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70 ダリアーロ攻略戦、決着

「ちいっ、敵の主力が出てきたか……いったん退くぞ!」


 ドルファがわざとらしく叫ぶ。


 僕たち帝国軍は主力部隊と適当にやり合った後、一斉に逃走を開始した。


「ははは、敵は逃げていくぞ!」

「追え! 追撃だ!」

「一人残らず討ち取れ!」


 王国兵たちは、まんまと僕たちの罠にはまった。


 彼らからすれば、いったん僕たちに追い込まれた後、主力部隊の戦いぶりによって押し返したこの状況――興奮で気持ちが高ぶっているはずだ。


 勝ちに乗じて、我先にと追ってくる。


 僕たちは彼らと応戦しながら、逃げる。


 その逃走先には、周囲の草原に隠してあった陣があった。


 僕たちはあらかじめ決められていた地点まで後退すると、一斉に足を止めた。


「な、なんだ……!?]


 おおおおおおっ!


 鬨の声とともに、陣に隠れていたこちらの部隊が現れる。


「増援――罠か! ええい、陣形を整えろ!」


 王国軍の指揮官が叫ぶ。


 その指示通り、彼らは陣形を整えようと立ち止まった。


 ――その瞬間を、僕たちは待っていた。


「今だ、放て!」


 僕の号令と共に、左右の茂みから無数の魔法が放たれる。


 帝国が誇る魔法師団の攻撃魔法が、雨のように降り注いだ。


 炎の矢が空を焼き、雷の槍が地を穿つ。


「なっ……!?」

「伏兵もいたのか!?」

「まずい、左右から――」


 動きが止まっていた王国軍は、格好の的だった。


 無数の魔法が彼らを正確に狙い撃ちする。


「ぎゃあああああ……っ!」

「あ、熱い! 体が……!」

「助けて……助けてくれぇっ!」


 戦場は一瞬にして阿鼻叫喚の地獄へと変わった。


 王国軍の兵士たちが次々と焼き尽くされ、あるいは感電して黒焦げになっていく。


 ――お前たちも、帝国の民に同じことをやったはずだ。


 僕はその光景を冷ややかに見ていた。


 クレストに転生してから何度も目にした王国軍の略奪の光景が脳裏によみがえる。


「だ、駄目だ……勝てるわけがない……!」

「に、逃げろぉぉぉっ!」


 王国軍は敗走を始めた。


 こうなれば、ただの烏合の衆だ。


「追撃せよ! 敵を一人残らず掃討するのだ!」


 ドルファ将軍の力強い声が響く。


 ――数時間後、僕たちはこのダリアーロ攻略戦で大勝利を収めたのだった。




 ダリアーロ攻略から数日が経過した。


 ここは数か月前に王国軍に占領されたときの戦闘の被害があちこちに残っている。


 市内には破壊されたままの家屋が多く残されているし、インフラ関係もあちこちが壊されている。


 復旧にはまだ時間がかかりそうだ。


 僕は総司令官として、フラメルやドルファたちと共に、戦後処理の指揮を執っていた。


「クレスト殿下、東地区の瓦礫撤去ですが、作業に当たっている兵士たちの増員で対応してよろしいですか?」

「西地区の負傷者の救護所は人手が足りません。フラメル様配下の聖乙女部隊に応援をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「商業ギルドで今後の対応のために会合を行いたいため、クレスト殿下にもご出席をお願いしたいと――」


 とにかく、次から次へと要請が来る。


 正直、戦っている方がよほど楽だと思わされるほどだった。


 そんな慌ただしい日々の中――。


 町中を視察していた僕の目に、ある人物の姿が留まった。


「えっ……!?」


 呆然と立ち尽くす。


 無造作にポニーテールにまとめた赤い髪が、凛々しさと可憐さを兼ね備えた美貌によく似合っている。


 年のころは二十代前半だろうか、引き締まった体つきに軽装鎧をまとい、腰に長剣を差している。


「あなたは――」


 少し前に帝都で一度、偶然出会ったことがある。


 僕がメルディア王国の『アレス王子』だったころ、剣を習った師匠であり――実の兄や姉よりも、よほど近しく家族のように感じていた女性だ。


「リゼッタ……先生?」


 僕は思わずつぶやいていた。


 彼女がハッとしたように振り返る。


 翡翠の色をした瞳が、僕を捉えた。


「クレスト――」


 言った後、リゼッタ先生は僕をにらむように、頭から足元まで何度も視線を往復させる。


「いや、アレス……か?」

「っ……!」


 心臓がドクンと跳ねた。


 見抜かれた。


 僕の正体を。


 一体、なぜ――!?

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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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