4.
それでいいのぉ?と混乱していれば扉が豪快に開く音がした。
入ってきたのは国王達で、騒がしい空気に気付き眉をひそめた国王は何の騒ぎだと王太子を睨んだ。
しかし王太子は自信満々、堂々としていた。
「ラスピーヌを殺した犯人をここで裁いていたところです」
「また勝手なことを……今日この場はラスピーヌ嬢を偲ぶ場であって犯人を断罪する場ではない。ん?なぜここにレシフォーヌ嬢がいる」
「この悪女がラスピーヌを毒殺した犯人だからです!」
「はあ?」
あれ、王様はわたしが犯人だと思ってない?
少し期待したが控えていた男性がレシフォーヌを射殺さんばかりに睨み付けてくるので視線を下げた。多分ラスピーヌ様のお父様だろう。
「……して、なぜお前の隣にスカラファ嬢がいるんだ?」
「ラスピーヌが死んだ後、彼女が私を慰め癒してくれたのです。ナタシオン侯爵には申し訳ないのですが私は王族で早く身を固めなくてはなりません。
スカラファは元々王子妃候補でもありましたし、私の妻になっても申し分ないかと。
それにこんな美しいスカラファが私のために一生独身を貫くつもりだと聞かされては放っておくことなどできませんでした」
指を絡ませながら手を繋ぐ様は随分前から関係していたとか、淫らな関係なのだなとバラしてるようなものだけど二人が並ぶと清い関係にも見えるから不思議だ。
だがそれよりもジョケルド様はどこに消えたの?これでいいの?と目を走らせていると視界に人影が映った。
「父上。あの女、レシフォーヌとやらの処分ですが処刑するにあたりクロリーク家からの除籍、それと生意気にも婚約もしていたらしいのでそれも破棄でいいでしょうか?」
「待て待て待て。お前はどうしていつもことを急くのだ。落ち着いて大局を見よといつも言っているだろう?
それにレシフォーヌ嬢の婚約は余がとりなした政略だ。それに申し立てをするということは余が決めたことに異論があると言うのか?」
「いえ、そうではありません。あの女は大罪を犯した悪女。国のためにその政略もなかったことにした方が後々よろしいかと」
「ちょっといいか?」
顔もほぼ知らないご令嬢を殺害したのはレシフォーヌで決まりでいいですよね?とにこやかに言う王太子と、義姉が処刑されるかもしれないのににこやかに寄り添うスカラファ様。
並んで気づいたけどお互いの色のアクセサリーつけてるし服装もお揃いだった。ラスピーヌ様と同じ体型ならわかるけど……いやそれでも今日この場で着ていいものなの?
そんな本性だったんですかスカラファ様。と呆然としていたら両肩に手の重みと温かさを感じた。
見上げればさらりとした長い髪と誰かを彷彿とさせる顔。でも記憶よりもまた大人になっていて目を瞪った。見上げた角度からは男性の色香を感じさせる端正な顔立ちにドキリとした。
彼の通る魅惑的な声が広間に響き、視線が一気に集中する。中でも女性達からは息を呑む仕草や頬を染める顔が見えた。スカラファ様も違わず目を見開き頬を染めていた。
「可哀想に。令嬢に対して心無い仕打ちをした上に晒し者にしておくなんて……この国の者は随分と野蛮な者がいるのだな」
そう言って彼は強く縛ってあった手鎖を指を当てただけで意図も簡単に解いた。
代わりにお目見えしたのは場違いなほど光り輝く腕輪でそれを見た彼は眉目秀麗な顔を不快そうに歪めた。
「?他国の者か?だったら口を挟まないでもらおうか。これはオパルール王国の問題だ」
「これ!馬鹿者!!無礼なことを言うでない。この御方は地の精霊様であらせられるのだぞ!」
丁寧に話す彼に対して王太子の対応は失礼なほど冷ややかだ。助けに入った彼の身形は国の賓客、要人の雰囲気だ。
いくら王太子でも名乗りもせずに相手を軽く扱うのは危うい。
