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ZEXアドベント  作者: ケン
第1章

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第十二話

この後、お昼の12時にもう一話上げます。

「っっ!?」


 突然の光景に少女―――ウィルミナ・グレイシアは動きを止め、目の前で起きていることを注視する。

 模擬ゼータは突然、展開された黒紫色に輝く翼によって大きく吹き飛ばされ、アリーナの壁に激突している。

 狙われていた少年―――神原秋冬が纏うZEXからは黒紫色の輝きが放たれている。

 汎用機体の装甲には黒紫に輝くラインが走っており、その翼は装甲同様の色に輝いており、明らかに普通ではない。


(何をしたの……何をすればこんな反応が)


 彼女は今まで見た記憶が無い未知の光景に目を奪われていた。


――――――☆――――――


「こ、これは」


 纏っている装甲にはいくつもの黒みがかった紫色の輝きを放つラインが走っており、先程とは比べ物にならないくらいに体が軽く、頭がクリアだ。

 よく見るとウイングパーツは全て黒紫色に発光しており、物理的な要素が全く見えず、まるでエネルギー翼のようだ。


「―――!」


 模擬ゼータが雄叫びをあげながらウイングパーツを左右に広げ、上空へと飛び上がる。


「行くぞ!」


 姿勢を低くし、飛び上がった瞬間、ウイングパーツとスラスターが俺を上空へと誘い、凄まじい速度で相手との距離を詰めていく。

 近接用ブレードを展開すると刀身が装甲と同じ色に輝きだす。


「うおぉぉぉぉっ!」


 上空で俺の横薙ぎの一撃と模擬ゼータの鋭い爪による一撃がぶつかり合うが一瞬で俺の一撃が競り勝ち、相手の体勢を大きく崩す。

 その隙を狙って近接用ブレードを勢いよく振り下ろす―――しかし、相手はウイングパーツとスラスターを用いて無理やり体勢を立て直し、俺から距離を取ろうとする。


「させるか!」


 スラスターを吹かし、一気に距離を詰め、袈裟払いを繰り出すと相手は爪による逆袈裟払いを繰り出してくる。


「うおぁぁっ!」


 お互いの一撃がぶつかり合う―――しかし、一瞬にして模擬ゼータの鋭い爪が粉々に砕け散り、大きな隙が生まれる。


「うぉぉぉっっ!」


 戻し際の逆袈裟払いによる一撃が相手の手首から先を切断し、模擬ゼータは断末魔をあげ、後方へと下がる。

 その隙にサブマシンガン《ヴォルケイノ・ブリッツ》を呼び出し、手中に収める。

 そして迷うことなく銃口を向け、引き金を引く。


「うぉぉ!?」


 しかし、凄まじい反動が襲い掛かり、銃身が安定せずに様々な方向に弾丸が放たれる。それらは全て発光しており、相手に着弾して次々に大きな爆発を散らす。


「っと! これ、さっきと同じ兵装だよな……お、おぉっ!?」


 地上に降り立つと同時に銃身に無数のヒビが入り、まるで風化していくかのように崩れ落ちていき、粒子ではなく灰となって消えてしまった。


『入学前にゼータを倒しただけのことはあるわね』


 グレイシアさんは誉めてはくれるが正直、何故ここまで戦えているのかが分からず、絶賛困惑中だ。


「今、俺は何をしているんだ?」

『さあ? 私も詳しくは知らない……でもやることは一つ。あいつを止める』


 指さす方向を向くと全身から煙を吹いている模擬ゼータの姿があり、俺たちに向かって威嚇なのか吠え続けている。


『人間に対する威嚇……まさにゼータそのものね』

「よし……やってやる! 行くぞ!」

『あんたが命令するな!』


 二手に分かれ、模擬ゼータ目がけて突っ込んでいく。

 近接用ブレードを振り下ろすが相手はひらりと身を翻して回避する―――直後に腕を盾代わりにして頭部目がけて放たれていた彼女の蹴りを防ぐ。


「がら空きだぞ!」


 隙だらけな腹部へ拳を叩きつけると腕の盾が崩れる―――直後、彼女の脚部スラスターが勢い良く吹き、勢いのまま模擬ゼータを蹴り抜く。

 蹴り飛ばされた模擬ゼータは翼を羽ばたかせ、無理やり体勢を立て直すと同時に上空へと一気に駆け上がる―――でもその先には彼女がいた。


『堕ちなさい』


 その場で勢いよく回転し、その勢いで繰り出された回し蹴りが相手の顔面を正確にとらえ、体勢を崩した模擬ゼータがフィールドに向かって落ちていく。

 近接用ブレードを握りしめ、黒紫色に発光する翼と各部スラスターを勢いよく吹かして落ちてくる模擬ゼータとすれ違いざまに脇腹を一閃。金属音が木霊し、地面に落ちていく。


「どうだ!」


 地面に落ち、脇腹から火花を散らしながらも模擬ゼータは立ち上がる。


「―――!」


 機械音の叫びをあげたかと思うと姿勢を低くし、俺達に向かって口を大きく開ける。

 直後、やつの口元に黒紫色の粒子が集まっていく。

 やがてそれは一つの球となり、模擬ゼータはそれを噛み潰す―――直後、口の隙間から黒紫色の輝きが漏れ出す。


「やばっ」

『ヤバくないわよ』

「……あ、あのなんで俺の足を持ってぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 突然、彼女が俺の手首を掴んだかと思えばそのまま勢いよくグルングルンと縄を振り回すかのように回し始める。景色がグルグルと回転し、気持ち悪い重力が俺を襲う。


