気の所為
俺が学校でも図書館でも何処でもいいんだけど出かけてそこからの帰り道、何時も何かがついて来るんだ。
小学生の頃っていうか、10歳頃までは帰り道について来るのは犬や猫などの動物が多かった
犬や猫以外にも、学校の裏山を住処にしている狐や狸なんかがついて来た事もある。
狐や狸など野生動物は飯を喰わせてから両親が車で学校の裏山に放しに行き、首輪がついていたり毛並みが整えられていて明らかに飼われていると思われる犬や猫は、近所の動物病院の先生の力を借りて飼い主を特定し返しに行く。
中には数日前から行方不明になっていた飼い犬や飼い猫もいて、飼い主さんのところに連れて行くと逆に感謝される事もある。
でも一番多い野良犬や野良猫は捨てて来る訳にもいかず、動物病院の先生の好意で格安で避妊手術をしてもらい家の子になった。
だから家にはそれぞれ100匹近い犬や猫がいて、家の田んぼや畑の周りを気ままに走り回っている。
餌代が大変だろうってよく言われるけど、家は農家だし彼ら俺について来た犬や猫それに狐や狸には、感謝する出来事があったんだ。
俺の妹が変質者に拉致されそうになった時、家で飼われている犬や猫だけで無く俺について来た事がある動物たちが群がり集まり、変質者を半殺しの目に合わせて撃退した。
付け加えるとそれを目撃していた、んー違うな、目撃してしまった、近所の飼い犬を虐待しているのではと噂があった小父さんが、飼い犬を大事にするようになったらしい。
それで、10歳を過ぎ15〜6歳頃まで帰り道について来るのは人が多くなった。
迷子、道に迷った観光客、痴呆のお婆ちゃんやお爺ちゃんなど。
迷子や痴呆のお年寄りはついて来ていると分かったら、直ぐに警察に連絡。
道に迷った観光客の場合は、飼い犬の大部分と飼い猫の一部を連れて散歩に連れて行っている時に遭遇する確率が高く、観光客は道を聞きたくても犬や猫が邪魔で聞けないため大抵の場合家までついて来て聞いてくる。
15〜6歳を過ぎ20歳頃までって言っても去年までの事なんだけど、犬や猫などの動物や人に加えて、霊が帰り道について来る事が多くなった。
街の中を彷徨いていた浮遊霊や地縛霊だけで無く、遠くに見える山などで遭難死した人の霊もついて来るようになる。
霊は除霊師として有名な菩提寺の和尚様にお願いして、成仏させてあの世に旅立ってもらう。
20歳過ぎてからは、動物や人や霊なんて可愛いもんだと言えるものがついて来るようになる。
20歳になって最初の春について来たのは、家族旅行で地球を訪れていたエイリアンの子供。
親と逸れて途方にくれていた迷子だった。
去年までよくついて来ていた霊たちのお陰で、俺を含め家の家族は全員異質なものに耐性が出来ていて、迷子のエイリアンを歓待する。
親のエイリアンが彼を見つけて引き取りに来た頃には家の食事に慣れ、婆ちゃんが鍋いっぱいに作ったイナゴの佃煮をお土産として持って帰ったくらいだ。
エイリアンを保護していた事を何故かC国が嗅ぎつけ、政府にイチャモンをつけたらしいんだけど、エイリアンが帰り際C国を恫喝して格の違いを見せつけ有耶無耶になったらしい。
そして今、俺と言うか家の周り半径10キロ殆どの上空は青空が広がっている。
その周りでは風か吹き荒れ土砂降りの雨が降っているっていうのに。
そう、台風がついて来てしまい家にいる俺の頭上で停滞しているんだ。
俺のスマホには次々とメールや電話が着信している。
全部苦情のメールや電話。
殆どが、人の迷惑にならない太平洋の海上に移動しろって内容。
うん、俺もそう思う。
海上に移動する足が到着するのを待っているんだ。
台風が家の上に停滞してから家に石を投げ込もうとする輩が多数現れたけど、全部排除されている。
排除してくれて家を守ってくれている警備員を派遣してくれたのは、俺について来た痴呆のお年寄りや成仏させた霊の家族。
大金持ちの痴呆のお年寄りが突然覚醒して、家族に俺の家に警備員を派遣するように指示を出したり。
政府与党の大物議員の枕元に霊が立ち、恩を仇で返すなと説教されたりしたらしい。
ついて来たものたちが俺や家族が感謝する事をしてくれるのはありがたい事だとは思うんだ。
だけど、段々事が大きくなって行くように思うんだが、気の所為だろうか?