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5ー7・法螺吹きの真相

【過激な描写有】


 台詞の中では、

一部、残酷描写がありますので

ご注意下さいませ。




フィーア。


 風花が助けた薄幸の少女。

彼女が北條家に来てから使用人によって強姦された?



 そんな事は、初耳だった。

彼女はただでさえ、過酷な人生を歩んできた。

牢獄に監禁され、日常的に暴力の生活の果てに、脚を失った。






「……暗い顔ですね。貴方も」

「………そうですかね」



 不意に下から湧いてきた声に、圭介は驚く。

仮眠室で、風花を眠らせて、戻ってきたのだという。


 視線を向けると普段の穏和な何処か違って、

何処か物憂い表情をしている少女が青年を見上げていた。



(………“貴方“も”?)


 一瞬だけ、少女が言った言葉に心の中で首を傾げた。

しかしその言葉の意味を尋ねていい状況ではなさそうだ。





「……何か、ありましたか?」

「……全然、そんな事は……ありましたね」



 フィーアは鋭い。

圭介ははぐらかそうとして、

無いと否定する筈が途中でそう肯定し言い淀んだ。

フィーアと居ても不思議と感じるのは場の雰囲気に沈黙が落ちないこと。






 自身の心で抱えていても燻るけれども、

疑念を抱えていては迷惑をかけるだけだ、と観念する。

 圭介は事の経緯を話した。





「……そうですか、あの、華鈴が」

「……はい」




 気不味く、圭介は頷く。

フィーアは冷静沈着に腹を据えていて、

また北條家のお嬢様が風花の対人関係に嫉妬して邪魔しに来たんだろうと想う。



 同い年にも関わらず

風花の精神年齢がかなり大人びているせいもあってか、

華鈴が余計に子供っぽく映って仕方がないのが、フィーアの本音だ。



 華鈴が風花に見せるのは嫉妬心という執着だけ。

端から見て大人げないというのか、聞く度に子供っぽく

浅はかで、彼女には軽蔑の念すら抱いた。


「華鈴の事ならば、吐き出した方が軽くなると思います。

虚言癖の胃もたれに悩まされても、時間の無駄ですから」



 フィーアは辛辣的に、怜悧にそう言い切った。





「……あの、フィーアさん。気になる事を言われたのですが」

「……ええ、どうぞ」



 華鈴に言われて、気になっていた事だ。


 けれど事が事。

それ故に彼女を刺激して傷付けてしまうだろう。

傷心を抱えているが故に、それは避けたいと口籠った圭介に、


何かを察したフィーアは言う。



「圭介さん。遠慮は無用ですよ。

華鈴に言われて何か、気になる事があったんでしょう?」

「………」



(………図星だ)


 フィーアは、全ての人の感情を見透かしている。

風花がいつしか呟いていた事を思い出す。

フィーアに嘘を付いても無駄だと。


 この少女には、隠せない。

圭介は腹を括り、躊躇いながらもフィーアに向けて口を開く。



「……予め謝ります。ごめんなさい。

この話はフィーアさんを傷付けてしまうだろうと思います。



…………あの、に言われたんです。風花を信用するなと。



勿論、あちらの言葉通りにするつもりはありません。

フィーアさんから任された風花の教育係兼監視人なんですから。

あちらが信じるなと言われても、僕は役職を全うしたいです」



フィーアは、圭介の言葉を聞いたが(やが)



「長い前置きですね」



とだけ言った。



「……圭介さんの心構えは良いものです。安心しました。

風花の味方で居てくれて役割を果たすのなら、

私は何も言う事はないのですから」



 フィーアの怖さは知っている。

もしも今、風花を裏切りを働いたとしたら、

彼女からは半殺しでは済まない程の怒りを受ける事になるだろう。



「………ただ、あの人に気になる事を言われました」

「ほう。その、気になる事とは?」



 フィーアは小首を傾ける。

圭介は躊躇いの後に、振り切って呟いた。




フィーアさんが………

北條家に来てから、強姦を受けたと聞きました」

「……………………」



 圭介の一言に固まっていたが

フィーアは口許に手を当て目を見開き、呆気に取られた顔をする。


 その瞬間、圭介は後悔した。

傷口に塩を塗る様な真似をしたも同然の事なのだ。




(やっぱり、口を出す事ではなかった)




 途端に流れる沈黙。

圭介は身を竦めていたが、フィーアは違った。





(___華鈴が、知っていたの?)




 驚きを隠せない。まさか。

ジェシカと自身しか知らない、あの事を吹き込むとは。


フィーアは唇を噛み締めた後で言った。



「………圭介さん、それは本当です」


「__じゃあ」

「……それは事実ですが、本当であって本当じゃない。

北條家にいた頃、強姦を受けたのは、私じゃありません」




 自身の過去と自然と照し合い、それが混じった。

監視役にジェシカがずっと寄り添っていたし、

フィーアの存在を北條家は知らない。


 けれども、これは自身が原因かも、知れなかった。



 辛い。自然と心が締め付けられる。




 けれど。話さないと。大切な事だ。






「………………強姦を受けたのは__私ではなく風花なんです」



 被害者はフィーアではない。風花の方だ。


 きっと華鈴は風花を蹴落とす為に、

自身が強姦されたと言ったのだろうが、違う。





 青年は、愕然として絶句した。




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