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夜の女王

sideニュクス(夜の女王)


「……なんでここに居るの」


だるい身体を起こして壁に寄りかかりながら…アルバレンを見上げる。

アルバレンは私を見るなり顔色を変えてすぐそばに膝を着いた。


「大丈夫か、怪我をしたのか」


「骨折が数箇所。と、それで発熱中。で、なんでソーン()と一緒なの?」


「こいつがお前の周りを彷徨いていたからな。怪しいと思って殿下がカマをかけたらあっさりここまで案内してくれたわけだ」


ポーションを振りかけて回復魔法をぎこちなく使いながらソーン()を睨む彼には悪いが……彼が私を陥れた犯人では無いだろう。


というか、ソーン()が彷徨いていた訳でなく私から行ったわけだし。

だが、何故彼がここがわかったのか。

そう考えると……胸元で輝く薔薇が目に入った。


あー……このソーン()の魔力がめっちゃくっついたこれがマーキングにでもなったのかな。


これは隠密として致命的だ。今後貰うものには気をつけようと思いつつ、だるいけど手を上げてアルバレンの頭を軽く叩く。


ソーン()は貴方の考えてるような人じゃないよ。多分これで、偶然場所がわかっただけじゃない?」


「……何だこの、粘着質な魔力は」


「頑張って作ったらしいわよ。綺麗でしょ?」


アルバレンは薔薇のコサージュを気持ち悪そうに見てから、さらに私のことも気持ち悪そうに見てくる。


私らしくないことをしている自覚はあるけれど、その視線は流石に傷つくなあ。


「……ソーン()との関係性は、なんだ?俺たちのところにはソーン()ニュクス(夜の女王)を嗅ぎ回って、関わっていると報告が来ているが」


「……御令嬢に囲まれて困ってるから、助けてあげてるだけよ?」


「お前が!?お前が人を助けてるのか!?」


「……らしくない自覚はあるけれど、酷い言い草ね」


苦笑いを浮かべる私を見て、アルバレンは私の額に手を当ててほっとした顔をした。


「どうやら高熱にうなされているようだな」


「…妄言を放つ程じゃないわよ」


「やめておけ。考え無しで飛び出すような奴だ。こんな奴に関わったらすぐに陥れられるぞ」


「そうなんだけどねえ…」


本当にソーン()は貴族なんだろうか。

今も分かりやすく泣きそうな硬い表情で、その気持ちがとてもわかりやすい。


ダメだとわかっていても懐かれて悪い気はしない。

危険だと思っても、助けたいと思ってしまう。


そう、私の居場所を気取られるなんて危うすぎる失態を犯すほどには彼に絆されている。


「こいつのためにもやめておけ。お前の弱みだとバレたらすぐさま利用されるぞ」


女性にすらいいようにされて上手く抗えない彼が、政争をしている狸共を捌けるとは思えない。


思い切って、突き放すか

それとも、懐に抱き込むか


即答で切り捨てない時点で、既に結論は出ているようなものだ。


「……まさか殿下のおっしゃる通りだったとは…」


「あら、殿下はわかってらしたの?」


「ああ。囲い込む準備をしている。俺としては王女派の手先の線が濃厚だと思ったのだが……まさかお前をも落とすとは、さすがの色男だな」


さすが、と言いながら侮蔑の表情でソーン()を見ている。

……そうか、王女派かあ。

……初めっから、王女から彼を守ってるつもりだったけれど。うん。


王女にも、他の女性にも渡したくないねえ?


「おい、闇が溢れてるぞ。俺を殺す気か」


「そう簡単に殺されてくれる気は無いでしょ?」


「やめろ、恋愛なんぞにうつつを抜かす愚か者に成り下がる気か」


「…それも悪くないわね」


にこーと笑うと、アルバレンは心底気持ちが悪いと言った顔でこちらを見てくる。

そしてさすがに熱は下がらないものの……骨折の痛みはある程度引いた。治ってはいないけれどこれならば移動も何とか出来るだろう。


「気色悪いな」


「失礼ね」


「……さっさと戻ってこい。手放す気がないのなら、しっかりと手綱をつけて管理しろ」


「…人を篭絡するのは苦手分野なのだけれども、頑張ってみるわ」


アルバレンは早急に殿下に報告をし、ソーン()を取り込む準備をしたいのだろう。

足早に立ち去る彼を見送ってから……ふっと笑って認識阻害を解除する。


すると今まで不安そうな顔で待っていたソーン()は……赤い目がこぼれるんじゃないかってくらい、目を見開いた。


「落下の衝撃でポーションの瓶が全て割れてしまったので助かりました。良くここがわかりましたね?」


「…その、茨に聞いて」


ソーン()に助けられましたね」


微笑んでそう言えば…ソーン()はくしゃりと泣きそうな表情を浮かべて、私の傍に座り込んだ。


「迷惑、だったか……?」


「いいえ。ありがとうございますソーン()


泣かないで欲しい。そう思っていた手を伸ばして彼の金の髪を撫でながら……どうすれば彼の心を手に入れることが出来るのだろうかと考える。


だが泣かないで欲しいと思ったのに……ソーン()は「心配した、心配したんだぞ」と言いながらボロボロと涙をこぼし始めてしまった。


その綺麗な涙に、

私を心配する表情に


ーーーーー胸を貫かれるのを、はっきりと感じた。


「……大丈夫ですよソーン()


ボロボロな私を気遣って、触れてこないソーン()の手をぎゅっと握り


絶対に逃がさない。


そう、強く心に誓った。



本編では大して触れられなかったけれどニュクスの真の能力は闇に溶け込む、どこでも入り込めるようになることです。


お付き合いいただきありがとうございました。

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