36 【氷嵐】のイオと王国の策動(メルディア国王視点)2
「正面から勝てぬとなれば、搦め手――当然のことかと」
イオが淡々と言った。
「そのために二段階の作戦を実施したく思います」
「二段階……?」
「まず一段階目として、帝国の中央にある穀倉地帯を攻め、ここを獲ります」
「ガレンド地帯か?」
王は眉を寄せた。
「今までにも何度か検討された標的地だ。しかし、奴らもそこは守りを固めておろう」
「いかに守ろうとそれ以上の戦力で攻めればよいだけのこと。我らには帝国を圧倒する力がありましょう?」
イオがニヤリと笑う。
「王城の奥に眠らせている最強の刃が」
「……ゴーレムを使うと申すか」
国王の表情がこわばった。
「あれは超古代文明の産物。内部機構の解析は進んでおらず、新造するところか、修理さえおぼつかぬ。その燃料も我らの技術では新たに作り出せぬ」
「ゴーレムがどれだけ貴重な戦力なのかは、俺も理解していますよ、陛下」
イオが微笑む。
「ですが、その価値があると考えます。穀倉地帯を落とし、さらにもう一つ――」
その笑みが濃くなる。
「帝国内で【癒しの聖女】と称賛される皇女フラメルを討つことができれば」
「フラメルを……? クレストではなくて、か」
国王が眉を寄せた。
「多くの者を癒やす力を持つフラメルこそ、真の脅威です。彼女の存在が幾多の帝国兵を救い、また彼らの士気を高めてきました。それを取り除けば、彼らの士気が減退するのはもちろん、帝国は絶大な回復手段を失うことになります」
「ふむ……クレストがいかに強かろうと、しょせんは攻撃の力。真に厄介なのは癒しの力か」
一理は、ある。
「だがゴーレムを投入する以上、失敗は許されんぞ。王国にとって、もっとも貴重な戦力の一つだ。必ず成功させねばならぬ」
「無論です。万全を期すため、内通者とも密接に連絡を取りましょう」
「――何?」
王が驚きに目を開いた。
「そのような者がいるのか?」
「以前から、俺は色々と工作を行っているのですよ、陛下。あなたに報いるために――」
イオが微笑む。
「余は聞いておらぬぞ」
「ですから、今申し上げました」
イオは悪びれない。
王は苦笑した。
「まあ、よい。その内通者とやらは信用できるのか?」
「向こうには向こうの思惑がありましょう。ただし、今回に関しては我らと向こうの利害はある程度一致するはず。後はそれを擦り合わせ、協力を取り付けます」
「自信があるというのだな」
「無論」
「分かった……考えておこう」
謁見が終わり、王子や王女、重臣たちが去っていく。
そんな中、玉座から降りた王の前にイオがやってくる。
「……なんだ、イオ」
「先ほどの場では申し上げづらいことがあり、こうして参上した次第です」
イオが国王を見つめる。
「今さら自信がないとでも申すつもりか?」
「まさか」
イオが微笑んだ。
「俺は絶対の自信があることしか申し上げませんよ、陛下」
言ってから、その視線が鋭さを増す。
「いえ――父上」
「……イオよ、その呼び方をするでない」
「俺はあなたの子として恥じない働きをしたい。それだけです」
イオが熱を込めて語る。
「それを言いに来たのか」
「もう一つあります」
イオがさらに進み出た。
「なんだ」
「半年前に処刑された【魔眼】の王子――アレス」
イオが重々しく告げる。
「帝国の【黒騎士】の正体は十中八九……奴です」
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