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22 要塞都市レイガルド防衛戦3

「作戦がまとまったところで……一つ聞きたいことがある」


 僕は少し声を潜め、話題を変えた。


「この都市に古い『研究施設』はないか? 皇族に関わる施設のようだけど――」

「……殿下、なぜそれを」


 ドルファの顔から表情が消えた。


 重苦しい沈黙が流れる。


「何か知っているのか?」


 僕は重ねてたずねた。


 またも、重苦しい沈黙。


 触れてはいけないものに触れてしまった――そんな雰囲気だ。


「教えてくれ」


 僕は身を乗り出して問いかけた。


「僕にとって、すごく大切なことかもしれないんだ」

「殿下……」


 ドルファは何かを察したように僕をしばらく見つめていた。


 それから深いため息をつく。


「……何やら、深い事情がおありのご様子ですな。これは……本来なら、たとえ殿下であってもお教えいたしかねる最高機密ですが――」


 ドルファはそう前置きした。


「あなたはレイガルド陥落の危機を救ってくださった。この恩義に報いるとしましょう」

「……ありがとう、将軍」


 僕は頭を下げる。


「そこは先帝陛下より『禁忌区域』と指定された施設です。都市の北西区画にありますが、今は近づく者は一人もいません。呪われているという噂が絶えない場所でしてな」

「呪われている……か」


 その言葉が、妙に胸に引っかかった。


「魔が生まれる場所だ、と聞いたことがあります」


 魔が――?


 僕は眉を寄せた、そのときだった。


 ごおおおおおお……っ!


 建物全体が激しく揺れ、轟音が響き渡る。


 天井から、ぱらぱらと砂塵が降り注いだ。


「これは――」

「この揺れは……まさか!」


 僕とドルファは顔を見合わせ、同時に司令官室の外へと駆け出した。




 外に出ると、夜空が赤く照らされているのが見えた。


 空から巨大な火球が次々に降り注ぎ、要塞のあちこちで炸裂していく。


 ウェインガイルの本隊による、要塞都市への総攻撃が始まったのだ。


「クレストくん!」


 救護所から飛び出してきたフラメルが僕らに合流した。


「ウェインガイルの総攻撃が始まったようです。姉上は引き続き負傷兵の治癒を。これから負傷者がもっと増えることが予想されますので――」

「こちらの救護兵も総動員しましょう」


 僕の言葉にドルファが提言した。


「分かった。じゃあ、あたしが救護兵たちを指揮して、負傷者の治癒に当たるね。許可をいただけるかな、将軍?」

「無論です。【癒しの聖女】フラメル殿下が中心になっていただければ、これほど心強いことはありません」


 ドルファがニヤリと笑う。


「じゃあ、救護関係はあたしに任せて。クレストくんは――」

「敵を討ちます」


 僕は彼女をまっすぐ見つめた。


「ん。信じてるからね」


 フラメルが優しげな笑みを浮かべた。


 その笑顔には僕への信頼があふれているように思えた。


「姉上――」


 僕は、あなたを疑ったのに……。


 僕の力を利用しようとしている黒幕かもしれないと、そう考えてしまったのに……。


 彼女は、そんな僕の葛藤など知らないかのように、ただ純粋な信頼を向けてくれている。


「――行こうか。将軍」


 僕は感傷を振り切り、ドルファに言った。




 僕とドルファは要塞の正門前に出た。


 要塞の守備部隊およそ五百を伴って。


 空から降り注ぐいくつもの火球が、要塞のあちこちに着弾して爆発を起こしている。


 爆風と衝撃波がこの辺りにも吹き荒れていた。


「これだけの規模の火炎魔法なら、大量の魔力を消費するでしょう。この爆撃は、長くは続かないはずです」


 ドルファが言った。


 さすがに歴戦の猛将だけあって冷静に戦況を分析している。


「狙うは、攻撃が途切れたとき――」

「いや、その間にも要塞都市への被害は続く。ここは即座に攻撃を止める」


 僕がドルファに反論した。


「はっ? しかし、これだけの大火力の攻撃魔法は要塞の対魔法防御をもってしても防ぐことは困難ですぞ」

「今から僕が火炎魔法の『消去』を試す。成功した場合は全軍突撃――いけるか?」

「クレスト殿下……!?」


 ドルファは信じられないものを見るような目で僕を見つめる。


「敵軍は自分たちの攻撃魔法がいきなり消去され、無効化されるとは予想していないはず。その虚を突くんだ」

「――承知いたしました」


 将軍はしばらくの黙考の後、力強くうなずいた。


「殿下を信じます」

「ああ。ただし、確実に成功するとは限らない。状況をよく見ていてほしい」


 僕は彼に説明する。


「歴戦の猛者であるあなたの判断なら信頼できる。頼んだ」

「はっ!」


 ドルファとその背後の騎士、魔術師たちが直立不動で敬礼した。


「殿下のご武運をお祈りいたします!」

「ありがとう。行ってくる」


 言って僕は駆けだした。


 夜空には、相変わらずいくつもの巨大な火球――おそらく直径十メートルは優に超えている――が、次々と放たれてくる。


「これだけの大規模破壊魔法を連発できるとは……王国にいたころから噂に聞いていたけど、大した奴だ」


 たとえ魔術師が数十人がかりで防御魔法を展開しても、あるいは要塞都市クラスの魔法防衛装置を使ったとしても、この威力を完全に防ぐことは難しいだろう。


「だけど、僕の【魔眼】なら――」


 巨大な火球が全部で六つ、要塞に向かっていく。


 そのすべてを同時に視界に捉え、僕は【吸収の魔眼】を発動した――。


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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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