勉強会
申し訳ありません。ヤボ用で、3週間近く空いてしまいました。更新間隔をもう少し短くしたいとは思っているのですが・・・
今回は、雅哉が中学生になる前に、由美乃と共有できる時間をなんとか作ろうとしています。
その後も、由美乃との「密会」は続いた。だが、俺はあれ以来、由美乃を抱き締めてキスする以外のことは自重しようと決めた。由美乃はそれだけじゃ不安なのかもしれないけど、文也にされていたことを思い出してパニックになってしまう方が怖かった。そもそも、昼休みの限られた時間でできることもまた限られてしまう。そういうことをまったくしたくないわけではないが、由美乃と一言でも多く会話するのが重要だと思った。
「じゃあ、まー兄が中学生になったら、私達の先生をしてくれるってこと?」
俺だって中学生になったらこういう時間が取れなくなるのは嫌だから、いろいろ考えてはいたが、2人きりというのはやはり難しい。日曜日に出かけるのは、由美乃の父との約束で2人きりでは無理だし、前みたいに健太達と一緒に行動しようとすれば、おそらく的場さんと雪姉が出てくる。それでもあの時のように都電の撮影を言い訳にして別行動できないとも限らないが、俺が中学生になる頃にはほとんどの路線が廃止されているから、その手も使えなくなる。
「由美ちゃんのお母さんに頼めば、5人くらいで勉強会を開ける場所を貸してくれるだろ?」
工場の勤務時間が終わる17時以降なら、まったく人の出入りがなくなるわけではないが、休憩室の一画が使えると思う。むしろ、俺達や的場さん以外のまったくの第三者がいた方がアリバイを作りやすい。
「みんなには一度家に帰ってもらって、由美ちゃんと俺だけで休憩室で待っていることにすればいいのさ。工場が終わる17時までにみんなと合流すれば、それまではどこで何をしていても、誰も不思議に思わないだろうからね。」
文也の件があるから、由美乃の父親は、下校時刻から工場の終業まで文也と一緒に行動していて、なるべく由美乃と会わせないようにしているらしいから、自宅内で由美乃と俺が会っていたとしても、その場に来ることはまずない。つまり、由美乃の下校直後から17時までの間に、由美乃の自宅内で2人きりになる機会が作れると考えた。
「でも、帰ったら、私、お母さんの部屋に行かなくちゃダメなんだよ?」
「そこに俺が一緒に行っても問題ないんじゃない?」
母親の部屋は仕事場を兼ねていて、経理関係の事務仕事が中心だから机や椅子が余分に置かれている。由美乃の勉強を見るという名目で俺が入っていっても不自然ではないのだ。それに、実際に1回目のループの時に、由美乃の家庭教師をやっていたから問題はない。そして終業前の10分程度ではあるが、母親が当日の作業終了の確認のために席を外すことも。
「そうか、お母さん、仕事が終わる少し前に部屋を出ていくから・・・」
由美乃も気づいたようだ。時間的にはそう長くはないが、たとえ10分程度でも由美乃と2人きりの時間が作れることが重要なのだ。
もちろん、父親が俺達の思惑に勘づく可能性はあるし、事務員が部屋に残る時だってあるかもしれないから、毎日確実に、というわけにはいかないかもしれないが、今はこれくらいが精一杯だ。
「それだったら、別にまー兄が卒業してからじゃなくても、明日からでもできなくない?」
由美乃にしてみれば、下校した後でも会う口実ができるのだから、すぐにでも始めたいのだろうが、単純に俺が由美乃の家庭教師をするというだけだと、さすがに断わられてしまうだろう。中学生になってからならまだしも、小学生が家庭教師をするなんて、あまりにも突飛な話だと思うしね。だから、勉強会としてみんなを巻き込む必要があるということだ。
「さすがに明日からじゃ無理だろうけど、冬休みを利用して勉強会を始めれば、そのまま3学期以降も続けられるんじゃないかな?」
