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32 『クレスト』の真実2

 と、そのときだった。


 ポウッ……。


 書庫の奥から、淡い光が漏れていることに気づいた。


「なんだ……?」


 光の発生源に歩み寄る。


 奥の棚に置かれた小さな羅針盤の形をした器具が緑色に発光している。


「魔道具……か?」


 僕は【鑑定の魔眼】で見てみた。




 名称:【魂の調律器(ソウルチューナー)

 説明:魂の波長を調整し、肉体との定着率を向上させる魔道具。超古代文明の技術で作成されたもの。

 注意事項:欠損部があり、完全な動作は期待できない。




「魂の定着率を向上させる……!」


 かつて僕が自分自身を【鑑定】したとき、『魂の定着率:不安定状態』と表示された。


 それは僕が抱える最大の問題であり、不安の種だった。


「もし、この魔道具を修理して、完全に動作するようにできたなら――」


 僕の魂はクレストの肉体に定着し、不安定な状態から脱出できるかもしれない。


 僕は山のような記録書類の中から重要そうなものだけを選び出し、さらに【魂の調律器】も荷袋にしまい込んだ。


 それから研究施設を後にして帰路についた。




 翌日、僕はフラメルの見舞いに訪れた。


 彼女はもう寝台から起き上がっていて、顔色も随分と良くなっている。


「クレストくん、来てくれたんだね」


 フラメルがにっこり笑った。


「姉上、お加減はいかがですか」


 一礼する僕。


「うん、もう大丈夫。自分で自分に治癒魔法をかけたからね」


 さすがは【癒しの聖女】だ。


 あれほどの重傷だったのに、一晩でここまで回復するなんて――。


 僕は素直に感心した。


 けれど――彼女が腕を動かしたとき、袖口から覗く新たな火傷の跡を見つけて、僕の気持ちは沈んだ。


「……僕のせいで跡が残って……」

「えっ? ああ、これ」


 フラメルは自分の腕を見て、苦笑した。


「気にしないで。もともと、あたしの体はあちこちに傷跡があるし」

「で、でも――」

「それに、これは君を守れた証だから。むしろ、誇らしいくらいだよ」

「姉上……」


 それでも罪悪感は消えなかった。


 僕はフラメルの前に進み出て、深々と頭を下げる。


「申し訳ありません……!」

「やめてよ、クレストくん」


 フラメルが慌てたように僕の肩に手を置き、それを制した。


「君が無事なら、それでいいの。君みたいな強い人が生き残って、帝国を守ってくれることの方が大事よ」


 そう言って、フラメルは微笑んだ。


「大勢の人を守るために、あたしは戦場にいる。この程度の傷がその代償なら――あたしは構わない」


 その笑顔はどこまでも優しく、気高かった。


 強い人だ、と僕は心を打たれる。


 彼女と一緒にいると胸が温かくなる。


 同時に誇らしい気持ちになれる。


 クレストに転生して、この人に出会えてよかった――。


 心から、そう思えた。


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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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