27 【魔眼】の先へ2
さて、どうするか。
僕は頭の中で、使える手札を整理する。
【吸収】は暴走の危険があって使えない。
【石化】や【呪怨】も、さっき試した限りでは効果が薄れていた。
おそらく、暴走の反動で【魔眼】全体の力が不安定になっているんだ。
「なら、剣で奴を仕留める――」
今の僕に残された最強の武器は、この体に宿る【黒騎士】の超絶剣技だけだ。
「いくぞ、ウェインガイル!」
僕は地面を蹴り、一直線に突進した。
「させん!」
ごうっ!
無数の火球が放たれ、赤い弾幕となって僕の行く手を阻む。
「くっ……!」
火球を剣で弾き、爆風をすんでのところでかわした。
さっきまでの暴走状態のときの異常な身体能力は、もう僕にはない。
それどころか、度重なる戦闘と【魔眼】の反動で、体は鉛のように重かった。
パワーもスピードも、明らかに落ちている。
そのせいで、どうしても距離を詰められない――。
戦いは、遠距離攻撃ができるウェインガイルが有利に進めていった。
「はあ、はあ……くっ、もう力が……」
僕の息が荒くなる。
体力の限界が近い。
「このままでは負ける――」
焦りが募る中、僕は半ば無意識に【鑑定の魔眼】を発動した。
何か突破口はないのか……。
ウェインガイルのステータス表示が目に映る。
「えっ……?」
そのとき、いつもとは違うものが見えた。
「なんだ、これは――?」
彼の体から、色のついた光の線がいくつも伸びている。
筋肉が収縮し、魔力が練り上げられる――その流れが可視化されている、のか……?
今までの【鑑定】とは、明らかに違う。
【鑑定】の新たな力か、それとも――。
「成長しているのか、僕の【魔眼】が……!?」
暴走の果てに、僕の力は新たな段階に進もうとしているのか。
もしかしたら、この力もまた暴走するかもしれない。
けれど、今の僕に他の手はない。
「賭けるしかない――!」
ウェインガイルの体から出ている光の線を見れば、彼の未来の行動は容易に予測できる。
「これで、仕留める!」
ウェインガイルが、今までで最大の火球を生み出して放った。
けれど、僕にはもう見えている。
火球が放たれる一、二秒前に、その軌道を示す光の線がはっきりと見えていたからだ。
僕は最小限の動きでそれを回避し、一気に距離を詰める。
「ちいっ!」
さらに火球が放たれる。
それも予測して避ける。
また火球が放たれる。
それも予測――いや、これはもはや予知だ――で避ける。
「な、なんだ、お前……その動きは――」
ウェインガイルが驚愕の声を上げた。
彼の目には、僕がまるで火球をすり抜けたかのように見えただろう。
「動きが違う……俺の攻撃が当たらない――!」
攻守は完全に入れ替わった。
さっきまで余裕を見せていたウェインガイルは、僕の神がかり的な動きに翻弄され、徐々に追い詰められていく。
ただ、僕の体力ももう限界に近い。
この【先読み】も、長くは使えないだろう。
すべてが尽きる前に、決着をつける。
「終わりだ、ウェインガイル!」
僕は最後の一歩を強く踏み込み、とどめの一撃を繰り出した。
彼の心臓を貫く、必殺の突き。
これなら避けられない――僕の勝ちだ!
確信した、そのときだった。
「ウェインガイル様!」
横合いから、一つの影が飛び込んできた。
その影は、僕の剣の前に立ちはだかり、ウェインガイルの盾となった。
ざしゅっ、と肉を貫く鈍い感触。
「君は――?」
僕の剣に貫かれたのは、ウェインガイルの副官である女魔術師、ローディだった。
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