ある日、ある宿屋の二人組
かつて、この世界で名を馳せた”賢帝”アスタロト。
彼は一代で傾いていた財政を立て直し、現代に合わせて法律を一新し、”廃退”の国とまで呼ばれていたその国を他国に劣らないまでに国力を取り戻させた。
それだけでなく、後世を担う若者への教育を忘れることなく、教育者や商人、政治家など多くの人材の育成にも力を入れた。
他国との貿易・交易も欠かさず、その行動力は他国の国の主も舌を巻く程。
そんな彼は――
「「かんぱーーーい!!」」
『共犯者』と二人、ある宿屋で呑み明かしていた。
「っっっあ゛ーーー!!たまんねえなオイ!」
「うまくいったねぇ、さすがアズくん!」
瓶に直接口をつけて酒を飲み、ゲラゲラと下品に笑うそのサマは、とても一国を治めた者の姿とは思えない。安い酒場に集まった荒くれ者と言われたほうがまだ納得できる。
「どいつもこいつも騙されやがって、バカがよお!」
「いや、でも、パッと見だとやっぱり賢帝なんだよねアズくんって」
「あ゛?」
「ごめんなさい」
急に機嫌が悪くなった彼につまみを差し出せば、ふんっと鼻を鳴らしてパクリと食べ、酒をあおる。
「為政者がわざわざ、時間をかけて、あんなことするなんざ、……理由は一つだけだろうが」
嘲るように笑って、腕を大きく上に掲げてのびをする。そしてそのまま大あくび。好き勝手騒いだら眠くなってきたらしい。
「これでやっと、あんなめんどくさい政治をやらなくて済む!!」