「目、目が回るぅぅ~!」

『我慢しなさい! 飛んでけー!』

「うぉぉぉぉぉっ!?」


 勢い良く投げ飛ばされた瞬間、模擬ゼータから黒紫色の輝きを放つ荷電粒子砲に似たエネルギーの塊が放たれる。

 回転しながらも近接用ブレードを握りしめると刀身が再び輝きだす。


「いけぇぇぇぇぇぇぇ!」


 近接用ブレードとエネルギーの塊がぶつかり合った瞬間、周囲を塗り潰すほどの閃光が発生する。ブレードと塊は拮抗し、刀身にひびが入り始める。


「うぉぉぉぉっ!」


 咆哮の直後、再び装甲が輝きを発し始めたかと思えば相手が放ったエネルギーの塊が徐々にブレードの刀身と融合していく。

 入りつつあったひびは姿を消し、刀身が全てエネルギーに覆われて一本の大剣へと変化を遂げた。

 装甲の輝きは最高潮を迎え、それに伴うようにウイングパーツがその大きさを増していき、二対の大翼へと変貌を遂げる。

 体の奥底から力が溢れんばかりに込み上げてくる。


「これで終わらせる!」


 大翼を羽ばたかせると同時にスラスターを全開に吹かし、模擬ゼータ目がけて勢いよく突撃する。俺を撃ち落とさんといくつもの黒紫の光弾が放たれる。

 一発は身を捩って回避し、もう一発は大剣で切り裂き、残りは大翼で叩き落す―――直後、相手の口に輝きが集中しているのが見えた。


(この速度じゃ間に合わない!)


 その時、俺の意思を拾ったかのように目の前のウィンドウに増速駆動の文字列が表示され、考えるよりも早く視線でそれを押す。

 背部・脚部スラスターからゴォォッという轟音が鳴り響くとともに大翼がシャープなスタイルへと変貌を遂げ、周りの景色がグニャリと歪む。

 感覚で増速駆動の世界に入ったのだと理解した。


(この速度なら間に合う!)


 凄まじい加速で模擬ゼータとの距離を一気に詰める。


「えぁぁっ!」


 相手は間に合わないと判断したのかエネルギーのチャージを止め、腕を交差する。

 勢いのままに大剣を大きく振り下ろす―――相手の腕と刃が触れた瞬間、バチバチッ! と凄まじい火花が目の前で散り、拮抗する。


「うぉぉぉっ! せいやぁぁぁぁっ!」


 俺の咆哮とともに大剣の一撃がゆっくりと模擬ゼータの腕を切り裂いていき、まっすぐ模擬ゼータへと向かっていく。


「でぃぁぁぁっ!」


 相手の両腕を切り裂いた刃が頭部に到達した瞬間、まるで紙を切り裂くかのようにすっと刃が突き刺さり、そのまま何の引っかかりも無く突き進んでいく。

 振り下ろしの一撃が一瞬で相手を真っ二つに切り裂いた。

 切り裂かれた相手の断面が見え、いくつもの火花と閃光が散る。


『離脱!』

「っっ!」


 彼女の叫びを聞き、勢い良くその場から飛び退く。

 刹那、相手の頭部が上空へ向いたかと思えば最後の断末魔らしき咆哮が放たれる―――直後、用は済んだとばかりに腕が力なく落ち、大爆発を起こして模擬ゼータが木っ端みじんに吹き飛んだ。

