30 勝利と雪解け2
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その後、僕は最前線まで赴き、残る王国兵たちを圧倒した。
「だ、駄目だ、強すぎる――」
「ひいっ、化け物だ!」
「勝てるわけがない! 逃げろ! 逃げろーっ!
剣を振るうたびに、王国兵を次々に斬り捨ていく。
僕は自分でも驚くほど醒めた気持ちで剣を振るっていた。
機械的、といってもいいほど淡々と、次々に兵を斬る。
ただ、この無益な殺し合いを終わらせたい――。
その一心だけで、僕は戦場を駆け抜けていった。
やがて、王国兵はウェインガイルを失った痛手も加え、完全な総崩れとなって逃げ去っていった。
帝国軍の完全勝利だ。
それを見届けると、僕は大急ぎで救護所へと向かった。
天幕の中に足を踏み入れる。
奥にある寝台にフラメルが横たえられていた。
「姉上……?」
ピクリとも動かない。
「まさか……」
既にこと切れている……?
その可能性が頭をよぎり、僕はゾッとなって彼女の元へ駆け寄る。
「姉上!? 姉上ーっ!」
僕は無我夢中で叫んだ。
けれど、彼女からの反応はない。
「フラメル――そんな……!?」
本当に、死――?
絶望が僕の心を覆い尽くそうとした、その時だった。
「……クレストくんって、ときどきあたしのことを名前で呼ぶよね」
彼女がゆっくりと目を開いた。
「フラメル……!」
「最近になってからだよね……その呼び方」
フラメルは悪戯っぽく微笑んだ。
「君は……本当にクレストくんなの……?」
冗談めかした問いかけ。
だけど、その問いに僕の心臓がドクンと大きく跳ねた。
僕の表情を見て、フラメルも何かを察したような顔に変わる。
「もしかして、君は――」
「僕は、その……」
思わず口ごもる。
「……ううん、こんなことを言うべきじゃないよね」
フラメルはハッとしたように表情をこわばらせた。
「変なことを言って、ごめんね。君が無事で嬉しい」
彼女は僕の頬にそっと手を伸ばした。
僕はその手に自分の手を重ね、深く頭を下げた。
「出立の前のことは……申し訳ありませんでした」
「ん? どうしたの」
「僕はあなたに失礼な態度を取ってしまった……」
唇をかみしめる。
「あなたはこんなにも懸命に僕を守ってくれたのに。僕はあなたを疑うような言動を――」
「いいのよ、そんなこと」
フラメルの笑顔は、どこまでも優しかった。
「あたしのこと……信じてくれる?」
「はい――姉上」
「じゃあ、仲直りだね」
その言葉に、僕の心にずっと重くのしかかっていたものが嘘のように消えていくのを感じた。
「はい、姉上……!」
僕は力強くうなずいた。
もう二度と、この人を疑わない。
そう心に誓いながら。
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