36 【氷嵐】のイオと王国の策動(メルディア国王視点)1
メルディア王城、謁見の間――。
国王は重く張り詰めた空気を感じながら、玉座に深く腰掛けていた。
居並ぶ重臣たちや何人もの王子、王女、そして……正面に立つ四人の魔術師たちを順番に見回す。
六神将。
メルディア最強の魔術師集団であり、この国の戦力の象徴ともいえる者たち――。
だが、その数はすでに四人に減っている。
国家の一大事と言っていい状況に、王は怒りを禁じえなかった。
「どういうことだ、これは……!」
「【雷光】のテスタロッサに続き、【烈火】のウェインガイルまで討たれただと!」
「我が国が誇る最強戦力、六神将が二人も……」
それに対し、王子や王女たちは怒りをあらわにしている者が多い。
「いずれも帝国の【黒騎士】に討たれたようですが……あなたがたは勝てますか?【黒騎士】クレスト・ヴァールハイトに」
王女の一人がそう言って、四人の神将をにらみつけた。
彼らにとって、今の状況はまさに針のむしろ――。
とはいえ、神将たちを糾弾するためにこの場を開いたのではない。
あくまでも今後の戦況に関して話し合うための場である。
ここは自分が助け舟を出さなければならない。
「……六神将は単に最強の魔術師たちというだけではない。我が国の戦力の象徴的な存在。それが相次いで敗れるとなれば、軍全体の士気にもかかわる」
国王が重々しく告げる。
若い頃なら、こらえきれずに怒声を発していただろう。
それをしなくなったのは、自分が丸くなったのか。
いや、これこそが年を取った証なのか。
「これ以上の敗北は許されぬ。神将たちだけに責を負わせず、我ら一丸となって対策を練る必要があろう」
と、神将たちの立場に配慮しつつ、王は全員を見回した。
「恐れながら、陛下」
進み出たのは銀髪の美しい少年だった。
六神将の中で最年少――わずか十三歳にして、その座に着いたイオ・ザフィールだ。
「クレストは手ごわい……生来の剣技だけでも尋常ならざる騎士でしたが、今の彼はそれに加えて【魔眼】を使いこなすそうです。いかに六神将といえども、そうそう立ち向かえる相手ではございません」
イオの声は落ち着いていた。
とても自分の三分の一も生きていない少年とは思えないほどに、人生の年輪すら感じさせる落ち着きだ。
「お前でも勝てぬか? 【氷嵐】のイオよ」
「勝つ必要がございますか、陛下?」
国王の視線を真っ向から受け止めるイオ。
その度胸を国王は好ましく思った。
「考えがあるなら申せ」
口元に自然と笑みが浮かぶ。
テスタロッサやウェインガイルすら破れた【黒騎士】が相手でも、イオならば何とかしてくれるかもしれない。
そんな期待感が胸の内で高まった。
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