 フィールドに細かな破片が降り注ぐ。模擬ゼータの姿形は跡形もなく吹き飛んでおり、そこに残ったのは無機質な金属片だけ。

 爆散を確認した俺達はゆっくりとフィールドへと降り立つ。彼女は同時に装甲を光の粒子に変換し、剣の形へと戻す。


「お、終わった」

「Alright, but when will this finally wrap up?」

「へ? な、なんて?」


 突然の英語に戸惑いながら聞き返すと彼女は大きくため息を吐き、耳を軽く叩くジェスチャーを俺に見せてくる。

 慌てて頭部ギアを粒子化させて耳に触れるとさっきまで装着していたWorld Linkが耳に無かった。


「あ、あれ!? さっきの戦闘で外れたのか?」


 慌てて周辺を探し回っているとZEXから通知が来て、少し先の地面を強調するかのようにズームしていく。


「あ、あった!」


 その場に行くと確かにWorld Linkが転がっており、砂を落としてから耳に装着し、彼女の方を向くと少し不機嫌な表情の彼女がいた。


『それはいいんだけどいつまでその状態なわけ?』

「え? あ、あぁそうだよな……これどうやって戻すんだ?」


 目の前に何かしらのメッセージが表示されることも無く戸惑っているとどこからともなくバチッ! と火花が散る音が聞こえた。

 それはほんの一瞬だけかと思いきや至る所から断続的に聞こえ始める。


「な、な、なんだ!?」

『早く装着を解除しなさいよ! あんた翼から火、出てるわよ!』

「火? ……ぬおぉぉぉぉっ!? 燃えてる!?」


 翼を見てみると輝きは失われており、代わりに火の手が翼のあちこちから上がっており、黒煙を上げ始める。


「熱! 熱! どうやって外すんだこれ!?」

『服を脱ぐイメージです! 神原君!』


 一瞬、World Linkを通して赤阪先生の声が聞こえ、落ち着いて服を脱ぐイメージを浮かべるとカシュッ! という空気が抜ける音が聞こえ、体と装甲の間に隙間が出来る。

 両腕を抜き、両足も抜き終わると同時に直立状態の装甲から飛び降り、着地する。

 同時に装甲の全体から黒煙が上がり始め、ボロボロと風化していくかのように表面が崩れ落ちていき、膝から力が抜けてフィールドに倒れ落ちた。


「……」


 少しして黒煙の噴出も止まるが目の前のZEXはもう修繕の余地もないということは無知の俺でも勘付ける。

それほどにZEXは壊れ果ててしまった。

 辺りには思わず顔を歪めるほどの悪臭と気まずい空気が籠る。


「何が起きて」

『さあ? 私もこんな壊れ方知らない』

「これはまた派手に壊したな」


 後ろから声が聞こえ、振り返るといつの間にかスーツに着替えている姉ちゃんとZEXを纏った男女二人の姿があった。

 二人が纏っているZEXの装甲部分には殲滅隊の隊章が刻印されている。


「事後処理を始めろ」


 姉ちゃんはついてきていた二人に指示を飛ばすと早速、事後処理が始まる。


「なあ、教えてくれよ。いったい何が」

「教師にためぐちとはいい度胸をしているじゃないか」


 いつの間にか距離を詰めたお姉さまに胸倉をつかまれ、思いっきり凄まれる。

 これでも怪我人の分類だと思うんだがお姉さまにとっては関係ないらしい。


「すみません……いったい何が起きていたんですか?」

「それを今調べているところだ……それにしても派手にやってくれたもんだな」


 姉ちゃんの視線はボロボロになったZEXと木っ端みじんに粉砕されている模擬ゼータ君の残骸に向けられている。

 振り分け試験が始まる前に模擬ゼータ君を作るにもお金と時間がかかると言っていたけどいったいどれほどの時間がかかるのだろうか。

 そんなことを考えているとちょっと強めに頭に手を置かれる。


「……よくやった」


 ボソッと周りに聞こえないように呟いた声は俺の耳には確かに聞こえた。


「グレイシア。お前もよくやってくれた」

『……先生の指示を遂行しただけです』

「俺からも礼を言わせてくれ。お前が来てくれなかったら俺、死んでた」

『……グレイシア』

「へ?」

『お前って呼ばないでくれる? 私はウィルミナ・グレイシアっていう名前があるの』

「あ、ごめん……ありがとう! ウィルミナ」

『名前で呼ばないでくれる? まだ他人なんだけど』

「ご、ごめん……グレイシア……さん?」

『……』


 グレイシアさんは何も言わずに俺の横を通り過ぎて、格納庫のゲートへと戻っていった。


「じゃ、俺も戻るか」

「ちょっと待った」

「へ?」


 俺もゲートへと向かおうと振り返ると同時に両腕を拘束される。

 その拘束の仕方は傍から見たらまるで罪を犯した犯人を拘束する光景だ。

 突然の出来事に困惑し、事態の整理がつかなくなったので助けを求めようと姉ちゃんのほうに視線を向けるが致し方なかろう、という表情。


「あ、あのこれは」

「貴方を学園法に則り、ZEX損壊罪で拘束します」


 ZEX学園に在籍している生徒は多種多様な人種。

 国が違えば文化も違うし、ルールである法律も違うのでそれぞれがそれぞれのルール、考え方で行動すれば確実問題や衝突が起きる。

 そんな人種のサラダボウルたるZEX学園を統治するために既存の法律などとは全く別の枠組みの法律が制定されている。

 それが学園法―――学園にて起こった犯罪行為は全てこの学園法に則って処罰される。


「こ、拘束!? な、なんで!?」

「あなたは使用を禁止されている超過起動を発動させ、ZEXを修繕不可能なレベルにまで破壊した。それだけではなく、模擬ゼータも破壊しました。学園においてZEXの破壊は重罪です」

「言い逃れなんかするなよ、平民が」

「い、いや……俺は無我夢中で……というかそもそもこうなった原因は模擬ゼータが変な挙動を起こしたからであって」

「とにかく話は聞き取り室で聞きますので」


 二人に腕を掴まれ、逃げないように拘束された状態で俺は聞き取り室へ連行されたのであった。

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