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1―4・衝撃的な裏側




 この上品で丁重な少女は、

あちらのミステリアスな唐突的な少女とは違い好意的そうだ。


 フィーアと名乗った少女は

圭介と風花の顔色と表情を見比べてから、真面目に言葉を紡ぐ。




「なんだか困惑している様に見えます。


その………………突然、私語を挟んで申し訳無いのですが、

貴方を連れてきた“風花”から聞いたことはありますか?」




 困惑して物腰低く、伺ってくる少女。

どうやら自身を此処まで連れてきた少女は、風花というらしい。


 今まで最小限の事しか話さなかったせいか、

ミステリアスな印象しか知らず、当たり前だが

少女の事は全然何も知らない。


 圭介は、フィーアという少女の方へ視線を向けると




「いえ………葬儀屋の方とお聞きして驚いたばかりで……」

「それだけですか? 他には?」

「……特には」




 そう答えれば、フィーアは唖然とする。

そして風花という少女の方へ険しい、(いぶかし)しげ視線を向けてから



「…………風花。貴女って人は……………」




と悲観した。

それは雑談の様な、相手を嗜める様な、優しい口調。








(___俺は、何しに来たんだろうか)






 そんな疑問を持ちながら、圭介は

机を挟んで向こうは風花とフィーアが対面する形となった。


 まるで試験の面接を受けにきたかの様だ。

見知らぬ少女達に監視されているせいか、自然と自棄(やけ)に緊張する。








「とりあえず

遅くなりましたけれど自己紹介させて貰いますね。


貴方と一緒にきたこの子は、北條風花(ほうじょうふうか)と申します。

この組織の責任者、会社の立ち位置では、社長となります」




 北條 風花____それが此処まで圭介を連れてきた少女の名。

彼女は無愛想かつ真顔のままで何も語らず、

ノートを広げペンを持ち、俯いている。




 フィーアは慣れているのか

怜悧的な冷めた眼差しを彼女に送っている。

そして圭介の方へ真っ直ぐ、迷いのない視線を向けると




「先程申しましたが、改めまして

私はフィーア・トランディーユと申します。


私の役職ですが、

主にこのクライシスホームの責任者であり

トップ・北條風花の補佐兼助手をしております。

どうぞ、よろしくお願い致します。




 今から始まるのは面接だと思ってくださいね。

簡単に我々の会社の事を。そして貴方の経緯を

お聞かせて下さい」



 そう言って、朗らかに補佐兼助手の少女は微笑んだ。













 フィーアが言うには、

名家である北條家という一族が経営しているのが、

この代々続く葬儀屋だという。


 それも事実だが

このクライシスホームは、北條家と業務提携しているが

元々は北條家から独立して北條風花が独自に起業した子会社。



 思い詰め、追い込まれた人を

捕まえて相談所も兼ねている場所だという。



 そして圭介を止め、此処まで連れて来た風花は

人生を諦め、絶ろうとする人間を見つけて(いざな)う人間だそうだ。



その面接と"ある事"で

自殺願望者をどうするかというのを考える。

…………らしい。







 どうやら自身の事を話すまで解放してくれなさそうだ。

少女二人に見張られ逃げ場がないと悟った圭介は、

全てに、降参した。






 圭介は己の素性を全て話した。洗いざらい全てを。

その話をフィーアが真剣に聞き、隣にいる風花は


それらを一切、何も語らずに、

圭介の経緯をただノートに書き記していく。

そして席を離れて、フィーアという少女と取り残された。




「そうですか」

「…………」




 フィーアは、一通り話を聞いてから視線を伏せて言う。






「こう告げるのは、とても忍びないのですけれど……。

長野さん。今までの事は嘘だと思って下さい」

「はい?」



「自殺も罪のひとつ。

短時間、此処で時間を過ごし、自分を見つめ直す機会を与える場。

やっぱり、風花の見る目は長けていた様です。

今回の更生者ターゲットは貴方だった。


…………本来の意味は、この筋書きで成り立っています。

正規に職員を雇用する術は難しいので、“命の繋ぎ”として



 ただ、これから

此処の現状を見詰めて考えを変える力があるかと。

貴方はどちらかと言うと職員の方に向いていると思います」






「こう告げるのは、とても忍びないのですけれど……。

長野さん。今までの事は嘘だと思って下さい」

「…………はい?」





フィーアの言葉に、圭介は拍子抜けした。




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