周りの声ですら「まあ、あの方が新しい?」、「道理で品格が違う」と同意と感嘆の声が聞こえてくる。王太子の発言は不適切に思われているだろう。
しかし王太子は国王に叱られても半信半疑なのか精霊である証拠を見せろと言っている。あ、カチンときたのがわかった。
「見せてやってもいいがその前に……国王よ」
「は、はい!」
「レシフォーヌがしているこの腕輪を、今すぐ、外せ」
地響きのような低い低い声に地震の揺れを感じた。それはわたしだけではなく広間にいた全員が混乱し悲鳴をあげている。
その地震は国王が「わ、わかった!外す!外しますから!」というまで続いた。
地震の揺れで窓にはヒビが入り何枚か割れたのか風がピューピューと音を鳴らしている。
壁は無事だが掛けられた絵画は軒並み落ちて割れていて、テーブルの上にあったものや花瓶などもすべて落ちて壊れていた。
あまりの長い揺れにまだ揺れてるような錯覚を覚え、しゃがみこんでいる貴族は既に疲労困憊の顔になっていた。
命令された従者がとんでもなく古めかしい書物を持ってくると、国王は長い呪文を躓きながらもすべて唱えた。
すると一瞬強く光り、そしてゴトン、と重い音と共にあのきらびやかな腕輪が落ちた。
「外れた…!」
今までどうやっても外れず、鍵穴もフックを探してもなくて途方に暮れていたのに!
軽くなった手首に感動していると、体を押し潰すような重みがパァッと飛散するようになくなり、足下から体の中を吸い尽くすような寒気に似たおぞましい感覚も消えた。
まるで背中に羽根が生えたかのような身軽さに驚き見上げるとレシフォーヌを見下ろす目と合った。その色は私がよく知っている瞳の色だ。
「どうだ?体の具合は」
「大丈夫、です。気だるさも気持ち悪さもないです」
彼の笑みに応えて微笑むと、彼は向き直り凍るような目つきで疲労困憊の国王を睨んだ。
「ご苦労、人族の国王よ。だが精霊の愛し子を呪い殺そうとした罪は重いぞ」
「え、呪い…?」
わたし、呪われてたの?!と驚けば黙ってろと手で口を閉じさせられた。
そして周りもざわりとした。
他種族を認知しているがオパルール王国は少々閉鎖的な国で人族のみの交流を推奨している。
しかし女神や精霊が特別だということはわかっていて国の維持、繁栄には欠かせない存在というのも知っていた。
そんな上位種族に愛された者が国内にいると知り、貴族達は色めきだった。
しかしそれと同時に手鎖をかけられ罪人としてさっきまで断罪されていた姿を眺め嘲笑っていた自分達を思い出し血の気が引いた。
精霊の愛し子はいるだけで国を繁栄させるがその者を悲しませたり傷つければ、精霊の怒りを買い国が破滅することもあるのだという。
それなのに国王自ら愛し子に呪いをかけ、王太子が処刑すると断じていたのを見ていた臣下達は青を通り越して白くなった。
――――この国、ヤバイのでは?と誰もが思った。
「そ、そんなつもりでは……ただ、レシフォーヌ嬢は人よりも多く魔力を持っていたので少し分けていただこうと」
「少し、だと?俺はレシフォーヌと契約していたからわかるが、彼女は一般的な魔力量しか持っていない。
その一般的な魔力量に対してお前が外すなと命令した腕輪は少しどころか精霊の姿が見えなくなるほどレシフォーヌの魔力を奪っていたというのに、それを少しだと抜かすか!」
声が銅鑼でも鳴らしたかのように空気を震わせ地面にも大きく響いた。その音に周りは耳を塞ぎ国王はひっくり返った。
「ヒィ!そんな!し、知らなかったのです!まさか、そ、そんなことになるとは…」
「知らなかっただと?外すなと事前に命令していたくせによくそんなたわけたことが言えるな!
……毎日だ。毎日それだけの量をレシフォーヌは奪われてきた。それが続けばどうなるかわかるか?