あからさまに由美乃目当てだと思われないように、同学年のさつきや弥生ちゃんも誘うのだが、3人とも算数の成績は今一つのようなので、本人たちではなく親の方が、この提案には乗ってくれると思う。だが、男が俺一人ではハーレム状態になってしまい、いろいろ雑音が出そうなので、俺は健太を巻き込むことを考えた。健太自身の成績はさほど悪くはなかったが、学年トップクラスの俺が教えると言えば、やはり親が乗らないはずがない。問題は、俺自身が家庭教師をする意味があるのかと、俺の親父が文句をつけそうなことだが、1回目のループでそうなったのは、中3の2学期に成績を落とした時だけだったから、俺自身の成績を維持できていれば問題はないだろう。
「じゃあ、冬休みに入っても、毎日会えるよね?」
そう言って上目使いで俺をみる由美乃の表情がめちゃくちゃ可愛い。俺は感情が高ぶって、いつも以上に激しくキスをしてしまった。手も出かかったが、そこは何とか堪えた。
「我慢しなくても大丈夫なんだけどなぁ・・・」
なんか、俺の方が手玉に取られているような気がしてきた。
* *
その日の夕方、下校時にさつきと弥生ちゃんに勉強会のことを提案してみた。
「健太君が教えてくれるって? それなら大賛成だよ!」
「お兄ちゃんじゃなくって、まー君だよ。でも、さっちゃんだったら、お兄ちゃんでも教えられるんじゃない?」
「うん、がんばるよ!」
「さっちゃんって、ホント、健太のこと、好きなんだな・・・」
「誰かさんだって、同じようなものじゃん?」
確かに動機は不純だけど、俺は1回目のループの時の経験を生かせば、結果は早い段階で出せると思っていた。いきなり1時間みっちりお勉強しましょう、なんてことを言うのは逆効果で、遊びながらでも構わないのだ。俺としては「1+1」から始めても良いかと思っている。公〇式とかいうやり方に近いことを考えていた。
「まあ、学校や塾というわけじゃないから、楽しみながらでもいいんじゃないかと思ってるよ。」
小学生低学年の場合、とにかくまず、数字に慣れてもらうことが肝心で、計算がなぜ必要なのか、どうやったら計算ができるのか、ということを、一つずつ確かめていくことが肝心だと思う。
「でも雅哉、俺も教わってもいいのか? 確かに雅哉は中学どころか、高校の数学までできるらしいけど?」
もともとの俺も、兄貴の高校の参考書を見せてもらったりしていたくらい、数学バカだったからね。それを鼻にかけて初美に嫌われたりしたから、そこは気をつけないといけないな。
「でも、妹達はともかく、同じ5年生で俺だけだと、なんか気が引けると言うか・・・」
「本当は英治を誘うつもりだったんだけどね。」
由美乃の家の休憩室を使うなら、遅かれ早かれ的場さんに知られることになるし、それなら雪姉に教わった方が良いと言われるかもしれない。俺としては由美乃と同じ空間にいることが重要だから、雪姉がいようがいまいが関係はない。だが、由美乃にいらない心配をかけたくないから、栄治に防波堤の役目を任せようと思い誘ってみたのだが、「女と一緒に勉強なんかできるか!」と、けんもほろろだった。
「でも、お前らが勉強会をやってる間、俺が雪姉の家に行くって手もあるよな?」
まあ、そのつもりだったかどうかはわからないが、結局、雪姉の防波堤役を引き受けてくれることになった。
後は、由美乃の母親に、どう話をするかだ。勉強会自体を否定されるとは思わないが、冬休み中なのにどうして夕方からにしたのか、となどと突っ込まれると、うまく説明ができない気がする。由美乃の家の休憩室ぐらいしか場所がないのは確かだが、小学生5人程度なら別に就業時間中でもたいした影響はないだろう。だからと言って、あまり早い時間を指定されたりすると、俺の本来の目的が果たせない。うーん・・・ 我ながら動機が不純過ぎて、なんか後ろめたくなってくるのだが・・・
終業式の日、俺が由美乃の母親の部屋へ行くと、機嫌良さげにニコニコしている母親の姿があった。これはいったい・・・?
勉強会という手段で、由美乃との時間を共有しようと目論んでいますが、さすがに動機が不純すぎて、自己嫌悪に陥っている雅哉です。
でも、母親には好感触?




