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5ー8・傷心を抉る悪魔

【警告】


台詞、物語の構成により

残酷な描写有。ご注意下さいませ。





風花に、

差し伸べられた手を受け取ってから暫く経った頃。

あの冬の事は今でも鮮明に記憶にある。


 事件は起こった。




 風花が、強姦された。


相手は使用人として働き出した若い男。

相手は元々、北條家のお嬢様___風花が目当てだったそうだ。


 確かに風花は美しく

深窓の令嬢の様な、儚く尊い雰囲気を持った薄幸の娘。



 傷心を抱えて生きている健気な少女を

そんな奴が、のうのうと無神経に。傷心に傷を増やしたのだ。





 きっかけは、些細な事だ。



 (最近、風花を見ない)


 可笑しいと思っていた。

フィーアの面倒は風花が面倒を見ているので、

嫌でも風花とは顔を合わす。


 けれどもここ最近はジェシカが

面倒を見に現れたという自点で、気付くべきだった。



 風花の教育係だと言うジェシカも優しく気さくな人柄で

時折、冗談交じりに風花の自身の事を話し、

二人だけの秘密事も増えてきたくらいだ。


 多少は打ち解けてきた相手にフィーアは赴くままに尋ねた。



「……風花は? 今、どうしているんですか?」








 風花は直ちに病院へ、運ばれた。






 相手は北條家側にによって、罰を受け解雇された。

警察も加わり、男は警察行きになったとも。



 フィーアは、心配で仕方がなかった。


 恐怖だっただろう。

自分の過去と反映して痛い程に風花の心情は

身に染みる程に解っている。フィーアも、相手の男が許せなかった。








「学校は今、休学しているの。今は念のための検査等で病院にいるわ」

「……そうですか」



 心配そうに肩を落とし項垂れるフィーアに

ジェシカは肩を叩き、微笑んだ。



「……フィーアは優しいわね。大丈夫よ、ただ…」





 “風花はね、強姦された時の記憶がないの”





 恐らくは精神的ショックだろうとのこと。

ジェシカの言葉に、フィーアは驚き、唖然とした。

ただ被害を受けた、という事実が彼女の記憶が飛んだのは、幸

それはいなのか。


 当事者の風花は、ただ茫然としているらしい。



 

 数日して帰宅したが、

彼女の姿は見る事はなかった。













 夜。

温かく整えられた布団。

突然、障子の向こう__廊下から足音が聞こえてきた。

瞬時に未だに護衛反応と警戒心が高鳴り、震えた。


誰だろうと身を竦めながら、フィーアは足音に警戒する。



 誰だろう。

自分自身の存在を知るのは、あの二人だけなのに。



 足音は近付き、

遂にフィーアの部屋の障子を開けた。

驚きと共に恐る恐る、障子の方へ視線を向けると

 

 フィーアはきょとんとする。




(…………風花?)



 月明りに照らされた陰。


 其処にに居たのは、

人形細工の綺麗な顔立ちをした華奢な少女。

けれど疲れきった表情をして、何処か窶れている。



 風花は片手には枕を持ち、此方をただ見詰めていたが。





「……フィーア、今日は此処で寝てもいい?」

「……え、ええ………」



 そうしか言えなかった。

ただでさえ、心に傷を追っているのに。

ただ忘れたらしい、とは言えど本当は覚えているのかも知れない。


 思い出したく無いから、忘れたと言っているのかも知れない。



 風花は、

フィーアの隣に布団を敷き、枕を置いて横になる。

背を向けたのは、きっと、月明りが見えるからだろう。



(…………)



 横たわるのは沈黙のみ。

会話なんて、思い付かないし__なんて声をかけるべきかも分からない。


(今はそっとしておくべきだ)


 風花はあまり馴れ合いの好まない。

ただ、仰向けのまま寝ているフィーアに対して、

 あちらは何度も寝返りを繰り返している。

記憶喪失とはいえ、潜在的なものがあって、眠れないのだろう。



「……あの」

「なんですか?」

「……そっちで寝てもいい?」



 ぽつりと呟かれた言葉に、フィーアは拍子抜けする。

孤高で潔癖症のお嬢様がどうしたのかと思ったが、

最近は事が事だった故に何かあるのかも知れない。



 二言返事で返すと漆黒の少女は、布団に入ってきた。



(……懐かしい)



 あの地下室に監禁されていた頃、

自身は年齢は解らなくとも、一番、年上だったらしい。

小さい子の面倒を良く見ていた事を思い出しながら、内心、微笑む。



 

 不意に、その事が重なった。



(まるで、妹みたい)



 場所は違えど、人は違えど。

素直に、そう思った。







【お詫び】

気分を害された読み手様 

謹んでお詫び申し上げます。


大変申し訳御座いませんでした。


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