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43 ガレンドの戦い(フラメル視点)

 翌日――。


 フラメルは聖乙女部隊とともに、帝国中央部の穀倉地帯ガレンドに派遣されていた。


 この地は、帝都ヴァールへ続く重要な補給路であり、食料生産の要でもある。


(ここを王国軍に押さえられれば、帝都への物資供給は確実に滞る。長期にわたって占領されてしまえば、帝国の防衛線全体が崩壊しかねない――)


 フラメルは危機感を募らせていた。


 とはいえ、自分にできるのは基本的に後方支援だ。


 現在は最前線の野戦病院で回復任務にあたっている。


「フラメル様、新たな負傷兵たちの受け入れ準備が整いました!」

「後方からの搬送も順次到着しております!」

「治癒の優先順位、分類終わりました! 順次、施術をおこないます!」


 聖乙女部隊の隊員たちが機敏に動きながら、手際よく負傷兵たちの治癒をおこなっていく。


 彼女たちは皆、治癒魔法や防御魔法に長けた有能な魔術師ばかりだ。


 フラメルはそんな部下たちに全幅の信頼を置いていた。


「みんな、一人でも多くの命を救いましょう。ガレンドは帝国の生命線――ここを守り抜くためには、兵士たちの回復が急務よ」


 言いながら、救護所の奥に設置された壁掛けに視線を向ける。


「ガレンド中央の戦況は……」


 そこには帝国軍と王国軍が激しくぶつかり合う光景が映し出されていた。


 隊員の一人が持つ【遠隔視】の魔法を利用した映像だ。


 これによって離れた場所で起きていることを、目の前で見ているかのように確認することができた。


「帝国屈指の猛将――【鋼鉄将軍】のゴーゼリオ。あたしに手助けしてもらうのは面子が許さなかったみたいだけど」


 フラメルは唇をかみしめた。


 彼女は治癒魔法だけでなく防御魔法の面でも帝国随一の能力を持っている。


 王国の猛攻撃を防ぐには、彼女の能力は非常に有用と言えた。


「やっぱり、無理にでも前線に出るべきだったのかな……」


 見るからに、帝国軍は押されていた。


 だが――自分が前に出ていれば、今度は救護所が手薄になるのも事実だ。


 いくら聖乙女部隊が有能とはいえ、単純な治癒魔法の能力ではフラメルの半分にも満たない。


 いや、それだけ彼女の治癒魔法が帝国内でも突出しているのだ。


 自分がいなければ、助からない負傷兵は数倍に増えることもあり得る――。


 その判断から、結局フラメルは後方支援に回った。


「こんなとき、クレストくんがいてくれたら――」


 唇をかみしめる。


 ガレンドが落とされたことは、リビティアにいるクレストにも伝わっているころだろうか。


 報告を受ければ、すぐに戦場に駆けつけてくれるだろうが、やはりリビティアからここまでは遠い――。




 それから二時間ほど、帝国軍はさらに劣勢へと陥っていく。


 王国軍はどうやら六神将の直属の部下たちが指揮をしているらしく、彼らの魔法が帝国軍に対して猛威を振るっていた。


 そして、さらに――。


「何、あれ……!?」


 地響きを上げて現れたのは巨大な二十体の影。


「まさか、噂に聞くゴーレム!? そんな――」


 フラメルは息を呑んだ。


 伝説の魔導石像型兵器――ゴーレム。


 現在よりはるかに魔法技術が進んでいたとされる、超古代文明期に生み出された魔導兵器である。


 その戦闘能力は十万の兵に匹敵するとも噂されている。


 ただ、現代では失われた魔法技術を使って建造されたため、修理も補給も不可能で、それゆえに王国も切り札中の切り札として、数百年の間、これの使用を封じてきた。


 そのゴーレムを投入してくるとは――。


「王国は、それだけこのガレンド侵攻を重視している……? それとも――」


 いずれにせよ、あんな代物まで出てきたら、帝国軍はとても耐えられないだろう。


「みんな、撤退の準備を!」


 フラメルは即座に判断した。


「承知いたしました、フラメル様」


 部下たちも即座にうなずく。


 誰もが悟っていた。


 ゴーレムが投入された以上、もはや今回の戦闘は敗北以外にあり得ないと。


 ならば、ここにいる負傷兵を連れて、できるだけ遠くまで避難するしかない。


 一人でも多くの命を救うために――。

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