5ー12・疑心
ウェーブのかかった髪を丁重に解かしていく。
同居人の少女の髪に櫛を通しながら、
風花はジェシカとの会話で浮かんだ言葉が気がかりになっていた。
『_____娘さん、どんな人だったの?』
『そうね__物静かでだったけれど好奇心旺盛だったわ。
ただね。
体が弱くて心配が絶えなかった。
…………娘はね、アルビノだったの』
(………アルビノ?)
それは
今、自分が髪を解かしている少女と恐らく同じだ。
ジェシカの娘は生きていれば
風花と同じくらいの年頃に成長している筈で、
それも目の前にいる少女と一致しそうな気がする。
フィーアの年齢は不確かだが、表向き19歳になっている。
(あの話が正しく、本当ならば…………)
まさか。
一瞬そう思って、考えをかき消した。
(___フィーアが、ジェシカの娘?)
そんな
ジェシカの亡き娘は____
交通事故で父親と一緒に命を落とした筈だろう?
フィーアの生い立ちからも関係性は見られない。
それに二人は似ていない。
だが気にも留めないけれど、
アルビノの事やジェシカが娘と別れた時期が一致するのだ。
もしこんな偶然が、必然になってしまうのなら。
____本当ならば。
そう深く思い込みに浸っていた時、
ふと着信を告げる携帯端末に気付き、我に変える。
「……ごめんなさい、ちょっと失礼」
櫛を置いて、携帯端末を確認すると
着信は電話。相手は__長野 圭介だった。
どうしたのだろうかと思いながら、通話ボタンをスライド。
通話の形をを取る。
「はい」
『………風花、今大丈夫?』
「………なんとも。どうしたの?」
少女の声音が突き刺さった。
圭介は淡いランプ、その光りに手先を置きながら
視線を落とし、重くなった口を開いた。
『……暫く休暇が欲しいんだ。少し不都合な事が起きてさ』
「……それは構わないけれど」
『急にごめんなさい。有難う』
休暇が欲しい。
今はそうとしか言えないが事実。
少女が深く追及してこない事が幸いだった。
暫く休暇を取り都合が付いたら連絡する、と言ってから圭介は電話を打ち切った。
「………圭介さんから?」
「………うん。休暇が欲しいと。理由は言わなかった」
「そう。一体どうしたのかしら?」
無機質な機械音だけが、静寂な病室に響く。
圭介はソファーに横になると、どっと疲れという名の重さが
押し寄せてくる。思わず、目元に腕を置いた。
短期間で、色々と有り過ぎた。
否、最も今が自分にとっては面倒な事なのだろうと思う。
___ただ先が見えない事だけを除いては。
数話ミス
申し訳御座いません。