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76 リゼッタの実力

 僕はリゼッタ先生と連れ立って、中庭にやって来た。


「リゼッタ先生に稽古をつけてもらうのは半年ぶりですね」


 僕は遠い目をして語った。


 ……最後の稽古は僕が『アレス王子』として処刑される、わずか数日前のことだった。


 と、先生が僕をじっと見つめていることに気づく。


「……先生?」


「なあ……お前たち、姉弟なんだよな?」


 リゼッタ先生は僕を軽くにらみながら、たずねた。


「さっき話した時のフラメル殿下の反応は、まるで恋愛における嫉妬のように感じたんだが」

「姉弟といっても血は繋がっていません」


 僕は真剣な表情で答えた。


「それに精神的にも姉弟じゃないですし、それは向こうも承知しています」

「精神的にも姉弟じゃない……か。つまり、彼女はお前が『アレス』だと知っているんだな?」

「はい。先生以外でこのことを知っているのはフラメルだけです」


 先生の問いに僕はうなずいた。


「なるほど……姉弟であると同時に他人同士でもあるのか」


 言って、先生は納得したようにうなずいた。


「それで恋仲に?」

「……はい」


 僕はさらに真剣な顔でうなずく。


「よく分かりましたね、先生」

「見てれば、丸わかりだと思うぞ」


 呆れたような表情で、先生が笑う。


「周囲にも気づいている者はいるだろうな」

「えっ、そうでしょうか……?」


 二人でいるとき以外は、ちゃんと『姉上』って呼んでるし、恋人みたいな接し方はしてないはずだけど――。


「……雰囲気だよ。明らかに恋人同士のそれだ。まったく……」


 先生が苦笑した。


「そういうところは変わらないな。鋭いようで、どこか抜けている」

「む……そうですか」


 僕はちょっとだけ拗ねた。


「……しかし、なかなか大変な関係だな。公的には姉弟だし、そもそもお前たちは皇子と皇女だからな」

「簡単に結ばれるような関係ではないことは分かっていますよ。それでも――僕は彼女を愛しています」


 僕はまっすぐに告げた。


 たとえどれだけの障壁があったとしても、僕のフラメルに対する想いが揺らぐことはない。


「僕は彼女と共に生きていきます」

「愛する相手がいることはいいことだ。それは、きっとお前の大きな力になるだろう」


 リゼッタ先生が優しく微笑んだ。


「お前が【闇】に呑まれそうになったとき、彼女の存在がお前を支えてくれる。ぎりぎりのところで踏みとどまる力をくれるだろうさ」

「フラメルが……」

「私も、そんな存在になりたいものだがな」

「えっ」

「……師匠としてだぞ? 勘違いするなよ」


 先生が僕をにらんだ。


 あ、びっくりした……変な意味で捉えてしまったけど、先生と僕がそんな間柄になるわけがない。


「すみません、先生」


 苦笑交じりに謝る僕。


「僕と先生がそんな関係になるなんて、あり得えませんよね。いくらなんでも絶対に」

「そこまではっきり言われると、女としての魅力を否定されている気になるんだが」


 先生が憮然とした。


「えっ……!?い、いえ、師匠はとても美人ですし、優しいですし、魅力的な女性ですよ、きっと……たぶん」

「たぶん?」


 先生がニヤリと笑った。


「ぜ、絶対」


 やけに迫力のある先生に、僕はたじたじになった。


「……いかんな。少し嫉妬しているのかもしれん、私は」

「師匠……?」

「――なんでもない。そろそろ始めようか」


 先生は木剣を構える。


 僕も真剣な表情になり、同じく木剣を構えた。


「お願いします」




 僕は緊張感をもってリゼッタ先生と向かい合っていた。


 正直、戦場で敵兵と向かい合う時よりも、はるかに気持ちが張り詰めていた。


 隙がまったくない――。


 大陸最強の【黒騎士】である僕が、先生に打ちかかることができない。


「どうした、英雄殿の剣技はその程度か?」


 先生が淡々とした口調で誘ってきた。


「噂ほどでもなさそうだ」

「――いきます」


 僕はその挑発にあえて乗り、自分から打ちかかる。


 先生が得意としているのは後の先――いわゆる『カウンター』の剣技だ。


『アレス』だったころは、このカウンターによって僕から打ちかかってもことごとく打ちのめされた。


「今の僕なら――どうだ!」」


 僕は自分自身の実力を確認する意味合いも兼ね、先生に打ちかかる。


「さすがに鋭いな――」


 先生はカウンターの剣技を発動した。


 並の剣士なら反応すらできずに剣を叩き落とされるであろう一撃だ。


 が、僕には【鑑定の魔眼】で、その剣の軌道がすべて見えている。


 寸前で防ぎ、第二撃。


 が、それにもカウンターを合わせる先生。


 凌ぐ僕。


 三撃、四撃、五撃――。


 僕らは互角の戦いを繰り広げた。


「強い――」


 僕は舌を巻く。


【鑑定の魔眼】で先読みしても、先生の剣が速すぎて完全に対応できない。


 どうする?

 どうすれば先生の剣を凌げるんだ?


 必死で頭を働かせる。


「どうした? そんな剣ではお前が望む未来など、つかめはしないぞ」


 先生が鋭い視線を僕に浴びせた。


「っ……!」


 そうだ、僕はフラメルと歩む未来をつかむんだ。


 そのために、さらなる力が欲しい。


 先生に剣の稽古をお願いしたのも、それが一番の理由だ。


「――あれを使えば」


 ふと脳裏をよぎったのは、『魔王』の力だった。


 ぞわり…。


 木剣に黒いオーラをまとう。


 この力を使いこなせれば、先生にだって勝てるはずだ――。

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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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