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69 我が手に、魔王の力を

 僕は目を閉じ、自分の内側へと意識を深く沈めていく。


 心臓の鼓動がやけに大きく聞こえた。


 感情が高ぶり、全身が火照っているのが分かった。


【鑑定の魔眼】を発動――自身の能力を解析する。


 普段は意識の奥底に封じ込めている、人造の魔王としての力。


 その圧倒的な戦闘能力を、今の僕の精神力で制御できるぎりぎりのラインまで引きずり出すために。


 どくんっ、と体の内側で何かが脈打つ。


「ぐっ……ううっ……」


 体から禍々しい力があふれ出していくのが分かる。


 ボウッ!


 黒いオーラが体中から吹き上がった。


 同じだ。


 以前、フラメルを救うために無我夢中で戦った、あのときと。


 暴走か、制御か。


 その紙一重の境界線上で、僕はかろうじて自我を保つ。


「クレストくん……!」


 背後からフラメルの心配そうな声が聞こえた。


「……大丈夫です、姉上」


 僕は振り返って微笑む。


「あなたがいるから――あなたが側で支えてくれるから、僕はこの力に飲まれずにいられる」


 そう、愛おしいフラメルの元に戻ってくるという誓いがあるから。


 僕はこの力を自分のものとして操ってみせる――。


「……行きます」


 告げて、僕は駆けだした。


 周囲の景色が歪んで見えるほどの超加速。


 今の僕の動きは、常人には目で捉えることすらできないだろう。


 僕は、音速を軽く超えてダリアーロの城門へと向かっていく。

 そこへ、


「クレストくん、受け取って! 【エンハンスフィジカル】!」


 後方からフラメルの声が響き、僕の足元から光の柱が立ち上った。


 以前、ロッケイルの戦いでも使っていた、身体能力を極限まで高める最上級の補助魔法だ。


 人造の魔王と称される圧倒的な戦闘能力に、さらに魔族の力を持つフラメルの補助魔法の力が合わさる。


 ――ありがとう、フラメル。


 僕は内心で礼を言うと、さらに加速した。


 その速度は音速どころか、瞬間的には亜光速に達しているだろう。


 文字通りの黒い閃光と化した僕は、一瞬にしてダリアーロの正門前にたどり着いた。


 その勢いのまま、正門前に陣取る数百の守備兵の真ん中に飛び込んでいく。


 駆け抜けながら、僕の剣が縦横に閃く。


 数十の首が宙を舞った。


「な、なんだ、今の……うああっ!?」

「黒い……何かが走って……ぐあっ!?」

「馬鹿な。目で追えな――ぎゃあっ!?」


 彼らは混乱の中で次々と僕に斬られ、倒れていく。

 と――、


「ええい、矢を射かけよ! 攻撃魔法を放て!」


 城門の上から指揮官らしき者の声がした。


「いくらそいつが強くても、剣でこの門を破ることはできん! ここから一方的に撃ち殺せばいい!」

「そうだそうだ! 俺たちはこの城壁と城門に守られてるんだ!」

「何が【黒騎士】だ、怖くもなんともねぇ!」

「ははは、ここにいる限り、俺たちは安全ってわけだ――へっ?」


 彼らの嘲笑はいきなり途切れる。


 僕が、その場で大きく跳び上がったからだ。


 人間では到達できるはずのない二十メートル近い高さ――城壁の上部まで一気に跳び上がると、僕はさらに壁の凹凸を蹴りながら垂直に駆けあがっていく。


「な……ななな……」

「か、壁を走ってる……!?」

「人間じゃねえ……!」


 兵士たちの絶叫が聞こえた。


 数秒で僕は城壁の最上部に達すると、同じ要領で向こう側へと軽やかに降り立った。


「は、はあ……!?」


 城壁の内側にいた兵士たちが、呆然とした顔でこちらを見ている。


 間髪入れず、僕は突進した。


 ふたたび亜光速の動きで、彼らの間を駆け抜けていく。


 兵士たちの首が次々と宙を舞い、死体の山が積み重なっていく。


 僕はただ駆け続けた。


 ただ、殺し続けた。


「ひ、ひいいいっ!」

「化け物だ……!」


 悲鳴はすぐに途切れ、僕は周囲の守備兵たちを数百単位で斬殺する。


 そして、城門の内側にある巨大な(かんぬき)に向かって剣を振り上げた。


 ばしゅんっ!


 一閃――。


 黒いオーラに包まれた僕の剣が、閂を両断する。


 僕は、そのまま一人で巨大な城門を押し開いていく。


 ギギギ……と軋む音を立て、鉄の扉がゆっくりと開いていった。


 すると――、


「うおおおおおおおおっ!」


 開かれた城門から、ドルファ将軍が率いる帝国の精鋭部隊がなだれ込んできた。


「掃討戦だ! 道を開いてくださったクレスト殿下に報いよ!」

「行くぞぉぉぉっ!」

「王国軍を蹴散らせぇっ!」


 ドルファの指揮の声や兵たちの雄叫びが響き渡る。


「な、なんだ、こいつら!」

「ひ、ひいいいっ、助けてくれ!」


 たちまち城門の内部にいる王国の兵たちはパニック状態に陥った。


 城壁の中は安全と高をくくっていたところに、いきなり突破されては無理もない。


 そんな彼らを、帝国兵が一方的に蹂躙していく。


 が、そこで王国の主力部隊が迎撃に出てくるのが見えた。


 さすがに向こうの精鋭だけあって、混乱の中でも素早く陣形を立て直している。


 まともに戦えば厄介な部隊だ。


 ――けれど、


「将軍」


 僕は部隊を率いるドルファに目配せをした。


「承知」


 彼は力強くうなずき返す。


 いよいよ、作戦の総仕上げだ。

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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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