1―1・行く宛の果て
最初は、線路を眼の前にして
其処で"自分"の人生は終わり閉ざされる筈だった。そう思っていた。
きっとそうだと思っていた筈だったのに。
けれど。その計画は狂い、今____青年は、自分を止めた謎の少女の後を
行く宛も分からないままただ付いて歩いている。
________これは?
不意に事が浮かんで、疑問に思うのはこの少女の思惑はなんなんだろう。
しかし選んで付いて来てしまったからには、今更仕方ない。
そんな疑問は振り解き消して思考を止める。
この世から、もう消えたいと思った今、抗う事はしない。
寧ろ、煮るなり焼くなり好きにしてくれというのが圭介の心情だった。
どうにでもなれという気持ちで。何処へ行くかも分からない少女に着いていく。
夕陽はすっかり暮れて夜の帳に変わっていた。
けれど。
あの瞬間。手招きされた瞬間。何故か少女に引き寄せられた。
理由は分からない。無意識のうちにだ。気付けば、今に至る。
無情で存在感そのものも何も感じさせない少女が、
手招きをした瞬間から何かが変わった。
年齢は、10代くらいか。
長い真っ直ぐな黒髪。
背丈は高め、かなり華奢な体型。
飾らない顔立ちは見逃してしまいがちだけれど、
横顔は儚げさを伏せ持ち清楚で人形の様な整った美貌の持ち主。
線路から、だいぶ歩いただろうか。
出逢った瞬間から拍子抜けした少女に、誘われる様に連れて来られたのは
まだ建設されてそんなに時が経っていない様子のこじんまりとした
小さなビルだった。
中に入り、少女は持っていたカードキーを機械に通すと
一瞬でドアが開いて突き当たりのエレベーターに一緒に乗り込む。
『どうぞ』と手招き、言った少女に平謝りのように一瞬頭を下げてから同乗。
エレベーターに配置されたボタン____B1を押すと
エレベーターはそのまま一気に降下。要するに地下へと連れていくようだ。
一息ついた現状から、
其処で改めて気付くのは重い沈黙と包まれた静寂。
それは変えようの無い現状で、少女は最小限しか話さない。
近寄りがたい雰囲気から話しかけるのも躊躇を覚え、
また自身も話術に長けていないので押し黙っているだけだった。
『そう。貴方の決意は分かった。
『でも
私。誰も知らない此処よりも
"最期の場所"を知ってる。とても良いところ。
いなくなっても、誰にも見つからない。
良かったら、其処に案内しましょうか?』
少女は確かにそう言った。
あの言葉の意味は何を示して
そして少女は、自分自身をを何処へ連れていくつもりなのだろうか?
圭介と謎の少女を乗せたエレベーターの降下は止まらない。
疑問が次々と浮かぶ中で、少女は何も言わずにただ無言を通す。
軈て、チャイムの音が聞こえてB1へ着いたと
分かり、顔を上げると少女はエレベーターを出て行く。
其処から見えた世界に青年はただ驚いた。