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第二章 わすれていくけしき、そしてなまえ 後編
その日はおもいでにひたっていた。
まるでむかしのひのようだった。
君子が笑って、「○○(息子の名前)たち、もうすぐくるって」
そう言ったとき――
あれ? その声のなかの、なまえが、すぐには出てこなかった。
……むすこ。
そう、息子だった。
でも、かおが、すこしかすんでいた。
こどものころのえがおと、大人になったすがたが混じって、
どっちが本当なのか、よくわからなかった。
「どうしたの?」
きみこが聞いた。
ぼくは、わらってごまかした。
「なんでもないよ」
そのよる、2人でお茶をのんで、
きみこのてをにぎった。
そのぬくもりだけは、しっかりのこっていた。
そして、ねむりについた。
朝。
目を覚ますと、ひざがいたかった。
からだが、少し重くかんじた
あたまのなかも、なんだかおもたい。
でも、隣にきみこがいる。
それだけで、すこしほっとした。




