28 大切なものを守るために1
ローディの右足は膝から下がなくなっていた。
僕が石化させた部分を自ら切断し、ウェインガイルの盾になるために飛行魔法で飛んできた、ということか……!?
「ローディ!?」
ウェインガイルの絶叫が響き渡った。
「うああああああああああああああああああああああああっ!」
先ほどまでの傲岸な態度が嘘のような、悲痛な叫びだった。
ローディはウェインガイルの腕の中で、安らかな表情を浮かべている。
「よ……かっ……た……! お助……け……でき……て……」
「なぜだ!? なぜ俺のために、お前が――!」
ウェインガイルが泣き叫ぶ。
そんな彼に、ローディが弱々しく手を伸ばした。
「勝っ……て……くださ……い……! そ、そし……て……生き……て……愛し……い……ウェイン……ガイル……さ……ま……」
優しく呼びかけながら、彼女の手が力なく垂れた。
「あ……あぁぁ……」
ウェインガイルはその亡骸を抱きしめ、慟哭する。
僕は――動けなかった。
本来なら、今がウェインガイルを討つ好機だっただろう。
けれど、愛する人間を失い、泣き叫ぶ彼を見て、どうしても体が動かなかった。
これは、甘さだ。
分かっていながら、僕は――。
「……見ていてくれ、ローディ」
ウェインガイルは彼女の体をそっと横たえ、立ち上がった。
「俺が奴を殺すところを――!」
ごうっ!
彼の全身から炎が立ち上った。
その炎は今までのような赤色ではない。
彼自身の憎悪を映し出したかのような――漆黒の炎だった。
「俺には、かつて妹がいた――」
ウェインガイルが、憎々しげに僕をにらみつけてきた。
「だが妹は、遊び半分に殺された。くだらない貴族の戯れでな」
僕は何も言えなかった。
「そして今、妹のように愛おしい存在がまた殺された。俺はまた……大切な者を、この手で守ることができなかった……!」
ごおおおおおおおっ!
ウェインガイルの全身から立ち上る漆黒の炎が、さらにその火勢を増した。
「っ……!?」
そこで僕は気づいた。
彼の肉のあちこちが黒く炭化し、ぱちぱちと音を立てて消し飛んでいく。
あまりにも強大な炎が、ウェインガイル自身の体を少しずつ焼き焦がしているのだ。
けれど、ウェインガイルは苦痛の表情をいっさい見せなかった。
「俺は自分が憎い……! 何一つ守れず、ただ燃やし尽くすことしかできない、こんな忌まわしい炎があっても……!」
僕は無言で剣を構え直した。
あれだけの火力で全方位を焼き尽くされたら、避けることも逃げることも不可能だろう。
彼の出方次第で、僕は確実に殺される。
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