……戻る選択をしたのね』

「まあな……あれからは大丈夫か?」

『……考え方は変わったわ。知識として知っているのと現実を理解しているのとでは雲泥の差があるってことをね』

「俺もだ」


 ゼータの脅威を知識として知っていることと現実を理解していることは違う。

 言い表すならば避難訓練しかしていないか、実際に避難行動をしたことがあるかの違い。

 俺は殺戮対象としての危機を、彼女は苗床となる危機を知った。


『同時にこの力に頼り切っている自分がいたことも知れた……あと平民も弱っちいやつばかりじゃないってこともね』

「俺は別に強くないぞ?」

『そうかしら。ゼータに兵装を一切積んでいないZEXで挑む男を弱い、とは思わないけど』


 兵装も一切搭載していないゼータなどほとんど丸腰と変わらない。甲冑を着たはいいけど武器を持っていない奴と同じだ。

 ただ重くて空を飛べるだけの鎧。それでも十分凄いんだろうけど。


「あれは……無我夢中だったというか」

『どんな状況であれ貴方はあの女の子を救ったのよ。あんたの無我夢中の行動は確かに一人の命を救ったのよ。ベストな選択ではないにしても正しい選択だったわ』


 同時に姉ちゃんにとっては心配の種を増やす行動だったことは間違いないので今後は姉ちゃんのことも考えて行動するようにしないといけない。

 ここでの俺の行動一つ一つが姉ちゃんの評判に繋がると言っても過言じゃない―――成績もそうだし、ZEXの技術だってそうだ。

 俺がどんなに比べるなと言っても姉弟という関係性は崩れない。


『あんたは……本当に平民なの?』

「おう。平民だぞ。Z因子を持っていないからな」


 一応、学園に来る前に医学検査も実施されてZ因子の有無をしっかりと調査したんだけど結果はやっぱりZ因子は存在していないというものだった。

 一瞬、過去の検査技術が陳腐すぎて検査ミスだった、みたいな淡い期待をしていたけれどやはり現実はそう簡単には変わらない。


『でもお姉さんはZ因子を持っているんでしょ? なんであんたは持ってないのよ』

「そう言われても……家族間で因子を持っていない子供が出てくるのはあることだし」


 結果、それを理由にZ因子を持たない子供を赤ちゃんポストなどに平気で置き去りにする親が出てくることがあると言われている。

 そもそも家族間でZ因子が受け継がれないのはほとんど発生しない超レアケースなのであまり世間には知られていない問題だけど。


『……ま、あんたが気にしてないならそれでいいけど……ちゃんと頑張ってよね』

「? 何を?」

『何をって……副代表になるためによ。私がせっかく候補に推薦してあげたんだから』

「あ~、それか……でもなんで俺を?」

『確かにあんたはZEXの知識や技術はZ族の一般常識以下しかない……でも戦闘技術だけで言えばZ族の一般常識以上なの。一緒に戦った私はそう感じたわ』

「……あれは無我夢中だったというか」

『その無我夢中の技術に正しい知識と技術をつぎ込めばあんたは確実にほかの連中を追い抜ける。それこそ平民の癖にってバカにされなくなるわ』


 それを聞いてハッとした。

 平民の俺があいつらからの火の粉を振り払う一番手っ取り早い方法がZEXの知識・技術面においてあいつらを圧倒すること。

 Z族の連中の優位性はZ因子を持ち、ZEXを操作できるという部分にある。

 それが唯一にして最大の優位性だからそれを叩き潰し、俺が上に立つことができるほど成長すればあいつらは何も言えないし、何もできない。

 それこそさっき考えていた姉ちゃんの評判を守るということにもつながる。

 来年、整備科に転科するという目標があるとはいえ、この一年間を平穏に、かつ安全に過ごすためにはそうするしか方法はない。


「そうだな……そうするよ」

『当面の間、あんたにちょっかいかけてくるやつらは私が払ってあげる』

「良いのか? お前にも影響が出てくるんじゃ」

『私を誰だと思ってるわけ? 一年生で唯一の専用……あんたがいるから唯一じゃなくなったけど』

「あ、それなんだけど公にはしないんだ」

『なんでまた』

「ん~、一応姉ちゃんからの言いつけなんだ」

『ふ~ん。ま、いいけど……とにかくほかの連中は私には何もしてこないし』

「そうだな。俺だけじゃ無理だったときはお願いするよ」

『しっかり頑張りなさいよ……ん』


 そう言いながらグレイシアはグラスをこちらに向けてきたので俺も自分のグラスを持ち、彼女の暮らしに軽くあてると静かな食堂内にグラスがぶつかる音が響く。


「これからよろしく」

『こちらこそ』


 整備科への転科までの一年間、俺はがんばってみせる。

 それは俺の目標実現のためでもあるけれどグレイシアや姉ちゃん、赤坂先生のように俺を支えてくれる人のメンツのためにも俺はやらないといけない。

 俺は自分自身の目標を再確認し、明日からの景気づけとして水を一気に飲み干した。

ポケモンとモンハンがしたい

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