26 黒騎士と聖女、重なる心1(フラメル視点)
※
SIDE フラメル
要塞都市の救護所は、負傷兵であふれかえっていた。
そんな中で、フラメルは休む間もなく治癒魔法を使い続けている。
放っておけばすぐに死んでしまうような負傷兵も、彼女の治癒魔法によって次々と命を取り留めていく。
だが、フラメルの魔力も無限ではない。
「ふうっ……」
と、彼女は青ざめた顔で息を吐きだした。
疲労が少しずつ、だが確実に溜まっていた。
と、そのときだった。
「――!」
ぞくり、と背筋に悪寒が走る。
戦場の方角から、無数の魔力が乱れて渦巻いているのを感じた。
「この感じ――まさか、クレストくん……!?」
彼の【魔眼】が放つ禍々しい魔力が、その中心にあるようだ。
同時に、無数の魔力が底に集まり、さらには生命力までもが吸い込まれていく――。
「何……これは、何が起きているの……!?」
クレストの持つ【魔眼】の力は底知れない。
フラメルも未だ知らない、新たな力が発現しているのだろうか?
クレストの身に、なんらかの異変が起きている――。
「……ごめん、ここをお願い!」
フラメルは立ちあがった。
自分が行かなければならない。
彼を救えるのは、自分しかいない。
そんな予感がした。
「何……これ……」
フラメルがたどり着いた戦場で目にしたのは、地獄のような光景だった。
黒く禍々しいオーラを全身から立ち上らせたクレストが、その中心に立っている。
「う……ああ……」
「ぐ……おお……」
帝国兵も王国兵も関係なく、苦悶の表情を浮かべて倒れていく。
まるで生命そのものを根こそぎ吸い取られているようだった。
「おやめください、殿下! その力は味方まで……!」
ドルファ将軍が悲痛な顔で叫ぶ。
だが、今のクレストには届いていない様子だ。
「クレストくん……!」
彼の瞳は虚ろで、焦点が合っていなかった。
「クレストくん、しっかりして!」
フラメルは彼の元に駆け寄った。
何が原因かは分からないが、どうやら彼の【魔眼】が暴走しているらしかった。
おそらく以前に【雷光】のテスタロッサと戦った時に使った【吸収の魔眼】――あの能力で、魔力だけではなく生命力まで吸い取っているのではないだろうか。
敵も、味方も、おかまいなしに――。
「君の力がみんなを傷つけているのよ! もうやめて!」
必死で呼びかけ続けると、クレストの虚ろな瞳がわずかに揺れた。
「クレストくん!」
「ぐ……ううっ……ち、違う、僕は……アレ……ス……」
黒騎士の少年がうめいた。
「えっ……?」
「クレスト……じゃ……ない……僕は……メルディアの……王子……!」
「な、何を……言って……?」
フラメルは呆然とした。
確かに『アレス』という名の王子はメルディア王国にいたはずだ。
半年ほど前、何かの罪で処刑されたと聞いているが――。
なぜクレストが、その名を口にするのか……?
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