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57 ローウェンの告発

「な、何を言っているのか、わ、わかりませんな……!」


 ローウェンが震えている。


「僕の【魔眼】は他者の心を見ることができる。嘘をついても無駄だ」


 といっても、具体的な内容まで読み取ることはできない。


 あくまでも心の色を見る程度――けれど、それだけでも状況証拠にはなり得る。


 そして、僕が『他者の心の色を見る』力があることは、ローウェンも当然知っているだろう。


「お、おのれ――」


 ローウェンは壁際の呼び鈴に手をかけた。


 どんっ!


 けれど、呼び鈴が鳴らされるより早く、僕は奴のみぞおちに一撃を加え、そのまま昏倒させた。


 倒れたローウェンを拘束し、さるぐつわを噛ませた上で、目を覚まさせる。


「う……ぐ……」

「騒げないようにさるぐつわをさせた。今から僕の言うことに『はい』か『いいえ』で答えろ。いいな?」

「うぐぐ……」


 どすっ!


 僕はローウェンのみぞおちを軽く蹴りつける。


「ごっ……」

「『はい』か『いいえ』だ」

「んん……」


 ローウェンは慌てたようにうなずいた。


「よし。じゃあ、一つ目の質問だ。確認だが――お前はメルディア王国の内通者ということでいいな?」


 僕は剣を抜いて、彼の首筋に突きつけた。


「……!」

「答えろ」


 ローウェンは首を縦に振った。


 意外と観念するのが早いが、その方が僕としては助かる。


「お前以外にも内通者はいるのか?」


 ローウェンはまた首を縦に振った。


「それは誰だ? この紙に名前を書け」


 と、羊皮紙とペンを足元に置く。


 それから両足は拘束したまま、両腕の拘束だけを解いてやった。


「……んん」


 が、ローウェンは首を左右に振り、書こうとはしない。


 僕は奴に剣を突きつけた。


「僕はお前たちに人生を狂わされ、殺されかけたこともある。いや――一度は殺されたんだ。アレスとして」


 剣に力を籠めると、ローウェンの首筋が裂け、血が流れ落ちた。


「すべてを明かしてもらうぞ」




 だが、ローウェンの態度は頑なだった。


 恐怖で青ざめた顔になり、先ほどから震えっぱなしだ。


 ――まず聞き出せる情報から得ることにするか。


「ガレンド陥落も、お前の仕業か」


 僕は質問を変えた。


 ローウェンはうなずいた。


「ガレンドは帝国の穀倉地帯だ。食料供給を断ち、ヴァールハイトの国力を弱める……それが狙いか? 他にも目的があるのか?」


 僕は質問を重ねた。


「前者なら一度、後者なら二度うなずけ」


 ローウェンは一度だけうなずいた。


「お前たちが行っている魂の移植儀式にはリーダー格らしき人物がいた。『指導者』と呼ばれていたが……お前はその配下ということか」


 ローウェンがうなずく。


「そいつの名前を書け」


 と、ペンと羊皮紙を差し出すが、


「っ……!」


 ローウェンはますます青ざめた。


 やっぱり駄目か。


 と、そのときだった。


「……!」


 ローウェンはカッと目を見開き、ペンを取った。


 ――『指導者』は、超古代文明の秘術を復活させようとしている。

 ――そのための資金と人材を、私は『指導者様』に提供してきた。


 急に羊皮紙に書き始めた。


 何かに追い立てられるような、書き殴りの文字だ。


 ――『指導者』が求める秘術は、人造の魔王の完成。

 ――それが完成したとき、世界は我らの


 書きかけたところで、ローウェンの手がピタリと止まった。


「どうした?」

「……!」


 ローウェンは突然目を血走らせ、今まで以上に勢いよく羊皮紙に書き殴る。




 ――助けてくれ。




 書き終わったローウェンは悲痛な眼差しを僕に向けた。


「どういう意味だ……!?」


 僕は彼の顔を覗き込む。


 恐怖。

 絶望。

 そして――諦念。


 様々な感情が浮かぶ顔。


 と、そのときだった。


「っ……!? ぐぼ……ぁっ……!?」


 さるぐつわ越しに苦鳴がこぼれる。


 次の瞬間、ローウェンは体中から血を噴き出した。


「なっ……!?」


 最後に――、


 ぽんっ。


 間の抜けた音とともに彼の首から上が消し飛ぶ。


 あまりにも呆気ないローウェンの最期に、僕は呆然と立ち尽くした。

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