32 『クレスト』の真実1
「魂を移植し、定着させる実験――そして、失敗した者を廃棄……」
僕は、手に持った羊皮紙の束を読みながら、体の震えを止められなかった。
冷たい汗が背中を伝っていく。
乱雑に積まれた記録の山――その一つ一つに、おぞましい実験の成果と残酷な結末が記されていた。
王国が帝国に対して非道な略奪と侵略を行っていたというのなら。
帝国は帝国で、非人道的な魔導実験を繰り返していたというのか。
ここには……また別種の、底知れない闇が広がっている。
「なんだ、これは……なんなんだ……!?」
ある羊皮紙には、この魂の移植実験が主に二つの目的を持っていたことが記されていた。
一つは、永遠の命を持つ存在を生み出すこと。
魂を次々と新しい『器』に移し替えることで、死という概念そのものを克服しようという試みだ。
そして、もう一つは――強大な力を持つ最強の兵士を生み出すこと。
優れた能力や魔力を持つ魂を、屈強な肉体を持つ器に移植する。
そうすることで、帝国にとって最強の駒を作り出そうという計画。
「永遠の命に、最強の兵士……か」
僕は嫌な予感を覚えた。
震える手で、さらにページを読み進めていく。
やがて――とあるページで決定的な記述を見つけた。
『器:クレスト・ヴァールハイト。比類なき剣の才能を持つが、皇帝への忠誠心に疑義あり。別の魂を移植することで帝国への高い忠誠心を持つ最強の騎士を誕生させたい』
『移植候補:アレス・メルディア。固有スキル【魔眼】を持つ。王国から忌避されており、内通者の協力で彼を処刑まで持っていくことは難しくない。【魔眼】に関しては魂の移植の際に強化措置を行う予定』
「っ……!」
声にならない声が漏れた。
僕の現在の名前と前世の名前が並んでいた。
「僕がクレストに転生したのは……ここでの実験の結果……!?」
もし、この記録が正しいというのなら――。
半年前、僕がアレスとして受けた処刑は、帝国と王国内の内通者が共謀して行ったことになる。
僕が帝国のために戦うようになったのは、理不尽に処刑されたことへの恨みと、実際に戦場で略奪や非道を行う王国兵たちを目にしたことが大きい。
だが、それすらも、すべて仕組まれていたというのか――?
僕が抱いた怒りも、憎しみも、復讐心も、すべては見えない『黒幕』の手のひらの上で踊らされていただけ……?
「ふざけるな……!」
行き場のない怒りがこみ上げる。
悔しさがあふれ、視界が涙でにじんだ。
「僕の人生は……僕の感情は……お前たちの駒じゃない……!」
涙が頬を伝っていくのを感じた。
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