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25 暴走

「ぐっ……ううっ……」


 魔力が僕の中に際限なく吸収されていく。


 体が、熱い。


 内側から爆裂しそうな感覚がある。


 まずい、これ以上吸い込み続けたら――僕の体が破壊される!


「し、鎮まれぇっ……!」


 必死で念じるが、【吸収の魔眼】は発動を止めてくれなかった。


 どうやら完全に暴走状態で制御できなくなっているらしい。


「ぐ……おおぉぉ……ぉぉおおおおっ!」


 僕はあふれ出すエネルギーに突き動かされるように飛び出した。


 どんっ!


 自分でも驚くほどの――異常な速度で突進する。


「なっ……!?」


 ウェインガイルが驚きの声を上げた。


「ちいっ!」


 僕を近づけさせまいと無数の火球を放ってくる。


 今までなら、この弾幕から逃れるだけで精いっぱいだった。


 けれど、今の僕は違う。


 先ほどを圧する速度で無数の火球の隙間をかいくぐり、さらに加速してウェインガイルに肉薄する。


 単純な脚力だけじゃない、反応速度自体が大幅に上昇しているのだ。


 ざんっ!


 僕の剣が、彼の左腕を肩から両断した。


「ぐあああっ……」


 鮮血を噴き出しながら、ウェインガイルは大きく後退する。


「は、速すぎる――動きが、み、見えん……!」

「はあ、はあ、はあ……お、終わりだ……っ!」


 僕は息を荒げながらふたたび近づいた。

 と――、


「ウェインガイル様は討たせん!」

「あなたは王国にとって希望となる戦力! 俺たちの命に代えても守ります!」


 王国の兵士たちがウェインガイルを守るように、僕の前に壁となって立ちはだかった。


「お前たち……!」


 ウェインガイルが驚いたように部下たちを見る。


 その姿から、彼が部下たちに深く慕われていることが分かる。


 実際、僕が『アレス』だったころ、彼は部下の面倒見がよく、多くの者に慕われているという評判は聞いたことがある。

 だけど――、


「僕だって……引き下がれないんだ……っ!」


 兵士たちを容赦なく斬り捨て、その壁をこじ開けていく。


 狙うはウェインガイルただ一人。


 六神将である彼を討てば、王国軍は総崩れだ。


「この戦いも、終わる――」


 どんっ……!


 そんな僕の想いに呼応するように、両目に宿る熱がさらに増した。


「う……ああああああああああああああああっ……!?」


【吸収の魔眼】が、おかしい――?


「ぐあっ……」

「ううっ……」

「がはっ……」


 周囲の兵士たちが勝手に倒れ始めた。


「これは……!?」


 僕は呆然とその光景を見つめた。


 まさか……魔力だけじゃなく、生命力まで【吸収】し始めている……!?


 しかも、倒れていくのは帝国兵だけじゃない。


 その向こうにいる王国兵までもが――。


「で、殿下!? あなたの力ですか、これは!? おやめください!」


 ドルファの叫び声が聞こえた。


 けれど、僕自身にも【魔眼】の暴走が止められない。


 圧倒的な力が僕の中に入り込み、僕自身を飲みこんでいくような感覚。


 だんだんと意識が薄れ、混濁していく――。

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