生徒会
前回から3週間以上空けてしまいました。すみません。
そう言えば、この話の1話目をアップしたのが昨年の今頃でした。1年で25話って、1ヶ月2話のペースですから、こんなものでしょうが・・・
あらためて、よろしくお願いします。
他のクラスメイトにとっては初めての定期試験だった1学期の中間試験で、まさにチート知識を活用して全教科満点の偉業(?)を達成した俺は、生徒会に目をつけられてしまった。
当時の中学校の生徒会なんて、自主的な活動が制限されている、いわば、教師の下請けみたいなもので、成績優秀者がその座に収まるのがお約束だったと思う。もともとの俺は、数学だけなら学年トップクラスだったが、他の教科はからっきしだったので、教師受けはあまり良くなかった。ある程度の好成績を残せた1回目のループの時ですら声はかからなかったが、さすがに、いきなり全教科満点では無視するわけにはいかなかったようだ。
「毎年この時期に、生徒会選挙があるんだが、立候補したい人はいないか?」
一応、クラス担任はそう言ってきたが、立候補する物好きなどいない。それでも、各クラスから1人ずつ候補者を立てて、全校生徒の選挙により、会長をはじめとした生徒会メンバーを5人決めるんだとか。
「選挙では生徒会長を選び、役員は生徒会長が指名することになってはいるが、慣例では、落選した立候補者の中から選出されることになっている。」
各学年とも5クラスあるので、1~2年の総勢10名の候補者から生徒会長が選出されることになるのだ。3年生は高校受験があるので立候補しなくてもよいことになっているが、選挙には参加する必要があるんだとか。もちろん、本当に生徒会長になりたい3年生がいるなら、就任を妨げたりはしないそうだが、当時の中学校には、そんな奇特な生徒はいなかったようだ。
各クラスには、男女1名ずつ学級委員が選出されていたが、立候補者がいない場合、学級委員のどちらかが候補者になるのが慣例らしい。入学したばかりの1年生の場合、成績うんぬんよりも、小学校でそういう役割を担っていたかどうかが問われたので、他校で学級委員をしていたことのある河野(男子)と小島(女子)が就任していたので、そのどちらかが候補者になるものと思っていた。もともとの俺の記憶だと、小島が擁立され、選挙の演説で「私では力不足なので、他の方に投票してください」などと話していたのを覚えていたのだが、今回はそうはならなかった。
「先生は、中本君が適任だと思うんだが、反対の人はいるか?」
クラス担任にそう言われれば、異を唱える者などいるわけがない。河野などはあからさまにホッとした表情になっているし・・・
「先生、俺は自分で言うのも変だけど、成績は良くても人望はありませんよ?」
後から考えれば、言い方がマズかったんだろうな。もっとも、候補者になりたい奴などいるわけないし、担任がこう言った時点で、もはや四面楚歌なのだ。結局、クラスの候補者に祭り上げられた俺は、前人未到の全教科満点というセールスポイント(?)が効いて、1年生にして生徒会長の座を獲得してしまった。
「副会長、書記、庶務、会計の4人のうち、書記と庶務を会長が指名してください。」
慣例では、選挙で落選した他の9名の中から指名することになるが、昨年の役員が留任を望んだ場合は、そちらが優先されることになっているそうだ。そして、昨年の役員のうち、副会長と会計の2名が留任を希望したらしい。
「副会長は3年の千葉さん、会計は2年の大林さんだよ。」
千葉さんって・・・ 雪姉かよっ!!