人の中に宿る魔力は無尽蔵に生まれるわけではない。どこかで限界が来る。
魔力で補えなくなれば生命力や寿命で補填するよう腕輪に組み込まれていた。
そのせいでレシフォーヌは魔法の授業で魔法が使えなくなり、目に見えるほど疲労しやすくなり衰弱していった。
だから俺は一度レシフォーヌとの契約を切り、成熟の儀を行うことにしたんだ」
「成熟の儀?」
「契約した精霊は契約主、つまりお前の魔力を少しずつ貰いながら成長する。
出逢った頃ならそれで問題なかったがその腕輪をつけた後はレシフォーヌの命を縮めるとわかって契約を切るしかなかった。
そして俺は成熟の儀を行うことにしたんだが……ようは大人になること。そしてこの地を治める精霊からその権限を譲り受けることが成熟の儀だ」
人と契約した精霊は大抵その者に寄り添い土地を治めることはないそうだ。しかし彼はレシフォーヌとの契約を切りオパルール王国地帯を治める精霊となった。らしい。
「グノー、なの?」
「正解。でもおせーっての」
雰囲気はそうなのだけど見た目がまた変わっていてちょっと自信がなかった。この地を治める精霊様になったからこんなに大人になったのかもしれない。
軽くデコピンしてきたグノーは指を鳴らすと泥と埃まみれだったレシフォーヌが綺麗になった。
髪を手櫛で整えもう一度見上げたがやはりどこか見慣れない雰囲気に反射で背けてしまった。
それをもう一度戻してお礼を言うと彼は嬉しそうに、綺麗に微笑んだ。
その笑みが見えてしまったご令嬢はうっとりとした溜め息を吐き、真正面で見ていたスカラファは信じられないものを見るかのように目を見開いていた。
「継承を終え、習わしだからと挨拶に来てみれば精霊の愛し子が人の子を毒殺したと?どんな茶番だ。
お前達はこの地を治める精霊王になった俺をおちょくっているのか?」
「いや、そ、そんなことはありません!」
「精霊は人の清らかな心を好む。お前達はレシフォーヌが人を恨み手を掛けるほど心が淀んでいると言っているのか?それは俺への侮辱でもあるがわかっているのか?」
「そんな、そんなことは一切なく!!そうだな、ブルコック!」
低頭している国王にどちらが上位なのかは誰が見てもわかるだろう。
精霊って昔から敬われてきたけどそんなに凄いんだと、それがグノーなのかぁ。グノーって精霊だったのかぁとずれたところでレシフォーヌは驚いていた。
「お前はさっき俺が本当に精霊なのか証明しろと言った者だな。……立場に胡座をかいた傲慢さが心にも顔にも出ている。
信用できていないならさっきの地震をこの王宮が壊れるまで続けてやるが証明はまだ必要か?」
「い、いえ、結構です!!十分に理解しました!」
王太子顔真っ青ですもんね。足もガクガク震えてるし。地震怖かったですよね。
「ふーん。だが精霊のことは目が曇っていてわからなかったにしても、客人に対してさっきの態度やレシフォーヌへの無礼は国の代表としてあり得ない言動ではないか?その申し開きはあるか?」
「し、知らぬとはいえ地の精霊様やレシフォーヌ嬢に失礼な態度をとりました!!心からお詫び申し上げます!」
グノーの脅し…制裁が効いたのか王太子はすんなり謝ってくれた。
土下座して謝らせるか?と聞いてくるグノーにそこまではいいと首を横に振った。王子様にそんなことをさせたら両親に怒られる。
「しかし、見れば見るほど……お前は本当にこの国の王子なのか?心が汚すぎて顔も姿も見られたものじゃないぞ。目が曇っているから鏡を見てもわからないのか?」
「…え?いや、あの、」
やめてあげてグノー。王太子様涙目になってる。
「は?こいつ王太子?次期国王??何かの間違いじゃないのか?……これだけ人間がいるのに何で器じゃない奴が王になるんだ。お前達の国だろう?おかしいと思わないのか?」
グノーに問われて何人かハッとした顔してるけど、そういうしきたりだから、と適当に説明しておいた。
「ふーん。まあいいけど。えーとお前、『王子』なんだよな?
