40 黒騎士はリビティア騎士団を圧倒する2
模擬戦が、始まった。
「うおおおおおおっ!」
最初の騎士が木剣を振りかぶって突進してきた。
「――見える」
【鑑定の魔眼】を発動することで、相手の攻撃をたやすく予測することができた。
あの六神将【烈火】のウェインガイルとの戦いで身に付けた、新たな戦法だ。
彼の振り下ろした木剣を紙一重で避けた僕は、カウンター気味に木剣を繰り出した。
かしいん。
乾いた音とともに、彼の木剣が宙を舞う。
「くっ……ま、参った」
彼は驚き半分、悔しさ半分といった顔で一礼した。
「ありがとうございました」
僕も礼を返す。
次の相手も同じように【鑑定の魔眼】で動きを見切り、一度も剣すら合わせず、相手の木剣を弾き飛ばす。
さらに次も、その次も。
いずれも同じパターンで、僕は勝利を重ねていく。
「ば、馬鹿な、強すぎる……」
「これが【黒騎士】……」
騎士たちは戦慄した様子でつぶやいた。
「聞きしに勝る剣技! さすがです、クレスト殿下!」
騎士団長のボーゼスが進み出た。
「最後は私にもご指南を」
「あなたの噂は聞き及んでおります。ぜひ」
ボーゼスは大陸有数の使い手で、その評判は僕も知っている。
「英雄【黒騎士】と我がリビティアが誇る【嵐刃】ゴーゼス……ふふ、楽しみな組み合わせじゃの」
と、シェラが嬉しそうに笑った。
――試合が、始まった。
「今までの相手とは違うな……」
こうして対峙しただけで、すさまじい威圧感が押し寄せてくる。
騎士と魔術師でタイプは違うけど、威圧感自体は六神将と比べても遜色ないほどだった。
「来ないのですか、クレスト殿下」
ボーゼスがじりじりと近づいてくる。
僕は静かに構えたまま。
【鑑定の魔眼】は相手の動きを見切ることができるから、自分から仕掛けるより、相手の動きを待ってカウンターを繰り出した方が有利だ。
「ならば、私から!」
と、ボーゼスが突っこんできた。
「おおおおおおおおおっ!」
矢継ぎ早に木剣を繰り出してくる。
【嵐刃】の二つ名通り、まさに嵐のような連続攻撃――。
「右、左、左――」
僕は【鑑定】でその動きを予測するものの、
「くっ……!」
防いだり避けるのが精一杯で、反撃に移れなかった。
――相手の動きを予測し、反応してから、実際に行動に移すまでには、ほんのわずかな時間差がある。
今までの騎士たちが相手なら、その時間差があってなお、余裕で対応できた。
けれど、さすがにボーゼスは格が違う。
「いくら先が見えても、僕の動きがそれに対応しきれない――?」
少しずつ、だけど確実に。
ボーゼスの剣が僕を押し込んでくる。
後退し、相手の攻撃をいなしながら、僕は反撃の隙を伺った。
だけど――見いだせない。
「……強いな」
僕は舌を巻いた。
「そちらこそ」
一方のボーゼスも険しい表情だ。
相手からしたら、いくら攻めても決め切れない、という心情なんだろう。
僕たちの勝負は拮抗している――。
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