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68 商業都市ダリアーロの戦い

 一夜明けて、帝国軍はふたたび進軍を始めた。


 そして数日後、三十万を超える大軍勢は商業都市ダリアーロの手前まで到達した。


 この都市を奪還するのが、今回の進軍の最初の目標だ。


 さっそくフラメルや指揮官たちを集め、軍議を開いた。


「ダリアーロの攻略について――確認ですが、仮に力押しした場合、どうなると思いますか?」


 僕はドルファ将軍にたずねた。


「ダリアーロの城壁は最新鋭の魔導技術で幾重にも結界を張られ、非常に強固です。商業都市だけに、ふんだんに資金をかけて建設されておりますので……」

「正面からの攻略は難しい、と?」

「左様です」


 僕の言葉にうなずくドルファ。


「では、この辺りに陣を置きましょう」


 広げられた地図の一点を指し示す僕。


 そこは、ダリアーロの正門前だった。


「は? い、いえ、先ほど正面からの攻略は難しいと申し上げたのですが……」

「ええ、これはおとり用です。左右に魔法師団を配置し、奴らを誘い込んで挟撃します」


 僕は言った。


「彼らとて、簡単には誘いに乗らないのでは?」

「向こうは都市内に隠れたままでしょう。こちらは一方的に遠距離からの攻撃にさらされるだけかと……」


 他の指揮官たちが次々に異議を唱える。


「通常なら、そうなるでしょう」


 僕は彼らにうなずいた。


「ですから、彼らを誘導します」

「誘導?」

「僕が単騎で突進して正門を破壊するんですよ。同時にいくつかの部隊をそこから突入させます」


 説明する僕。


「奴らの迎撃部隊が出てきたら、適当に交戦してから敗走します。追ってきた奴らを陣まで誘い出し、そこに配置した部隊と左右の魔法師団の挟撃で殲滅します」

「そ、それはいくらなんでも現実的ではないかと……」


 ドルファ将軍が眉根を寄せた。


「子どもが考えたような戦術でしょうか?」


 僕は悪戯っぽく笑う。


「……クレストくん、まさかふざけてないよね?」


 フラメルに軽くにらまれた。


「もちろんですよ、姉上。この作戦は姉上の力がなくては完成しません」


 僕は彼女を見つめた。


「あたしの……?」

「僕が……『能力』を全開にします。同時に姉上も最大級の補助魔法で僕の力を引き上げてください」


『能力』というふうに曖昧な言い方をしたが、僕が使おうとしているのは『人造の魔王』としての力――つまりフルパワーで戦うということだ。


 そこにフラメルの補助魔法でさらに戦闘能力を上昇させれば、単騎で正門を突破するくらいはできるだろう。


「本気て言っているの……あの力は――」

「姉上が見守ってくれれば、やれます」


 僕はフラメルを見つめた。


 愛おしい思いを込めて、ただ見つめた。


「クレストくん……」


 フラメルが僕の手を取る。


「君が言うなら、信じる。でも、その後は? まさか一人で敵を全滅させる、なんて言わないでしょうね」

「さすがにそれは無理です」


 僕は苦笑した。


 いくら人造の魔王といっても、その力も無限じゃないし、しょせんは多勢に無勢だ。


 大勢の敵に囲まれれば、いずれは僕の方が力尽きる。


「城壁を乗り越えて、正門の裏側まで行くことはできると思います。そこで守備兵を蹴散らして正門を向こう側から開けます」

「そこにタイミングを合わせ、主力部隊を突入させるということですか……」


 ドルファが言った。


「クレスト殿下の勇猛は以前にも見ておりますし、そこにフラメル殿下の力が合わされば不可能ではないかもしれません……後は我らの部隊がクレスト殿下の動きに連携できるかどうか」

「あなたならできます、ドルファ将軍」


 僕が微笑む。


「主力部隊の指揮はあなたにお願いしたい」

「……大任ですな。謹んでお受けしましょう」


 言って、ドルファがニヤリと笑った。




 そして――さっそくダリアーロ攻略戦が始まった。


 正門から少し離れた地点に僕とフラメルが立つ。


 後方にはドルファが指揮する部隊が控えていた。


 いずれも彼が選んだ精鋭ぞろいだ。


「本当に大丈夫なのね、クレストくん」

「ええ、あなたが見ていてくれるなら――」


 僕はフラメルに微笑んだ。


「本当は、ここで抱き締めて、キスしてあげたい……けれど、今は人目があるから」


 フラメルが照れたように、はにかんだ。


「戦いが終わったら、たくさん愛し合いましょうね」

「フラメル……」

「や、やだな、あたしから言うの、恥ずかしいね」


 と、ますます照れたような顔をするフラメル。


「嬉しいです」


 僕は彼女の手を取った。


「フラメルがそうして支えてくれるから、僕は力を尽くせます。不安定な力でも、この『心』があれば制御できる――その自信があるから提案した作戦です」

「クレストくん――」

「始めましょう」


 僕は正門に向き直った。


 今こそ魔王の力を、制御するときだ――。


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