黙って聞いていればレシフォーヌの言葉も聞かず、お前はおかしなことばかり並べてるからな。俺が代わりに話す。お前は正直に答えろ。
なぜ俺が加護をつけた皿を使わなかった?お前がこの国の王子なのだろう?まさか加護があるからと自信満々に毒味を下がらせたんじゃないよな?」
「それは、その……」
まさか毒がわかるようにしたのがグノーの加護のお陰とは知らず、一方的にレシフォーヌを罪人にした王太子は顔を真っ青にさせながら目を泳がせた。
さすがにもうレシフォーヌが盗んだとは言えないだろう。たとえレシフォーヌが持ち出したとしてもそれは『返してもらった』ということになる。
愛し子のための加護ならばグノーは皿をレシフォーヌに渡すだろう。レシフォーヌが望まなければ国王に献上する必要もなかったものだ。
その皿を盗み偽物の皿でレシフォーヌにとっては見ず知らずのご令嬢を毒殺するなどあるはずがない。
「そもそも王に献上されたはずの皿をなぜ王族でもない婚約者が使うんだ?普通は王子であるお前だろう?なぜ婚約者の令嬢がその皿を使えるんだ?」
「そ、それは…その…いずれは王族になるので」
言われてみればそうだ。なぜラスピーヌ様が使ったのだろう?いくら未来の王子妃とはいえ王子よりも優遇されるはずがない。
沈黙を保つ王太子達にグノーは呆れ混じりに溜め息を吐いた。
「お前達は狡猾だな。レシフォーヌを騙して同じ皿を作らせ、自分は加護がついた皿を使い婚約者には加護がない毒塗りの皿を使ったのだな。
そしてその罪をすべてレシフォーヌに擦り付けた」
「ち、違います!私は知らなかった!皿はレシフォ……いえ、スカラファが持ってきて〝揃ってる方が見た目が良いからこれを使って〟と渡してきたのです!!
毒が塗ってあるなんて知らなかったんだ!!」
「で、殿下?!」
まさかの王太子の告白にスカラファ様も声を荒げた。目を剥いた顔もそんな大きな声も初めて聞きました。
「ではオレッキアが彩った同じ皿が二枚、食卓に並んでいたのだな?」
「う……あ、はい」
ということは『誰かが』ではなく、『王子も』ラスピーヌ様の毒殺に加担したことになる。だってもう一枚に加護がついてるとは限らないから。
ラスピーヌ様のために毒味は必要だったのを王太子は下がらせてしまった。王太子が言うから不安でもラスピーヌ様は信用したのだろう。
それを聞いたナタシオン侯爵は血が上った赤黒い顔で、娘のラスピーヌ様をわざと危険に晒した王太子を殺気を込めて睨んでいた。
誰もいなければ腰に下げている剣を抜くか、震える拳を振るっていたかもしれない。
王太子の行動は軽率だったけどラスピーヌ様を亡き者にするつもりはなかったように見えた。
わたしに罪を擦り付けたのだっていきなりのことで動揺して自分が責められるのが怖かったせいかもしれない。
けれど他人を巻き込み犯人に仕立て上げ、嘘の供述まで作って周りを信じ込ませようとしたのはやりすぎだった。
王太子ともあろう方が率先して『コイツなら処刑してもなんの問題もないだろう』と罪を着せるなんて上に立つ者として一番やってはいけないものなんじゃないかな。
そしてそれはレシフォーヌを貶めようと一緒になって加担した人にも言えるだろう。
「わ、わたくしも知りませんでしたわ!わたくしはジョケルド様から殿下に渡すよう手渡されただけで!」
お前はどうなんだ?とグノーに睨まれたスカラファ様はやっとジョケルド様の名前を出してくれた。でもジョケルド様は何処にいるの?
