1―2・その言葉の意を知る
処は闇の世界だった。
照明のあったエレベーター内とは違い、一面に光りなどない暗闇の世界。
忙しなく点滅する表面が割れた『非常口』の緑の蛍光灯も光りが弱く
ほぼ壊れかけで、少女がいつの間にか
手に持っている懐中電灯の
明かりで移動しているのが今の現状だが、
圭介には少女の後を着いて行くのがやっとだった。
電灯の視野が小さくて狭い。
その上、少女が着ている服も全てが漆黒だったのもあり
淡い明かりと薄く伺える少女の華奢な身体の線を頼りで。
ゆっくりとエレベーターから降りて長い廊下を進み、
左へ曲がった時、ひとつのしっかりとした扉が伺えた。
扉に掲げられた木製の看板には『Crysis・Home』。
丁寧に書かれていた。……何かのお店だろうか。
けれどもクライシスの意味に気付いた時に、少女が纏う雰囲気や店の雰囲気で
此処に存在する意味が何処となく、理解出来た気がした。
けれど。
英語の意味を察すると、意味が意味故に訳が解る気がする。
少女がドアノブを回して、扉を開けた先には__________
青年が絶する情景が映っていた。
其処はまるで、
廃墟のような寂れた場所と空間で瓦礫が壊れ
削れて見るだけで無残な現場だった。
言葉で例えるならば、崩壊した園。
(______まさか……)
圭介の中である思いが脳裏に余儀った。
(……此処が最期の場所か?)
少女が言っていた、最期の場所。
それは此処なのだろうか。
訝しげ背を向け、目の前を歩く少女に尋ねてみる。
すると少女は____________……。
「最期。そう思う?
けれど残念。違うわ。もっと先。此処は単なる"初見"」
着いて来て。と少女は、振り返らぬまま、全てを言う。
圭介は言葉の意図は益々、分からなくなって来たがそんな中で気付いた。
一番突き当たりの、高い本棚があること。
ただそれだけがアンティーク調で唯一壊れず、綺麗に保存されている。
周りが荒んでいるせいか、その本棚だけが異様に浮いて見えた。
少女はその本棚の、側面のボタンを押す。
______その瞬間。
圭介は、目を見開いた。
高く重たいであろう本棚が突然にして、開く。
そして驚いたのは、その先にまだ闇の道があったからだ。
流石に元の感情を喪う程に
を願っていた己の願望がカラリと疑念が益々、浮かぶ。
そんな青年とは反対に、少女はようやく青年の方へ向き
闇の道へと招く様に片手を持ち上げて、言った。
「____________ようこそ、クライシス・ホームへ」
クライシス・ホーム。
つまり危機の家。
覚悟していた筈なのに、少女の据わった声音を聞いた時
何故か背筋が凍った様な感覚がした。
「……此処は…」
震えた声で問う。すると______。
「言ったでしょう? 最期の場所があると。
此処はその人々を迎える場所、即ち、葬儀屋です」
___葬儀屋。
彼女は葬儀屋の関係者だったのだ。
それを聞いて、圭介は本当に凍り着いた。