3回目と異変
新年早々、コロナに感染してしまい、こちらの更新が遅れてしまいました。申しわけありません。
・・・とは言え、こちらの更新頻度としては、いつもとあまり変わっていないかもしれません。(汗;)
とりあえず、今年もよろしくお願いします。
例の声が頭の中に響いたその瞬間、俺は意識を失ってしまったようだ。気がついて目を開けた俺は、またしても真っ暗な中の一筋の光を見つけ、すべてを悟った。
「また戻されたのか・・・」
横で寝ていた女性は雪姉ではなく、もちろん由美乃でもない。俺の母親だ。前回と同じように、雨戸を開けて自分の小さい手を見て、やはり前回までと同様に小5の頃に戻ったと確信した。
「今度は誰を助ければいいのさ?」
例の声の主に問いかけてみたが、答えはない。そんなの答えるまでもなく由美乃一択だろうが、前回のループで、これからの雪姉の苦労を知ってしまった上、その雪姉との初体験が俺の体感ではまさに昨日のこととして残っているため、前回までのループとは違い、そう言い切れるだけの強い気持ちが持てそうもない気がした。
その日もいつものように、小学校への登校のため待ち合わせ場所に向かおうと外へ出たところで、ちょうど中学校に登校しようとしていた雪姉と出くわした。この時の雪姉は中学1年生でまだ12歳だったと思うが、既に胸がかなり目立つようになっていて、俺はそれを見た瞬間、2回目のループで見た彼女の裸の胸を思い出し、顔が熱くなるのを感じた。
「おはよう、まーくん。あれっ? なんか顔が赤いよ。もしかして、アタシのこと意識してるの?」
雪姉が俺の顔を覗きこんでくる。雪姉の顔が近い。俺は、雪姉とのキスを思い出し、ますます顔が赤くなったばかりか、下半身が思い切り反応してしまった。俺は雪姉にそれを悟られまいと身をかがめてしまったが、それが余計に不自然な行動となってしまったようだ。
「・・・べ、別に、違うし・・・」
「ふーん? まーくん、どうしてズボンを押さえてるの?」
やばい、見つかってしまった。どう誤魔化そうかと必死で考えていると、いきなり背中を思いきりはたかれた。栄治だ。
「雅哉、雪姉になにしてやがんのさっ!」
「べ、別に何もしてないよ・・・」
「えーじのバカ! 私のまーくんに乱暴なことしないでよっ!」
京子が家を出てきて、栄治に文句を言った。すると、栄治が俺の手を引いて、「女なんかと一緒に行けるか!」と捨てゼリフを残して、先に行こうとした。2回目の時は、俺と冷戦状態になって一緒に登校をしなくなっていたので、これも勝手が違う。まあ、今日のところは雪姉を誤魔化す必要があったので渡りに舟だった。由美乃と何も話せなかったのが残念ではあったが。
そんなことがあったからなのか、次の日以降も、俺は家を出たところで必ず雪姉と鉢合わせるようになった。そんなことは、元々の俺自身もそうだが、これまで2回のループでもなかった。2回目の時に雪姉と関わることが多くなった原因は、間違いなく的場さんと深く関わったためだが、今回はまだ的場さんと接触すらしていないのに、どうしてこうなったんだろう?
「それは、貴方が気がついていなかっただけなのよ。」
例の声がそう囁いていた。俺の方から何度呼びかけても応えてくれることはほとんどないが、嘘をつかれたことはないからそういうことなんだろう。そう言えば、前回のループで、雪姉が以前から俺に好意を持っていたことや、雪姉の部屋から俺の家の庭が見えることなどの話を聞いていたから、雪姉が俺が家を出るタイミングに合わせて家を出ているのだと悟った。前回までの俺は雪姉のことを今回ほど意識していなかったし、挨拶するだけで特段の会話もなかったのだから、気がついてなくても当然だったのかもしれない。
「まーくんさえよければ、おねーさんが勉強、教えてあげてもいいわよ?」
今回は、俺が雪姉をこれまで以上に意識していることが雪姉に伝わってしまったため、雪姉の方がより積極的になってしまったようだ。だが、それに呼応するかのように、英治が俺に干渉することが増えた。これまでは下校後は文也を含めて3人で遊ぶことが多かったのだが、今回は英治が俺を連れて雪姉の家に上がり込むようになり、文也と行動する機会が減ってしまったのだ。
「英治、雪姉はお母さんの病院に行ってるんじゃ・・・」
「それなら、おじさんがいるから大丈夫だって言ってたぞ。だから雅哉に勉強を教えるなんて言ったんだよ。」
「そうか・・・ 根回し済みだったわけだね?」
「根回し??? 何のことかわからないけど、雅哉は勉強ができるから、俺が教わるのが当然だろ?」
前回までの英治は、俺をダシにしないで1人で雪姉の家に押しかけていたが、今回はそうはしなかった。これも俺の意識過剰が招いたことなのか?
