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40 黒騎士はリビティア騎士団を圧倒する1

 僕はシェラに案内され、リビティア王城の中を歩いていた。


 彼女は王城の美しさや歴史について、楽しげに語っている。


 ただ、僕の気持ちはどこか落ち着かなかった。


 シェラは積極的に迫ってくるけど、僕の方は彼女に気持ちがない。


 だから申し訳なさが、どうしても先に立つのだ。


「……ん?」


 ふと、広大な訓練場が目に入った。


 多くの騎士たちが真剣な面持ちで訓練に励んでいる。


 さすがに歴史のある大国だけあって、彼らの剣は鋭かった。


「ほう、気になるか?」


 と、シェラが僕に言った。


「やはり武人よの。わらわと話している時より、目が輝いておるぞ」

「いえ、そんな……」


 僕は首を左右に振った。


 実際、僕はもともと武人ではない。



 前世の『アレス』だったころ、王族のたしなみとして剣を習ってはいたけど芽が出なかった。


 兄や姉の中には武人として戦場に出ている者もいるが、僕は一度も出たことがなかった。


 戦場を経験したのは、『クレスト』になってからだ。


 とはいえ、剣の達人としての肉体に生まれ変わり、戦場も経験したことで、僕の精神性が武人に近づいているのかもしれない。


 実際、リビティア騎士団の剣技を見ていて、心惹かれるものを感じたのは事実だった。

 と、


「シェラ様!」


 騎士たちがこちらに気づいたのか、いっせいに訓練を止め、深々と礼をした。


「わらわは帝国の客人を案内しておるだけじゃ。気にせず続けてくれ」


 シェラが騎士たちに手を挙げて挨拶をする。


 僕も一礼した。


「あれが帝国の【黒騎士】か……」

「あんな少年が大陸最強だとは、信じられん」

「姫様がご執心だというが、どれほどのものか……」


 騎士たちのヒソヒソ話が耳に届く。


 どうやら彼らはシェラを慕っているらしく、僕という存在が面白くないのだろう。


 まるで僕を値踏みするような視線をいくつも感じる。


「おそれながら」


 騎士団長らしき男が進み出た。


 まだ若く、二十歳そこそこに見えるけど、その身のこなしにはまったく隙がなかった。


「帝国の英雄、クレスト殿下――あなた様の武勇はかねがね聞き及んでおります! ぜひ、我らに一手ご指南いただきたい!」

「なんじゃ、ボーゼス。クレストと戦いたいのか?」


 シェラが微笑みながら問いかける。


「武人の本能です、シェラ様」


 ボーゼスと呼ばれた騎士団長が、まっすぐな目でシェラに答えた。


「ならば、我らも!」


 さらに数人の騎士たちが僕の前に並んだ。


「彼らはいずれも騎士団上位の実力者たちじゃ。クレスト、少し稽古をつけてやってもらってもよいか?」


 シェラが提案した。


「僕が、ですか?」

「うむ。わらわもぜひ見てみたい」


 シェラはにっこりと微笑む。


 とたんに騎士たちから「おおっ!」と歓声が上がった。


 断れる雰囲気じゃなかった。


「分かりました。相手をさせていただきます」

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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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