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14 黒幕は誰だ

「姉上が本当に聞きたいのは、この【魔眼】のことですか?」


 僕が問いかけると、フラメルの表情が凍り付いた。


 どこか後ろめたそうな表情が、僕の疑念を増幅させる。




 ――黒幕は、誰だ?




 先ほど考えていたことを思い起こす。


 アレス・メルディアだったころの僕を処刑に追い込み、クレスト・ヴァールハイトとして転生させた存在。


 その目的も、正体も、何も分からない存在。


 黒幕――そう呼ぶしかない謎の人物。


 直感だけど、それは僕のごく近しい場所にいるような気がしていた。


 たとえば、僕と反目するジークハルトか?


 ゲルダやレミーゼか?

 それとも――。


 僕は目の前にいる美しい姉をあらためて見つめた。


 フラメルの行動は、あまりにもタイミングがよすぎる……そんな疑念があった。


 僕が半年ぶりに戻ってきた直後に現れ、謁見で孤立した僕に寄り添ったこと。


 彼女の優しさは、僕を懐柔するための演技かもしれない。


 僕を監視するための策略かもしれない。


 ……いや、そんなはずはない。


 戦場で見たフラメルの涙は本物だった。


 僕をかばってくれた言葉も、心からのものに聞こえた。


 できれば……この人だけは信じたい。


 そう思いながらも、僕の心は千々に乱れた。


 兄姉の讒言によって処刑された前世の記憶が邪魔をして、他者を簡単に信じることができない。


「……姉上まで、ジークハルト兄上やゲルダのように、僕の力を不気味なものだと疑っているのですか?」


 僕はフラメルをにらんだ。


「違うよ! クレストくん、そんなふうに受け取らないで!」


 フラメルは泣きそうな顔になって叫んだ。


 その顔を見て、心が痛む。


 彼女は他者を思いやれる優しい人だ。


 そう見えるし、そう信じたい。


 なのに、僕は――。


「あたしはただ……心配だったの。半年ぶりに戻ってきた君が、以前とは違って見えたから。【魔眼】のことじゃなく、雰囲気とかいろいろと……」


 フラメルは悲しげにうつむいたまま言った。


「もしかしたら、この半年の間に何かがあって……君が悩みを抱え込んでいるのかもしれない。そう思ったの。【魔眼】が、その原因になっているのかもしれない……そう考えたから、あたしは」

「【魔眼】のことを聞こうと考えた――そういうことですか」


 話の筋道は通っている、気がする。


 とはいえ、僕はもう誰かを簡単に信じることはできない。


 どこまでが演技で、どこからが真実なのか。


 判断する材料は何もない。


「信じてくれたら、嬉しいな」

「根拠もなく人を信じられるほど、僕は純粋じゃない」


 顔を上げて微笑んだフラメルに、僕は即答した。


「――!」


 彼女はショックを受けたような顔になる。


「あたしは、本当に君の力になりたいだけだよ。この城で、あたしが心を許せるのは君だけだから……あたしを姉として認めてくれたのはクレストくんだけだったから……」

「心を許せる――ですか」


 僕は眉根を寄せてつぶやいた。


 なぜ僕だけに?


 その特別扱いは、僕が黒幕にとって重要な駒だからではないのか?


 疑念が、信じたいという気持ちを覆い尽くしていく。


 ――そのときだった。


 コン、コン、というノックの音が張り詰めた空気を破った。


「クレスト殿下、お話し中に失礼いたします」


 執事の声が扉の向こうから響く。


「皇帝陛下より緊急の御召集でございます。フラメル殿下もご一緒に、ただちに謁見の間へとお越しいただきたいとのことです」


 皇帝からの、招集……?


「――分かった。すぐに行く」


 言って、僕はフラメルを見た。


「じゃあ、一緒に行きましょう」


 告げたフラメルの声は、常ならず硬かった。


 僕らの間には――明らかに壁ができていた。




 帝城、謁見の間。


 僕らが急いで駆け付けると、皇帝はすぐに人払いをして、その場は三人だけになった。


「夜分に急な呼び出し、すまんな。だが事態は一刻を争う。お前たち二人に緊急の勅命を下す」


 言いながら、皇帝が僕らの前に歩み寄る。


「緊急の勅命……?」

「たった今、急報が入ったのだ。メルディア六神将の一人、【烈火】のウェインガイルが東部地方の要塞都市レイガルドを攻め立てている。すさまじい火力によって、既に陥落寸前だという――」


 皇帝の表情は険しい。


【烈火】のウェインガイル――。


 メルディアの六神将の中でも最大の攻撃力を誇る魔術師だ。


「お前たちも知っての通り、レイガルドは帝都に通じる道を守る要だ。あそこを落とされると、一気に帝都まで攻めこまれる危険が出てくる。絶対に攻め落とさせてはならん」

「承知しました、陛下。出撃いたします」


 僕は皇帝に即答した。


「うむ。フラメルも頼むぞ。こたびの戦、今まで以上にお前たち二人の連携にかかっている」

「肝に銘じます、陛下」


 言いながら、フラメルは僕をチラリと見た。


 僕の方は思わず視線をそらしてしまう。


 フラメルとの連携、か。


 よりによって、こんなふうに彼女との仲がこじれているときに……。


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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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