「前にも言ったでしょう? ちょっとしたことで世界は変わってしまうのよ。」
今回は例の声がやたらに話しかけてくる。まあ、それはむしろ好都合かもしれない。だが、英治が俺を巻き込んだことで、文也や由美乃と接触する時間が減ってしまい、文也が由美乃の股間を触る場面を目撃しないまま、例の日を迎えてしまった。1回目のループでは日付は意識しなかったが、2回目の時に競馬の話で盛り上がってしまったことで、それがダービーの2日前の7月5日であることを知ったのだ。その日の放課後、俺は英治を無理矢理撒いて文也の部屋に押しかけたが、やはりそこには由美乃だけがいた。
「あれ? まー兄、文兄ならまだ帰ってないよ?」
なんか、由美乃に「まー兄」と呼ばれたのが、かなり久しぶりな気がして、俺はちょっと感激してしまった。
「まー兄?」
「あ、ああ、そうだったね・・・ じゃ、ちょっと待たせてもらうよ。」
前回までと同様に、俺は二段ベッドの下に寝転び、そのまま寝たふりをしようとしたが、由美乃がすぐに話しかけてきた。
「まー兄、最近雪姉ちゃんと仲いいね?」
なんと、ド直球な言葉が飛んできた。
「え? 由美ちゃんにはそう見えるの? 俺は英治に付き合わされてるだけだよ?」
「だって、まー兄、雪姉ちゃんといつも一緒に家を出てくる。」
「それは偶然だよ・・・」
「偶然なら、毎日一緒にはならない。そんなの偶然じゃない。」
なんか、浮気を追及されているみたいな気分だよ。だけど、それだけ俺のことを見てくれているってことだから、その気持ちが嬉しかった。
「由美ちゃん、俺は由美ちゃんのことが好きだよ。」
浮気を追及されて、「俺が本当に好きなのはお前だけだ」みたいに誤魔化すようだが、この場はこれがベストだと思った。
「えっ・・・?」
これまでのループでは。文也に触られている場面を目撃していたが、今回はそうではない。俺が知らないことであれば、由美乃からそのことを話すことはないだろうから、俺は由美乃と同じようにド直球をぶつけることにしたのだ。
「まー兄、でも、雪姉ちゃんのこと、好きだよね?」
「どうしてそう思うの? 俺は雪姉に好きだなんて一言も言ったことないよ。もちろん、言われたりもしてない。」
「じゃあ、どうして雪姉ちゃん、あんなに嬉しそうにしていたんだろう?」
何か話が嚙み合わない。前回のループでは、俺が寝ている(実際には寝たふりをしている)間に由美乃が俺の方にキスしてきて、思いを打ち明けてくれていたのだから、俺が先に好きだと言っても結果は一緒のはずだ。だが、由美乃は俺の言葉をどうも額面通りに受け止めてはくれていない様子だった。
「いや、由美ちゃん、雪姉のことが好きなのは栄治の方で、俺は無理矢理に付き合わされているだけだよ。朝だって由美ちゃんと一緒に登校したいのに、栄治が邪魔するし・・・」
「えーじくんが来るまで2人で話しているでしょ? あれって、恋人同士みたいに見えた・・・」
あれっ? 俺の気持ち、確かに伝えたよね? 信じてもらえないどころか、雪姉と恋人同士なんて言われてしまったら、俺、どうすれば由美乃を助けられるんだ?
「あ、あの、由美ちゃん? 今、文也のことで困ってない? なんか嫌なことされてたとか・・・」
「まー兄、もしかして、雪姉ちゃんから聞いたの?」
なんか、由美乃が膨れっ面になっている。なんか可愛いからそれはそれでいい・・・わけないが、俺、なんかマズいこと言ったかな?
「まー兄には聞かれたくなかったんで言わなかったけど、文兄のことは雪姉ちゃんに相談していたの。明日からしばらく、雪姉ちゃんの家に泊まらせてもらうことになってるの。」
何ですと???
3回目のループに入りましたが、今回は英治の行動パターンの変化により、肝心のイベントが発生せず、まったく違った状況になってしまっています。
「聞かれたくなかった」と言ってることから、由美乃の雅哉への気持ちは疑いないとは思えますが・・・?




