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1―5・裏側と懇願

 


 全てに絶望し

人生を終わらせようと向かった線路で見知らぬ

謎の少女に声かけられ、連れて来られたのは、葬儀屋だった。




 思い詰めた人々を更生させるという

念の葬儀者で自分は更生者ターゲットにされ、

希死念慮から抜け出す事が提案された。

 




………………どうしてこうなったのだろう。




「では、貴方の個人情報をクライシスホーム名簿に入れて行きますね」



 そんな中、風花が席を外してから、

フィーアと名乗る少女と二人きりになってしまった時

圭介は恐縮しながらも、フィーアの言葉の真意が気になる。





 フィーアからの一言から、

拍子抜けするばかりだったが後々考えれば正論だった。

 

 祖父母から下された大学に進学した代わりの仕送りは

大学の学費だけのもの。情けの為にある生活費は微々たるものだ。

基本的には切り詰めた生活を送っている。


 アルバイトでも始めないと思っていた矢先の事だった。



しかし機密の会社故に口は堅くする様に言われたのは覚えている。







「あの………“先程の事は、全て嘘にしてほしい”というのは」


「それですか」



 一度、圭介を見詰めた後に何処か薄幸な表情を浮かべ

神妙な面持ちにフィーアに、圭介は息を飲む。




「表向きは葬儀屋の職員として採用させて貰いますが

長野さん此処に来られた理由は、私の発言が要因かと思います」

「……………なにを?」



 神秘的な深紅の瞳に、少し緊張し息を呑む。



「本来の貴方のお役目は葬儀屋の社員ではなく、

風花の_____“監視人兼教育係”です」

「え?」




 圭介は拍子抜けする。






(“監視人兼教育係”?)






 即ち、あの少女の監視、教育をするという事。

だが、それなら目の前の少女が姉の様な存在ではないか。




「なら貴女が………居るじゃないですか?」




 恐る恐る反論を返してみると、

フィーアは一瞬だけ目を丸くして、後に目を伏せた。

まだあどけなさが残る神秘的な美貌は、綺麗で言葉を失ってしまった。


 何処かしら、

辛辣みが混ざる声音は、相手に好きを与えない。





「確かに私は、一緒に暮らしていて

一見、そんな役割りの様に見える人間でしょうが

そうではありません。それではまだ足りないのです。



 現に今、もうその役割りの人間が一人居るのですが

その人だと滅茶苦茶になって………何より風花が苦手意識を持っています。




 入ってきたばかりの見知らぬ人。

新参者の長野さんなら、大丈夫だと思うのです。

誰でもない“私”からの提案であり要望で、風花を守る役割が欲しかったので。


長野さんは、職員ではなく、

あの子のボディーガードだと解釈して頂ければ」






 フィーアの個人的な提案なのか。

何故、こんな提案をするのか。

にしては初日から情報網が、色々と有りすぎやしないか。




 そもそも年頃の

自立した少女の監視人だなんて、何故、必要なのだろうか。




「その………どうして監視人兼教育係が居るのです?」

「それは……まあこれから見て納得されると思いますが、

それは御自分でご確認下さい。


 最初に種明かしをしてしまったら、

面白くないのと同じです。


 ただ、あの子は淡々と仕事をこなすだけで、

人慣れもしていない、人間的教育をビシバシとして下さる方を捜していた…………それだけです」



 辛辣の面持ちが威厳を成り立たせる。

彼女はその言葉を具体化したような、人間だった。 



 まるで懇願する様な眼差しと面持ちを送られ色々と考えた後に

フィーアの頼みに、圭介は断れなくなる。




「分かりました。受け入れます」




 そう告げると彼女の表情は、晴れ晴れとした。



「ありがとうございます。……お願いしますね。

あとこの件は風花の耳には入れないで欲しいです」




 ミステリアスな雰囲気の、不思議な少女。


そんな表向きのフィーアからの事情を聞いて

まだ何かあると思うが、聞かない方が良いのだろう。

 圭介はフィーアの願いを承諾した。



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