29 烈火の決着2
光は僕の体を包み込み、薄い膜のような結界を作り出す。
「【聖域の護符】――移動型の防御結界よ。それなら火炎にも耐えられるはず……」
フラメルが苦しげな息をつきながら言った。
その言葉通り、炎の兵士が振るう剣が結界に触れると、ばちぃっ、と音を立てて弾かれた。
だが、その瞬間。
ぼっ!
フラメルの右腕が燃え始めた。
「姉上……!?」
「結界が耐えきれない分の威力は、あたし自身が引き受ける……。クレストくんには、攻撃の威力は届かないようにしてあるの。だから――」
ぼっ! ぼっ! ぼっ!
フラメルは体のあちこちを炎に焼かれながら、苦痛に顔を歪めた。
「行って、クレストくん……! あたしも、長くはもたないから……」
「フラメル……!」
彼女は自分の身を犠牲にしてまで、僕に攻撃の機会を作ろうとしてくれている。
その想いが、その覚悟が、僕の心に熱い炎を灯した。
「僕も、あなたを守る――そのために、奴を討つ!」
決意が、僕の体にふたたび力をみなぎらせる。
動きの切れが戻り、炎の兵士たちの攻撃をかいくぐりながら、一気にウェインガイルへと迫った。
「くっ……!」
ウェインガイルが初めて焦りの表情を浮かべた。
「奴を近づけさせるな!」
炎の兵士たちに僕を止めるよう命じるが、もう遅い。
僕はそいつらを剣で斬り裂き、力強く振り払い、ついにウェインガイルの目の前までたどり着いた。
「おのれ……。だが、俺はお前に討たれるわけにはいかん!」
ウェインガイルの前面に黒い火球が生まれる。
これまでとは比べ物にならないほど巨大な火球――範囲攻撃ですべてを吹き飛ばすつもりか……!?
「陛下のために! この国のために! 妹のような者が二度と出ない、平和な国を創るまでは――」
「想いを背負っているのはお前だけじゃない!」
迷いなく剣を振りきる。
ざんっ!
一閃とともに、ウェインガイルの首が宙を舞った。
「僕だって、フラメルだって……みんな」
胴体を失い、倒れる体。
その側に転がった生首。
そして、その向こうに横たわるローディの亡骸。
僕はそれらを見つめながら、うめいた。
「みんな、想いはそれぞれに――」
こみ上げたのは勝利の歓喜ではなく。
胸の奥が澱んでいくような、苦い苦しみだけだった。
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