「だそうだ。あー、……名前も知らないし知る気もないがレシフォーヌの周りをうろちょろしていた俗物眼鏡」
名前を呼ぶ気がないみたいだ。そういえば前に『俺は認めた奴の名前しか呼ばないし覚えない!』て言ってたけどこれはこれで不便そう。
レシフォーヌは忘れていたが、精霊が顔を知っているのに名前を聞かない覚えないというのはその者と盟約も交流もしないという明らかな拒絶を意味する。
レシフォーヌにしてきたことを思えば当然の結果だが、広大な土地を持つフィクスバール公爵領が精霊にそっぽを向かれるのはかなりの痛手だった。
しかもグノーはこの地を治める精霊王になっている。彼がひと言『この地を枯らしてやろう』と言うだけでこの国に住んでいる人間はたちまち黄泉の旅路へと向かうことになるだろう。
いち早くそれを察したフィクスバール公爵はサッと顔を青くした。
内心違うだろうと願い、でももし息子だったらどうしよう、最悪籍を抜かなくてはいけないかもしれない、そこまで考えた。
グノーが指をぐいっと動かすと人垣の中からずっと姿を見せなかったジョケルド様が飛ぶようにやって来て顔から転げ落ちた。
国王の後ろではフィクスバール公爵が絶望した顔になっている。
顔を上げたジョケルド様は眼鏡が割れ、鼻血を出していたが、それよりも腕の中にあったお皿を隠そうと布を何度も持ち直して失敗していた。
「おかしいな?一枚は王子が粉々に砕いた。もう一枚は国王に無断で借りたから早々に金庫に仕舞ったか?ならばこの皿はなんだろうな?」
「ブルコック!どういうことだ?!」
「ジョケルド!どういうことだ?!」
叫ぶ国王と王太子の声が重なった。しかし王太子はジョケルド様を睨み付けたまま王に答えず、ジョケルド様もまた沈黙を貫いた。
俯いていて顔はよく見えないが王太子を睨んでいるように思えた。
「石に叩きつけて壊そうとしたが壊れなかった…そうだな?
残念だったな薄汚れた心を持った俗物よ。俺が加護を与えたものは早々に壊れないんだ。そして何かあればすぐにわかる。
触れるに相応しくない者が盗んだことも、俺が認め加護を与えたその皿を何度も割ろうとしたこともな」
何度も、というところでジョケルド様の肩が揺れた。簡単に割れると思った物が割れず何度も試みたのだろう。
本当に割れないんだとレシフォーヌは驚いたが、他はグノーが加護を与えた貴重なものになんて罰当たりなことをしたのだと驚愕し、そして憤った。
お前のせいで此方にまで被害が及んだらどうするんだ?!と。この時点でフィクスバール公爵は石像と化して気配を消すことに専念した。
「それにな、」
指を器用に動かすとジョケルド様が隠そうと抱き締めていた皿をヒュッと引き抜き、レシフォーヌにも見せてくれた。
皿の波紋の形、オレッキアの彩り具合、焼き付けの色合いすべて記憶している。その皿と見事に合致していることを確認してグノーを見上げた。
「これが加護を貰ったお皿です」
「レシフォーヌは自分が作った作品はすべて覚えている。この皿の凄いところはどの料理も美しく魅せられるというところだ。
オレッキアは料理を際立たせる飾りにしか過ぎない。だがこの配置によっては料理は途端に不味くなる。そのバランスを綿密に計算し作り上げたのがレシフォーヌだ。
誰にでもできることじゃない。だから俺はこの皿が長く使えるよう加護を与えた」
そうだったんだ。『俺が認めてやったんだからありがたく受け取れ!』て言われた時は何を受け取るの?と思ったけど加護だったのか。
褒められて照れ臭いやら嬉しいやらで口をによによしていると頭をポンポンと撫でられた。こそばゆい。
「しかし、毒に反応する加護は余計だったな。そのせいでこいつらに取り上げられちまったし」
「そ、そんなことないよ!お陰で陛下の命を守ることが出来たし」
「レシフォーヌ嬢……」
活用してもらえるのは嬉しい!と訴えれば国王達が感動していた。
次回は明日。あと2話で終わる予定です。