「まーくん、1年生で生徒会長なんて凄いね。さすが、アタシの自慢の弟だよ。」
「副会長、弟さんなんていましたっけ?」
会計を留任した大林恵理子という2年生は、もともとの俺が通った公立高校に進学していて、そこで2年ほど一緒に登校していた。と言っても、登校時に同じバスに乗り合わせるだけで、会話を交わしたことなどはなく、なんとなく気になっていた程度だったが。1回目のループでは、俺は国立高校に進学したし、中学校時代にもこれという接点はなかったから、すっかり忘れていた。
「例のお隣さんだよ。恵理ちゃん、取っちゃダメだからね?」
雪姉が悪戯っぽく笑う。俺がちょっとは恵理子のことを気にしているのに、気がついたようだ。
「まーくんも、浮気はダメだぞ。」
こんなところを例の先輩に見られたら、また面倒なことになりかねないが、恵理子に弟と言ったあたり、雪姉も恵理子から変な噂が出ないように気を使ってくれているみたいだ。
「それで、あと2人は誰を指名するの?」
今日は留任したメンバーとそれを相談するために集まってもらったんだっけ。まさか、雪姉が前副会長だったとは微塵も思ってなかったが。
「落選した他の候補者じゃなくてもいいんですよね?」
「指名自体に制限はないわよ。ただ、落選者以外だったら本人の同意が必要よ。」
1人は健太でいいだろう。生徒会活動自体は何かイベントでもない限り、放課後に残って活動する必要はないみたいだが、そういう機会に雪姉と一緒に下校するようなことにでもなれば、タダでは済まない気がする。そういう時に同じ方向に帰る健太がいれば、防波堤になると思ったのだ。もう1人は英治ぐらいしか思いつかなかったが、どう考えても生徒会活動ができるとは思えない。とは言え、会長が俺で、副会長が雪姉なら、声だけでも掛けておかないとマズい気がする。
「健太と英治では?」
「健太君はまだしも、あのかんしゃく持ちの英治君じゃ生徒会活動は無理じゃない?」
「でも、声を掛けとかないと、また殴られるよ?」
「なんか穏やかじゃない話ね? 先生に相談する?」
恵理子が真顔で俺を見てくる。そう言えば、もともとの俺は、こんなに近くで恵理子の顔を見たことはない。束ねていないストレートの黒髪ロングの女子なんて、これまで俺の周りにはいなかったから、余計に気になるのかもしれないが、それだけじゃなく、結構美人なんだな、この人。
「まーくん、恵理ちゃんのこと、じっと見つめたりして、まさか・・・」
「ち、違うよ。英治のこと、どう説明しようか、考えていただけで・・・」
「ふーん? なんかあやしいわね? 恵理ちゃん、まーくんって意外にムッツリだから、気をつけた方がいいわよ?」
「なんで、そんな話になるんだよ!?」
結局、英治には、一緒に登校している健太から話して貰うことにした。健太にはこの後、例の勉強会で会うから、由美乃と一緒に事情を聞いて貰うことにしたのだ。
いつもより少し帰りが遅くなってしまったが、その日の勉強会は予定通り行い、俺は皆に生徒会の件を報告した。
「ふーん・・・ それじゃ、まー兄は雪姉ちゃんが生徒会にいるって知らなかったんだね?」
「だいたい、雪姉からはこれまで生徒会のことなんか一言も聞いたことなかったよ?」
そう言えば、雪姉はお母さんが入院していて、家事を自分がやらなきゃいけないから、生徒会活動なんかろくにできないはずだよな? よく、副会長なんか引き受けられたものだよ?
「まー兄、勉強会はどうするの? 生徒会の仕事があったら普通に帰れなくなるんじゃないの?」
「文化祭とか、何かイベントでもあれば別だが、普段は特に何もないって聞いてるぞ?」
「そうか、だから雪さんでも副会長ができたってことか・・・」
「健太、書記か庶務を頼めるかい?」
「俺? 落選した候補から選ぶんじゃないの?」
「任命権は俺にあるらしいよ。」
健太は一瞬嫌そうな顔をしたが、高校受験の際の内申点に影響するという話も後押しして、引き受けてくれることになった。だが、栄治に声を掛けようという提案には難色を示した。
「あいつ、なんで雅哉ばっかりって、よく独り言言ってるんだよ。わざわざ地雷を踏むようなことを言いたくないからな。」
「それはわかるけど、このことを黙っていると余計にこじれそうだしな・・・」
「雪さんから話してもらうしかないんじゃない?」
次の日の登校時に雪姉から栄治に声を掛けたものの、結局は俺を罵倒してその場から逃げ出すという例のパターンで終わってしまったため、もう1人は落選した2年生の中から選ぶことになった。その方が、1年生2人、2年生2人、3年生1人でバランスがいいからとか言っていたが、それなら3年生の雪姉が生徒会長の方が自然じゃないの?
「副会長って、会長が病気とかで不在にならなければ、特に何もしなくても平気なのよ?」
雪姉、それってなんかズルくない?
作中の生徒会選挙の仕組みは、作者の中学校時代に実際にあったものを参考にしていますが、実際に生徒会活動を経験したわけではないので、そこは推測です。ですが、部活動でも下校時刻は厳守するよう徹底されていたことはよく覚えています。作者は帰宅部でしたが、友人と遊んでてなかなか下校しなかったため、先生に捕まって、「下校不徹底」と生徒手帳に書かれたことが何回かありました。累積したらどうなるのかは忘れましたが。




