35 すれ違う想い2
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フラメル――?
僕とシェラの結婚の話を、彼女は少しも喜んでいないようだ。
もちろん、僕自身も乗り気じゃない。
そもそも会ったばかりの相手にいきなり結婚を申し込まれて、はいそうですかと受け入れられるわけがない。
何よりも――僕が本当に側にいてほしいと願う相手は、シェラじゃない。
僕が、側にいてほしいと願うのは――。
と、そのときだった。
シェラが、まっすぐフラメルの元へ歩み寄っていく。
「フラメル殿も賛成してくれぬか? わらわと、そなたの可愛い弟君との婚姻を」
「……クレストくんの結婚は、彼自身の意思で決めるべきことよ」
フラメルは硬い表情で告げた。
「ほう? そなたは、わらわたちの婚姻をあまり喜んではいないようじゃな」
シェラがニヤリと笑みを浮かべる。
「それは、姉としての愛情からの発言か? それとも――」
彼女の目がスッと細められる。
まるでフラメルの心の奥底まで、すべてを見透かすような鋭い視線だった。
「一人の女としての、感情の発露かな?」
「っ……!」
その言葉に、フラメルの白い頬がさっと赤く染まった。
「な、何を言っているの……! あたしとクレストくんは、その……姉と弟よ……」
言いながらも、彼女は明らかにたじろいでいた。
実際、僕とフラメルは実の姉弟ではない。
肉体的にも、精神的にも。
「ほ、ほ、ほ。冗談じゃよ。そのように本気にせずともよかろう?」
シェラは少しも悪びれず、余裕の表情で笑っている。
「しかし、随分なうろたえようだったの。冗談では済まされない特別な想いでもあるのかのう?」
フラメルはそれ以上何も言い返せず、悔しそうに押し黙ってしまった。
その様子を見て満足したのか、シェラはふたたび僕の方に向き直る。
「では、そういうことじゃ。少し二人きりで話さぬか、クレスト殿」
「僕は――」
「これは、二つの国の友好を深めるための大切な話し合い。むげにはできまい?」
そう言われてしまっては、帝国の皇子として同盟国との関係を無視するわけにはいかない。
「……分かりました」
僕は力なくうなずいた。
シェラに促されるまま、僕は祝宴の喧騒を離れてバルコニーへと向かう。
その間、僕は何度もフラメルの方を振り返った。
フラメルは寂しげな顔で僕を見つめていた。
……フラメル。
僕は、彼女の名前を呼びたい衝動を必死にこらえていた。
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